・アテローム型脳梗塞の発生機序と血管の状態
・アテローム硬化と血栓形成の関係
・高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙という危険因子について
今回はアテローム血栓性脳梗塞とは何かについて解説します。アテローム血栓性脳梗塞は、脳血管内にコレステロールなどの脂質が沈着し、プラークと呼ばれる粥状の塊が形成され、このプラークが破綻することにより、その表面に血栓が形成され、血管が詰まる疾患です。高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙などが原因となります。
アテローム型脳梗塞の発生機序と血管の状態
この記事ではアテローム型脳梗塞の発生機序と血管の状態について解説します。
まず、高脂血症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病、喫煙や肥満などの悪い生活習慣によって動脈の内膜が損傷します。
高血圧は常に血管に高い圧力がかかるため、糖尿病は糖化ストレスを生じるために血管の内膜を傷つけます。
喫煙はニコチンなどの有害物質により血管内皮細胞が障害されるため、肥満は内臓脂肪から分泌される炎症性物質のために血管を傷つけます。
その影響で血管の内側に脂質が蓄積し始めます。
蓄積が進むとその部分は増大してプラークという塊となり、動脈壁の厚さが増して血管内径が狭くなります。
プラークは一般的に不安定な状態のものが多く、表面が破れた場合、漏れを防ぐためにその場所に血栓が形成されます。
この血栓が増大すると、血管が詰まってしまい、脳への酸素や栄養素の供給が無くなり、脳の神経細胞が壊死する。
これがアテローム性脳梗塞の発生機序となります。
血管の状態としては、プラークによって血管が狭くなり、血流が悪くなる病態である狭窄、血管壁が硬くなり柔軟性が失われてしまう動脈硬化、血管壁が弱くなり破綻しやすくなる病態である脆弱性を認めます。
アテローム硬化と血栓形成の関係
この記事ではアテローム硬化と血栓形成の関係について解説します。
アテローム硬化とは、血管の内膜にLDL-コレステロールなどの脂質が沈着し、プラークという塊ができる病態であり、血管内径を狭めるため血流を阻害します。
血栓形成とは、血液中の血小板が固まってできる血栓ができることです。
血栓は、血管が傷ついた時や血液の流れが滞った時にできやすい傾向にあります。
そのため、アテローム硬化が進展すると、血管が狭窄するため血液がよどみ血栓ができやすくなります。
一方、アテローム硬化によってできたプラークは不安定で破れやすい特徴があります。
破れた際には、プラーク内の脂質等の流出を食い止めるために、蓋のような働きをする血栓が形成されます。
プラークの形成された場所は、血管壁が炎症性サイトカインなどの物質の影響を受けて変性するため血栓が出来やすい状態にもなります。
血栓が増大し血管を詰まらせると血流が途絶えるため脳梗塞を起こします。
従って、アテローム硬化は血栓形成と密接な関係があり、血栓形成は脳梗塞の発症リスクを高めます。
高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙という危険因子について
この記事では高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙という危険因子について解説します。
高血圧は、血管内に常に高い圧力がかかっているため、血管壁への負担を増加させ、内膜が傷つきやすくなります。
そのため、血管内にプラークという塊が形成されるリスクが高まります。
さらに、血管内皮細胞が障害されるため、血管の拡張や血栓形成を抑制する働きを持つ一酸化窒素の産生が減少するため血管の損傷が進行します。
糖尿病は、高血糖が要因となり血管内皮細胞に糖化ストレスを起こします。
糖化ストレスは、細胞の機能障害や死滅を引き起こし、血管内膜を損傷します。
その他、血管内での炎症反応が高まるため血栓形成のリスクも高めます。
高脂血症は、LDLコレステロールや中性脂肪が過剰に血液中に存在する状態のため、過剰になると血管内膜に沈着物としてのプラークの形成を促進します。
また、HDLコレステロールは、LDLコレステロールを肝臓へ運搬し、体外へ排泄する作用があるため、少なくなるとプラークの形成が促進されます。
タバコには一酸化炭素やニコチンなどの有害物質が含まれているため炎症を活性化し、血管収縮、血小板凝集を起こし血管の損傷を進めます。
まとめ
今回の記事では、アテローム血栓性脳梗塞とは何かについて解説しました。
脳梗塞は血管がつまり脳神経が壊死する疾患です。
壊死した範囲が広いと後遺症が残り日常生活に支障を来します。
そのため、神経を再生する治療が望まれます。
神経の再生医療は最も盛んに研究されている現状です。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、脳脊髄損傷部位の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」があります。
脳梗塞の後遺症に苦しむ患者に対して、神経を再生する医療は新たな治療の選択肢として期待がもてます。
よくあるご質問
- 動脈硬化とアテローム形成の関係は?
- 動脈硬化とは、血管が硬くなったり狭くなったりする病態です。アテローム形成とは、動脈の内膜にコレステロールなどの脂質が蓄積して粥状の塊であるプラークができることです。アテローム形成は動脈硬化の最も一般的な原因です。プラークが大きくなり破綻すると、血栓が形成されて血管を詰まらせ、脳梗塞などの重篤な病気を引き起こします。
- アテローム硬化の危険因子は何ですか?
- 大きく分けて2つに分類されます。改善可能な因子として、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満、運動不足、ストレスなどがあります。これらを改善することによりアテローム硬化のリスクを減らすことができます。一方、改善不可な因子として、年齢、家族歴、性別などがあります。
<参照元>
脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕:https://www.kk-kyowa.co.jp/stroke2021/
脳血管障害・脳卒中 | e-ヘルスネット(厚生労働省): https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-006.html
アテローム性動脈硬化 | MSDマニュアル プロフェッショナル版:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/
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