幹細胞治療による再生医療×同時刺激リハビリで神経障害の後遺症を改善へ

再生医療に関する論文

論文

再生医療に関する論文

細胞の冷凍保存に関して

本論文では、28人の被験者のヒト間葉系幹細胞の凍結保存後の生存率、また凍結保存したものと非凍結のものとに分けて骨分化能を比較されています。
凍結保存された間葉系幹細胞は保存期間(0.3ヶ月から37ヶ月)に関わらず約90%の生存率であり、凍結保存の有無による骨分化能の有意差も見られませんでした。
また、我々の特殊凍結技術による幹細胞の凍結保存試験においては、培養後のMSCを冷蔵保存(5℃)と凍結保存(-70℃以下)の二つに分け、それぞれの条件下で、細胞の生存率とマーカー陽性率を測定しました。凍結解凍後の細胞生存率を測定したところ、凍結前(約90%)で凍結しても凍結解凍後(約90%)の生存率であり、幹細胞機能もほぼ変わりませんでした。
この投与プロトコールが、現状は安全性と品質を厳重に確認出来る、投与タイミングを調整出来る利点があり現状は最善です。
Tissue Eng. 2005 May-Jun;11(5-6):663-73. doi: 10.1089/ten.2005.11.663.

骨髄間葉系幹細胞と脂肪由来間葉系幹細胞の比較

ヒト骨髄間葉系幹細胞からは、脂肪由来間葉系幹細胞と比較して、BDNF(脳由来神経栄養因子)、NTF(神経成長因子)などの液性因子が沢山放出されます。また、それら液性因子は、神経回路の伝導性を改善したり、幹細胞の分化誘導を促進したりするなどの効果があります。
投与タイミングに合わせて狙った回路を同時に刺激することで、その神経回路の伝導性を改善し軸索伸長を促したり、神経回路を再構築するための脳の可塑性高めることが神経再生医療の役割になります。
Neurology. 2002 Aug 27;59(4):514-23. doi: 10.1212/wnl.59.4.514.

脳卒中患者に対する幹細胞投与群と、非投与群の生命予後比較

脳卒中患者様に対する幹細胞投与群と、非投与群の生命予後が比較され、260週時点での生存率は投与群72%、非投与群34%でした。
身体機能は有意に改善しており、運動量が増えたことなど種々要因が、幹細胞投与による血管などの修復効果に上乗せされている可能性が考えられます。
Stem Cells. 2010 Jun;28(6):1099-106. doi: 10.1002/stem.430.

安全性に関して

世界中で、本再生医療等で用いる特定細胞加工物とほぼ同様の細胞加工物(自己脂肪由来間葉系細胞)が製造され、100件を超える臨床研究で使用されているが、これらすべての症例で重大な問題は発生していない。すなわち、間葉系幹細胞の培養方法は今回の方法とほぼ同様の手法を用いられており、安全性と妥当性が担保されていると考える。
大串ら, 日本再生医療学会雑誌 9:393-400, 2010

用いる細胞によっては腫瘍化する危惧があるが、多施設における調査で間葉系幹細胞の腫瘍化の報告
大串, 再生医療 9:393-400, 2010

また、培養に用いられるFGF-2は間葉系幹細胞の培養において広く用いられている。
Luis et al., Methods Mol Biol 698:253-278, 2011

なお、移植に伴う危険性として、短時間に静脈投与した細胞が肺の血管を閉塞して肺梗塞を発症する可能性が考えられるが、本再生医療等では輸血用フィルターを使用し時間をかけて投与を行うのでその可能性はほとんど無い。
島根大学附属病院にて低アルカリフォスファターゼ小児患者に対して間葉系幹細胞を10回以上行なわれた静脈投与でも肺梗塞などはみられなかった。
竹谷ら, 再生医療 13:400-406, 2014

脳卒中に対する自家骨髄由来間葉系幹細胞の点滴投与は有効であった

臨床研究1

2005年にBangらは体外培養した自家骨髄由来間葉系幹細胞を脳卒中患者に投与したところ3ヶ月と6ヶ月の時点ではBarthel Indexが優位に良好であったと報告した。
Bang et al., Ann Neurol 57:874-82, 2005

臨床研究2

2010年にLeeらは自家骨髄由来間葉系幹細胞治療群16 例と対照群36 名と無作為化した上、同様の臨床試験を施行したところ、死亡率とmRS(0~3)の割合が治療群では対象群に比して良好であったと報告した。
Lee et al., Stem Cells 28:1099-106, 2010

臨床研究3

2012年に本望らは脳卒中後片麻痺患者12名に対して自家骨髄由来間葉幹細胞を経静脈的に投与する前向き研究を行ない、損傷領域の縮小及び身体機能改善が得られたと報告するなど、同様の細胞・移植方法を用いた研究が行われているが有害事象の報告は無い。
Honmou et al., Brain 134:1790-1807,2011

間葉系幹細胞は損傷している組織に集積する

間葉系幹細胞は損傷している部分や炎症を起こしている組織に遊走する傾向がある。
Chapel A et al.,J Gene Med 5:1028-1038, 2003; Nasef A.,Transplantation 84+L97:231-237, 2007

中枢神経障害モデルラットに対する間葉系幹細胞の静脈内投与により、投与された間葉系幹細胞が損傷領域に選択的に遊走する。
Honma et al., Exp Neurol 199:56-66,2006; Horita et al., J Neurosci Res 84:1495-504, 2006; Liu et al., Brain 129:2734-45, 2006;
Onda et al., J Cereb Blood Flow Metab 28:329-40, 2008;Ukai et al., J Neurotrauma 24:508-20, 2007; Toyama et al., Exp Neurol 216:47-55, 2009

間葉系幹細胞治療は、発症早期の方が効果は得られやすい

中枢神経障害モデルラットに対する骨髄由来間葉系幹細胞の静脈内投与により、脳血液関門が回復した慢性期でも損傷領域に選択的に投与された間葉系幹細胞が遊走する。損傷領域の縮小及び機能改善は早期の投与群の方が得られた。
Komatsu et al., Brain Res 1334:84-92, 2010

間葉系幹細胞はサイトカインも分泌する

中枢神経損傷モデルラットに対する骨髄由来間葉系幹細胞の静脈内投与により、投与された間葉系細胞は脳損傷部位に到達し、BDNFやGDNFなどのサイトカインを介するメカニズムで強力な神経保護作用を発揮する。
BDNF: Nomura et al., Neuroscience 136:161-9, 2005)
GDNF: Horita et al., J Neurosci Res 84:1495-504, 2006)

骨髄由来間葉系幹細胞は血管新生など土台を作り組織を修復する

中枢神経障害モデルラットに対する間葉系幹細胞の静脈内投与により、投与された間葉系細胞は損傷巣に到達し、損傷局所で血管新生を誘導することが判明している。
Liu et al., Brain 129:2734-45, 2006; Onda et al., J Cereb Blood Flow Metab 28:329-40, 2008; Toyama et al., Exp Neurol 216:47-55, 2009; Ukai et al., J Neurotrauma 24:508-20, 2007

骨髄由来間葉系幹細胞は神経細胞に分化する

中枢神経障害モデルラットに対する骨髄由来間葉系幹細胞の静脈内投与により、投与された間葉系細胞は損傷部に到達し、損傷部位局所でアストロサイトに分化することが判明している。
Martin A et al., Neuro Report 10:1289-1292, 1999

骨髄由来間葉系幹細胞は、神経組織を修復し、身体機能を改善させる

中枢神経モデルラットに対する骨髄由来間葉系幹細胞の静脈内投与により、損傷領域の縮小及び機能改善が得られたとの多数の報告がある。
Kai et al., Stem Cells Interational ID2153629, 2017; Saski et al., Stem cell Research 8:96-109, 2017; Yousefifard et al., Stem Cell research & Therapy 7:36-49,2016; Watanabe et al., Stem Cells 33: no6: 1902-1914; Chen et al., J Neurol Sci 189:49-57, 2001; Li et al., Neurology 59:514-23, 2002; Nomura et al., Neuroscience 136:161-9, 2005; Honma et al., Exp Neurol 199:56-66, 2006; Horita et al., J Neurosci Res84:1495-504, 2006; Liu et al., Brain 129:2734-45, 2006; Onda et al., J Cereb Blood Flow Metab 28:329-40, 2008; Ukai et al., J Neurotrauma 24:508-20, 2007; Omori et al., Brain Res 1236:30-8, 2008; Toyama et al., Exp Neurol 216:47-55, 2009; Komatsu et al., Brain Res 1334:84-92, 2010

間葉系幹細胞は長期保存が可能である

間葉系幹細胞が長時間細胞懸濁液の状態で十分な細胞活性を有することや長期の冷凍保存にも耐えうることは報告されている。
Muraki et al., Tissue Eng 12:1711-9, 2006; Kotobuki et al., Tissue Eng 11:663-73, 2005

間葉系幹細胞の投与ルートは静脈内投与が最も侵襲性が少ない(安全性が高い)と考えられる

投与方法の検討:投与ルートとしては損傷部への局所投与、動脈投与、静脈投与が考えられる。Eckertらは神経障害性モデルラットに対する間葉幹細胞投与に関する46研究から39研究を評価し、効果は投与ルートに関わらず神経学的・行動学的改善が得られているとした。
Eckert et al., J Cereb Blood Flow Metab 33:1322-34, 2013

また、Leiらは間葉系幹細胞の多数の臨床研究のレビューを行ない、移植ルートとしては侵襲性がより少ない静注投与がより優れていると分析している。
Lei et al., Biomed Res Int Feb 26., 2014

監修:貴宝院 永稔
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役
脳梗塞・脊髄損傷クリニック 銀座院 院長

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