<この記事を読んでわかること>
・脊髄がどのような役割をしているのかがわかる。
・脊椎がどのような構造をしているのかがわかる。
・脊髄と脊椎の違いがわかる。
私たちの身体を支え、動かし、さまざまな感覚を脳に伝達するために重要な役割を担っている「脊髄」と「脊椎」。
この2つの言葉は似ているため混同されやすいですが、実際には異なる構造と役割を持っています。
本記事では、脊髄と脊椎の役割や違いを詳しく解説し、再生医療やリハビリテーションにおける重要性についても触れていきます。
脊髄とは?神経の中枢としての役割
脊髄は、脳と全身をつなぐ重要な神経組織であり、中枢神経系の一部です。
脊髄は脳から脊椎管内を下方に走行し、身体の各部位に指令を送る「運動神経」と、感覚を脳に伝達する「感覚神経」が集まる神経の中枢です。
(参照サイト:脊髄 – 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 – MSDマニュアル家庭版)
脊髄の主な役割
- 感覚情報の伝達:皮膚や筋肉からの触覚、痛覚、温度感覚などの情報を脳に伝えます。
- 運動指令の伝達:脳からの指令を筋肉に伝え、身体の動きを調整します。
- 反射の制御:熱いものに触れたときに反射的に手を引くなど、無意識の反応を制御します。
脊髄損傷による影響
脊髄が損傷すると、損傷部位より下の身体に麻痺や感覚障害が生じる可能性があります。
例えば、頸髄が損傷すると手足の運動機能や呼吸機能に影響を与えることがあります。
損傷の重症度や部位によって、症状の現れ方が異なります。
脊椎とは?骨の構造と身体を支える役割
脊椎は、一般的に「背骨」と呼ばれる構造で、脊髄を保護し、身体を支える役割を担っています。
脊椎は椎骨と呼ばれる骨が積み重なって形成されており、その内部の脊柱管が脊髄を覆っています。
(参照サイト:脊椎の症状一覧|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる)
脊椎の構造
脊椎は、首から腰まで以下の5つの部分に分けられます。
- 頸椎(Cervical Vertebrae):7個の椎骨があり、頭部の支えや首の動きを可能にします。
- 胸椎(Thoracic Vertebrae):12個の椎骨があり、肋骨と連結して胸郭を形成します。
- 腰椎(Lumbar Vertebrae):5個の椎骨があり、体重を支え、動きの自由度を高めます。
- 仙椎(Sacral Vertebrae):5個の椎骨が癒合し、骨盤の一部を形成します。
- 尾椎(Coccygeal Vertebrae):3〜5個の骨が癒合し、尾骨を形成します。
脊椎の主な役割
- 身体の支柱:直立姿勢や歩行を可能にし、身体を支えます。
- 脊髄の保護:脊柱管内にある脊髄を外部の衝撃から守ります。
- 運動のサポート:関節や筋肉と連携し、身体の柔軟な動きを可能にします。
脊椎のトラブルとその影響
脊椎に異常が生じると、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などを引き起こし、痛みやしびれ、姿勢の異常などが現れることがあります。
加齢や姿勢の悪さ、外傷が原因となるケースが多く、必要に応じて整形外科的治療やリハビリテーションが行われます。
脊髄と脊椎の違いをわかりやすく解説
脊髄と脊椎は名前が似ているため混同されやすいですが、構造・役割・所属する系統など、さまざまな点で異なります。
それぞれが独立した役割を持ちながらも、密接に関わり合って身体の機能を支えているのです。
ここでは、その違いを具体的に解説します。
1. 構造の違い:神経組織と骨構造
脊髄は脳と身体をつなぐ「神経組織」で、脳の延長として中枢神経系に属しています。
やわらかい組織であるため、脊柱管というトンネル状の空間に守られる形で走行しています。
内部には灰白質(神経細胞の集まり)と白質(神経繊維の束)があり、これが情報の伝達を担います。
一方、脊椎は「骨」でできており、椎骨と呼ばれる複数の骨が積み重なって形成されます。
椎骨の間にはクッションの役割を果たす椎間板があり、衝撃を吸収しています。
脊椎は脊髄を守ると同時に、身体を支える柱としての役割を担っているのです。
2. 役割の違い:情報伝達と身体の支持
脊髄の役割は、脳からの指令を身体に伝えて動作を制御すること、そして身体からの感覚情報を脳に伝達することです。
例えば、「手を動かす」「熱さを感じる」といった日常的な動作や感覚は、脊髄が機能することで可能になります。
また、反射的な動作(熱いものに触れて手を引くなど)も脊髄が担当しています。
これに対して、脊椎の役割は脊髄を守ることと、身体の支柱となることです。
脊椎がなければ、人間は直立した姿勢を維持できず、動作や歩行も困難になります。
さらに、脊椎には筋肉や靭帯が付着しており、体を動かす際の支点としても重要です。
3. 所属する系統の違い:中枢神経系と骨格系
脊髄は「中枢神経系」に属し、脳とともに神経ネットワークの中心を担います。
この中枢神経系が身体のあらゆる機能を管理しており、脊髄が損傷すると運動や感覚、時には自律神経の働きにまで影響を与えます。
一方、脊椎は「骨格系」に属し、筋肉や関節と連携して身体を支えたり動かしたりします。
骨格系は、脊髄の保護以外にも、内臓を支えたり、カルシウムの貯蔵庫としての役割を担ったりする重要なシステムです。
4. 損傷時の影響の違い
脊髄が損傷すると、損傷部位より下の運動機能や感覚機能に影響が及びます。
例えば、頸髄が損傷すると四肢麻痺(手足の麻痺)や呼吸機能の低下が起こる場合があり、胸髄や腰髄の損傷では下肢麻痺や膀胱直腸障害が生じることがあります。
(参照サイト:「脊髄損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる)
脊髄の損傷は回復が難しいため、再生医療などの先端的な治療が期待されています。
脊椎の損傷では、骨の変形や不安定性によって姿勢保持が困難になったり、脊髄が圧迫されて神経症状が現れたりします。
例えば、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症では、神経根が圧迫されて下肢のしびれや痛みが引き起こされます。
こうした場合には、手術やリハビリテーションによる治療が必要となることがあります。
5. 関わり合う仕組み:互いに支え合う関係
脊髄と脊椎は、単に別々の組織というだけでなく、互いに密接に連携しています。
脊椎がしっかり脊髄を保護することで、外部の衝撃や障害から神経組織が守られます。
一方、脊髄が正常に機能することで、脊椎を支える筋肉や関節の動きを制御し、姿勢や動作の維持が可能になるのです。
このように、脊髄と脊椎はまさに「中枢の司令塔」と「身体の支柱」として、人間の基本的な機能を支えているのです。
まとめ
脊髄と脊椎は、私たちの身体の中で異なる役割を持ちながらも、互いに密接に関連し合っています。
脊髄は神経の中枢として情報の伝達を担い、脊椎はその脊髄を守り、身体を支えます。
脊髄損傷や脊椎の障害は、生活の質に大きな影響を及ぼしますが、再生医療の進歩により、これまで難しかった機能回復の可能性が広がっています。
ニューロテック®のリニューロ®をはじめとする最先端の治療技術は、脊髄損傷による神経障害に希望を与えています。
身体の仕組みを正しく理解し、必要に応じて専門医に相談することで、健康な身体を維持していきましょう。
よくあるご質問
- 脊髄はどんな役割をしていますか?
- 脊髄は脳と全身をつなぐ神経の中枢です。
脳からの運動指令を身体に伝え、触覚や痛覚などの感覚情報を脳に送る役割があります。
また、反射反応を制御し、無意識の動作も担っています。 - 頸椎と胸椎と腰椎の違いは何ですか?
- 頸椎は首の動きを支え、7個の椎骨で構成されます。
胸椎は12個の椎骨が肋骨と連結し、胸郭を形成します。
腰椎は5個の椎骨が体重を支え、動きの柔軟性を保つ役割を担います。
(1)脊髄 – 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 – MSDマニュアル家庭版:https://www.msdmanuals.com/
(2)脊椎の症状一覧|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる:https://www.joa.or.jp/public/sick/body/spine.html
(3)「脊髄損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spinal_cord_injury.html
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