<この記事を読んでわかること>
・脳梗塞によって肩こりが起こるメカニズムがわかる
・脳梗塞後に肩こりが悪化するメカニズムがわかる
・脳梗塞による肩こりの典型的な症状がわかる
実は脳と肩周囲の血流や筋肉には密接な関わりがあり、脳梗塞を発症すると、急性期に肩こりのような症状を自覚したり、慢性期に肩こりが後遺症として残ってしまう可能性があります。
肩こりが発生するメカニズムはさまざまであり、この記事ではその原因や、後遺症として残ってしまう理由について詳しく解説します。
脳梗塞と肩こりの関係性:なぜ肩が凝るのか?
脳梗塞では一般的に、発症早期には頭痛・嘔気嘔吐・麻痺などの症状が出現しますが、時折肩こりを訴える方もいます。
このメカニズムとして下記の3つが挙げられます。
- 筋緊張性頭痛の併発
- 椎骨動脈解離に伴う脳梗塞
- 核上性副神経麻痺
筋緊張性頭痛の併発
脳梗塞とは、脳の血管が何らかの原因で閉塞し、脳細胞が十分な栄養を受けられないことで壊死してしまい、さまざまな症状をきたす疾患です。
主な原因は、心房細動などの不整脈によって心臓内に形成された血栓が脳血管に飛んでしまう心原性脳梗塞と、脳の血管そのものが高血圧や糖尿病による動脈硬化によって狭小化するラクナ梗塞、もしくはアテローム血管性脳梗塞です。
一方で、筋緊張性頭痛とはさまざまな原因で前頭筋や側頭筋・咬筋・胸鎖乳突筋・僧帽筋などの筋肉が過緊張となり、頭痛や肩こりを自覚する疾患であり、その原因の一端として血行不良が挙げられます。
これらの筋肉へ分岐する血管が糖尿病や高血圧によって動脈硬化を引き起こすと、血流が低下して筋肉内に乳酸が蓄積し、その結果痛みや凝りを感じます。
この場合、同様の理由でラクナ梗塞、もしくはアテローム血管性脳梗塞を併発しやすい状態のため、脳梗塞でも肩こりを自覚する可能性があり注意が必要です。
椎骨動脈解離に伴う脳梗塞
次に、脳梗塞の原因が椎骨動脈解離であった場合も肩こりの原因となります。
椎骨動脈解離とは、頚部の左右を1本ずつ走行する椎骨動脈が動脈解離を引き起こし、椎骨動脈が血管内で裂けてしまう病気です。
ちょうど頚部を走行している血管であるため、発症すると左右いずれかに突然の頚部痛や肩こりを自覚します。
椎骨動脈解離は進行するとそのまま血管が破裂してくも膜下出血になったり、血管内で血流が低下して脳梗塞を発症する恐れがあります。
そのため、麻痺などの症状が出て脳梗塞と診断された場合、背景に椎骨動脈解離があれば肩こりも併発している可能性が高いです。
核上性副神経麻痺
脳梗塞によって核上性副神経麻痺に陥った場合、肩こりを自覚する可能性があります。
核上性副神経麻痺とは、僧帽筋や胸鎖乳突筋の運動機能を司っている副神経の中枢が障害されることで、僧帽筋や胸鎖乳突筋に麻痺が生じる病気です。
副神経の中枢は脳幹を構成する延髄に位置しており、仮に脳梗塞が発症して延髄の機能が障害されると、僧帽筋や胸鎖乳突筋の機能に影響が出るわけです。
その結果、思うように僧帽筋や胸鎖乳突筋が動かず、肩こりのように自覚する可能性があります。
肩こりが脳梗塞後に悪化する理由
一方で、脳梗塞後の慢性期にも肩こりが悪化しやすいことが知られています。
これは、脳梗塞や脳出血などの、いわゆる上位運動ニューロン障害によってもたらされる筋肉の過剰収縮が原因です。
そもそも、運動を司る神経経路は大きく下記のように分類されます。
- 上位運動ニューロン:脳や脊髄
- 下位運動ニューロン:末梢神経
このうち、上位運動ニューロンが障害されると下位運動ニューロンが脱抑制され、過剰に筋収縮が引き起こされてしまいます。
その結果、過剰な筋収縮によって手足を思ったように動かすことができなくなり、麻痺が出現するわけです。
この反応は、手足のみならず肩周囲の筋肉にも起こりうるため、過剰な肩周囲の筋収縮によって肩こりが悪化する可能性があります。
脳梗塞後に見られる肩こりの典型的な症状
脳梗塞後に見られる肩こりの典型的な症状は、先述した肩の筋肉の過剰収縮が主ですが、それ以外に関節の亜脱臼にも注意が必要です。
麻痺した上肢を肩関節が支えきれず、その重さに耐えられなくなると関節が亜脱臼してしまい、肩関節の痛みや怪我の原因となるため、注意が必要です。
まとめ
今回の記事では、脳梗塞後に肩こりが起こる原因について詳しく解説しました。
頭の中の病気と思われがちな脳梗塞ですが、さまざまな機序で肩周囲の血流や筋肉と密接な関わりがあり、脳梗塞の発症によって肩こりを自覚する可能性があります。
特に、後遺症として肩に痙性麻痺が残ってしまうと、現状根治するのは困難であり、理学療法での症状緩和が治療となります。
しかし、近年では再生治療が新たな治療法として非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、脳梗塞後の肩こりの改善が期待できます。
よくあるご質問
- 脳梗塞で肩こりになるのはなぜですか?
- 脳梗塞で肩こりになる理由は、肩の運動を支配する筋肉(胸鎖乳突筋や僧帽筋)の麻痺や、それらの筋肉への血流障害が挙げられます。
また脳梗塞の慢性期には痙性麻痺が生じて、筋肉が過剰に収縮することで肩こりになる可能性があります。 - 脳梗塞で肩が痛くなる原因は何ですか?
- 脳梗塞で肩が痛くなる原因は、麻痺した上肢の重さに肩関節が耐えられず、肩関節に負担がかかるためです。
ほかにも、脳梗塞の背景に椎骨動脈解離がある場合、血管痛を肩の痛みと感じる可能性があります。
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脳卒中による痺れと麻痺の改善にはリハビリテーションが重要です。具体的には、運動療法、物理療法、言語療法があります。運動療法は筋肉の収縮や血液循環を改善し神経の回復を目指します。物理療法は電気刺激やマッサージなどを利用して筋肉の動きを改善させます。言語療法は会話や嚥下の障害を改善し日常生活の質を向上させます。
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