<この記事を読んでわかること>
・心房細動の病態がわかる
・幹細胞治療やタウ阻害薬などの最新治療法が、PSPの症状進行を遅らせる可能性を持つことがわかる。
・心房細動による脳梗塞への対処法がわかる
心房細動などの不整脈は心臓内に血栓を形成することで脳梗塞の原因となります。
また、不整脈による心原性脳梗塞は梗塞範囲も広くなりやすく、出現する神経症状も重症化しやすいため、未然に発症を予防することが重要です。
この記事では、心房細動などの不整脈によって脳梗塞が起こるメカニズムや、その対処法について詳しく解説します。
不整脈が脳梗塞を引き起こすメカニズムとは?
脳梗塞には下記のような病型があり、それによってリスク要因も異なります。
- ラクナ梗塞:動脈硬化の進展によって脳の細い血管が閉塞する
- アテローム血栓性脳梗塞:動脈硬化の進展によって脳の太い血管が閉塞する
- 心原性脳梗塞:心臓で形成された血栓が脳血管に飛ぶことで閉塞する
このうち、ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞の場合は主な原因は動脈硬化であり、背景には長期的な高血圧・糖尿病・高脂血症などを認めることが多いです。
一方で、心原性脳梗塞とは血管そのものが細くなるわけではなく、心臓内に形成された血栓が飛んでしまうことで発症する脳梗塞であり、主な原因は心房細動などの不整脈です。
不整脈というのは、その名の通り心臓の拍動リズムが不整となる状態で、発症することで正しいリズムで血液を送り出せなくなります。
心臓は電気信号によって、右心房・右心室・左心房・左心室が非常に複雑に連動して動いており、この複雑な連動運動によって全身に効率よく血液を駆出しています。
しかし、電気信号が何らかの原因によって乱れてしまうと、正常な駆出が得られなくなり、心臓内で血液が滞留して血栓が形成されてしまうわけです。
川やプールでも流れが早いところはゴミが溜まりませんが、流れの遅いところにはゴミが溜まりやすく、血液も心臓内で同じような状態となって血栓が形成されます。
特に、左心房の一部である左心耳といわれる部位は血液の流れが遅くなりやすい部位であるため、血栓が形成されやすく注意が必要です。
心臓内に形成された血栓が、何かのきっかけで心臓内の血液と共に駆出されてしまうと、血栓が全身に飛んでしまい、脳血管に詰まれば脳梗塞を発症します。
心房細動と脳梗塞のリスク:どのような関係があるのか?
では実際に心房細動を患っている方の場合、脳梗塞の発症リスクはどの程度なのでしょうか?
5,070人を34年間追跡して研究したWolfらの研究によれば、心房細動の発症によって脳梗塞のリスクは5倍近くにも跳ね上がるようです。
さらに、同研究では加齢の影響もともに分析していますが、心房細動の場合は加齢の影響を強く受けることが判明しています。
具体的に、心房細動の寄与度は50〜59歳の人では1.5%でしたが、80〜89歳の人では23.5%にまで上昇しており、心房細動がある場合に高齢者が特に脳卒中にかかりやすいことを示唆しています。
生死を分ける!脳梗塞と不整脈の早期発見の重要性
ラクナ梗塞であれば、比較的局所的な脳梗塞で済むことが多いですが、心原性脳梗塞の場合は心臓に溜まった血栓が一気に脳血管に飛んでいくため、脳の左右に関わらず多数の部位で梗塞を引き起こす可能性があり、注意が必要です。
梗塞の範囲が広範になれば、麻痺やしびれ・意識障害など、さまざまな神経症状が出現し、後遺症として残ってしまう可能性があります。
そのため、根本的な原因となる不整脈に対して、早期から対処する必要があります。
不整脈に対する対処法は下記の2つです。
- 不整脈そのものの発症を抑える:抗不整脈薬やカテーテルアブレーション
- 血液をサラサラにする薬を内服する:抗凝固薬の内服
抗不整脈薬やカテーテルアブレーションは、実際に治療してもなかなか不整脈が改善しないこともあるため、基本的に血栓予防のためには血液をサラサラにする抗凝固薬の内服が重要です。
心房細動による脳卒中は、抗凝固薬などを用いた適切な治療により約6割が予防できることが知られているため、いかに早期に抗凝固薬の内服を始めるかが重要です。
対応が遅れれば生死に関わる可能性もあるため、早期から適切な対応を行いましょう。
まとめ
今回の記事では、心房細動の危険性や脳梗塞との関係性などについて詳しく解説しました。
脳梗塞によって脳が完全に破壊されると、破壊された部位に応じて麻痺やしびれなど、さまざまな後遺症が残ってしまいます。
そのため、心房細動に伴う脳梗塞に対しては、抗凝固薬の内服による血栓形成の予防が有用です。
しかし、もし対策が間に合わずに脳梗塞が発症すると、後遺症が残ってしまいまい、現状ではリハビリテーションが唯一の改善策となります。
一方で、近年では脳梗塞後の後遺症に対して再生治療が新たな治療法として非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、心原性脳梗塞に伴う脳梗塞後遺症の改善も期待できます。
よくあるご質問
- 心房細動と脳梗塞の関係は?
- 心房細動などの不整脈疾患によって心臓内の血液の流れが澱むと、流れの悪い部分に血栓が形成されます。
不意にその血栓が心拍動とともに脳に飛んでしまうことで脳梗塞に至ります。 - 心房細動の危険性は?
- 心房細動の危険性は2点あります。
1点は、心房細動が急速に起こることで有効な心拍動が得られず、血圧が低下することです。
もう1点は、血栓が形成されて、心原性脳梗塞を発症することです。
<参照元>
脳卒中治療ガイドライン2021:https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf
Pub Med:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1866765/
日本脳卒中協会:https://www.jsa-web.org/task-af/project.html
NIH:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7901582/
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心原性脳塞栓症は、心臓からの塞栓物が脳血管に流れ込み血管を詰まらせてしまう疾患です。脳卒中全体の約2割を占めます。主な原因は心房細動などの心臓疾患です。突然に発症することが多く、片麻痺、言語障害、視野障害、失語症、意識障害などがみられます。脳卒中の中でも重症化しやすく後遺症のリスクが高いことが特徴です。
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