<この記事を読んでわかること>
仙髄(S2〜S4)の役割と損傷による機能障害のメカニズム
排尿・排便障害がもたらす日常生活の具体的な課題
早期対応と適切なケアが生活の質(QOL)に与える影響
仙髄損傷は排尿や排便を担う神経機能に障害をもたらし、膀胱直腸障害を起こします。
具体的には、尿意や便意の消失、尿閉、失禁といった症状が現れ、自己導尿や摘便が必要になることがあります。
これらの障害は生活の自立度を著しく低下させ、衛生管理や社会生活への参加に支障をきたすことが多く、精神的負担も大きくなります。
仙髄(S2〜S4)の役割と損傷による機能障害のメカニズム
この記事では、仙髄(S2〜S4)の役割と損傷による機能障害のメカニズムについて解説します。
仙髄(S2〜S4)には、排尿、排便、性機能を制御する重要な神経中枢があります。
この部位は骨盤神経が分布し、膀胱や直腸の平滑筋、外尿道括約筋、外肛門括約筋、さらに性器の勃起機能などに関わる運動および感覚神経が派生します。
正常な状態では、仙髄の正常な働きによって膀胱に尿がたまると尿意が生じ、括約筋の協調運動によって適切な排尿が起こります。
同様に直腸に便がたまると便意を感じ、外肛門括約筋を弛緩させることで排便が可能となります。
また、性行為時では、勃起や射精に関与する役割もあります。
仙髄が損傷されると、こうした機能が障害され、膀胱収縮力の低下による尿閉、括約筋の弛緩不全による失禁、直腸機能低下による便秘や失禁が生じます。
さらに、陰部や肛門周囲の感覚障害も加わり、褥瘡発生のリスクが増します。
また、性機能では勃起障害や射精障害が目立ちます。
このため、仙髄損傷後は、自己導尿、摘便、性機能への支援が必要となることが多く、生活の質に大きな影響を及ぼします。
排尿・排便障害がもたらす日常生活の具体的な課題
この記事では、排尿・排便障害がもたらす日常生活の具体的な課題について解説します。
まず排尿障害では、尿意の消失や尿閉、尿失禁により、自己導尿が必要になることがあります。
自己導尿は、決まった時間に清潔な環境でカテーテルを使用する技術が求められ、外出時や職場での対応が難しくなることが多いです。
また、失禁は衣類や寝具の汚染を起こし、頻回な交換や洗濯が必要となり、介護負担や本人の精神的苦痛につながります。
排便障害では、便意の喪失や便秘、便失禁が問題となります。
便秘が続くと腹部膨満感や食欲低下を招き、摘便や下剤使用が必要になる場合もあります。
一方、便失禁では、羞恥心によって引きこもりに至ることが多く、外出や旅行を避けるようになる人が少なくありません。
また、失禁による皮膚トラブルや褥瘡発生のリスクが高まり、スキンケアの重要性も増します。
日常生活の中では排泄パターンの把握、スケジュール管理、排泄用具の準備・携帯、皮膚ケア、食事内容の調整などの細かい工夫が必要となり、本人だけでなく家族や介護者の生活全体にわたる支援が不可欠です。
早期対応と適切なケアが生活の質(QOL)に与える影響
この記事では、早期対応と適切なケアが生活の質(QOL)に与える影響について解説します。
排尿・排便障害は、放置すると失禁や便秘、尿路感染、皮膚トラブル、褥瘡といった二次的な問題を起こしやすく、本人の羞恥心やストレス、社会的孤立を深める要因になります。
しかし、早期から専門医や看護師による評価と介入が必要です。
具体的には、自己導尿、摘便、排泄用具の使用、スキンケア、食事・水分管理、排泄リズムなど、さまざまなケアがあります。
これらが提供されると、症状の悪化を防ぐだけでなく、本人が自分の排泄をコントロールすることができるようになり、精神的な安定が得られます。
さらに、外出や旅行、仕事など社会参加の機会が広がり、QOL向上につながります。
家族や介護者にとっても、正しいケア方法を知ることで、介護負担や不安が軽減されます。
まとめると、早期対応と継続的なケアは身体面だけでなく心理面や社会面にも多方面の恩恵をもたらし、患者と家族双方のQOLを守る基盤となります。
このため、医療者や多職種が連携して長期的な支援を継続することが重要です。
まとめ
今回の記事では、仙髄損傷が引き起こす排尿・排便障害とは?日常生活への影響を探るについて解説しました。
仙髄損傷は腰椎下部にある仙髄の神経が損傷し、排尿・排便障害、性機能障害、下肢麻痺などさまざまな障害を引き起こす状態です。
現在の治療はリハビリや排泄管理が中心ですが、完全な機能回復は困難です。
そのため、近年では、損傷部の神経修復や機能改善を目指す再生医療の必要性は一層高まっています。
再生医療の実際例として、「神経障害は治るを当たり前にする取り組み」を、ニューロテック®と定義しています。
また、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』を、リニューロ®と定義しました。
具体的に、リニューロ®とは、同時刺激×神経再生医療Ⓡにて『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』です。
また、その治療効果を高めるために骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリ®の併用をお勧めしています。
ニューロテック、脳梗塞脊髄損傷クリニックなどでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供し、神経障害の軽減を目指しています。
これらの治療は、これまで機能回復が望めなかった疾患を有する患者さんに期待が持てる治療となるでしょう。
よくあるご質問
- 仙髄排尿障害とは?
- 仙髄領域の神経損傷によって起こる排尿機能の障害を指します。
具体的には、膀胱の収縮力が低下するため尿が出せない尿閉や、逆に尿意がわからずに尿が漏れる失禁などがみられます。 - 仙髄損傷の症状は?
- 下肢の運動麻痺や感覚障害、膀胱直腸障害、性機能障害などがあります。
特に排尿・排便に関わる神経が障害されると、尿閉、便秘、失禁といった症状が起こります。
さらに、陰部や肛門周囲の感覚が低下するため、褥瘡リスクも高まります。
(1)脊髄損傷における下部尿路機能障害の診療ガイドライン[2019年版]|日本泌尿器科学会:https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/36_lower-urinary_dysfunction_2019.pdf
(2)脊髄損傷の排便マニュアル|国立障害者リハビリテーションセンター:https://www.rehab.go.jp/application/files/4815/2039/6868/07_29_01_PDF3.7MB.pdf
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神経因性膀胱排尿障害は、尿失禁、頻尿、排尿困難などの症状が起こるため、日常生活に障害を与えます。これらの症状は、社会生活や睡眠の妨げとなるばかりでは無く、精神的ストレスも増加させます。対応法としては、定期的な排尿スケジュール、自己導尿の習得、適切な水分摂取管理に加え、骨盤底筋体操や薬物療法があります。
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