点滴×同時刺激リハビリで神経障害の後遺症を改善へ

脊髄損傷

 脊髄損傷の後遺症改善に可能性の高い治療法とは

<この記事を読んでわかること>
脊髄損傷に伴う後遺症の新しい治療法がわかる
脊髄損傷に対する再生医療の現状がわかる
四肢麻痺患者の日常生活での注意点がわかる

脊髄損傷による麻痺やしびれは、通常完治することは困難であり、現状の治療ではリハビリテーションによって生活の自立度の維持・改善を目指すに留まります。しかし、最近ではこれらの神経学的後遺症に対して、さまざまな治療法が新たに開発されています。そこでこの記事では、脊髄損傷の後遺症改善に可能性の高い治療法について解説します。

リハビリの役割と運動機能回復への希望はあるのか

脊髄損傷患者におけるリハビリの役割は、身体の機能を脊髄損傷前の状態に戻すことではなく、今後の生活の自立度を上げるための身体を作り上げていくことです。
現在の医療技術をもってしても、一度損傷した脊髄の機能を完璧に元に戻すことは困難であり、リハビリではあくまで生活の自立度や、就業機能の回復を目指します。
例えば、重度の両下肢麻痺を認める脊髄損傷患者の場合、治療で下肢の麻痺が完全に改善することは考えにくく、むしろその後上肢だけで生活を送るための訓練の方が重要です。
着替えや物を持ち上げるなど、生活で必要不可欠な運動を可能にするためにも、上肢の運動機能を維持・向上させるリハビリが重要となります。
しかし、運動機能回復に全く希望がないわけでもありません。
近年では、医用工学分野における技術進歩により、従来達成できなかった麻痺肢の運動機能再建が可能になりつつあります。
例えば、機能的電気刺激(functional electrical stimulation:FES)と呼ばれる技術はその代表例です。
通常、脳から四肢の筋肉に送られる電気刺激は、脊髄損傷によって途絶し、四肢に麻痺が生じます。
そこで、FESを利用して体外から麻痺した手足の筋肉に直接的に電気刺激を送ることで、脳からの途絶した電気刺激を代用し、運動機能回復を目指すわけです。
すでにこの技術は実用化できるレベルにまで近づいており、近い将来運動機能回復の大きな希望となる可能性があります。
また、近年では再生医療の発達も目覚ましく、FESとはまた違った角度で運動機能回復を目指します。

再生医療による神経機能の再生と症状改善効果の程度

再生医療による神経機能の再生と症状改善効果の程度
再生医療とは、体外から投与した幹細胞が損傷した組織に定着し、その組織の細胞に分化し、自己複製することで組織を修復する治療法です。
脊髄損傷の場合、幹細胞は神経細胞に分化し、自己複製して大量の神経細胞を作り出し、損傷した脊髄の機能を再生するわけです。
しかし、実際にはこんな夢のような治療は実現できておらず、ある程度の効果を得るためにはリハビリテーションとの併用が必要となります。
これまで、多くの医療機関で脊髄損傷に対する再生医療が施されてきました。
札幌医科大学では、2019年から自家骨髄間葉系幹細胞である「ステミラック注」を用いた再生医療が実施されています。
また、2022年には慶應義塾大学で「亜急性期脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」が開始されています。
これらの治療を受けた方の中には、感覚消失していたところが感覚鈍麻まで改善した方や、四肢麻痺からわずか半年で歩行を獲得できた方など、効果を実感できている方も多いです。
一方で、思ったような効果が得られず、治療後もほとんど変化を認めない方もいるため、その効果は個人差も大きく、患者によって得られる効果も異なります。
再生医療の分野はまだまだ発展途上であり、今後のさらなる知見が待たれるところです。

脊髄損傷による四肢麻痺の日常生活における注意点

脊髄損傷による四肢麻痺の日常生活における注意点としては、褥瘡と痙縮の予防が挙げられます。
褥瘡とはいわゆる床ずれで、四肢麻痺によって体位変換できなくなることで身体の一定箇所に常に圧力がかかってしまい、皮膚の血流が障害されることで生じます。
好発部位は踵、仙骨部、肩甲骨部、後頭部などが挙げられ、進行すると感染・壊死する可能性もあるため、日樹生活からしっかりと予防しておくことが重要です。
次に、痙縮とは脳卒中や脊髄損傷などの上位運動ニューロン障害がきっかけとなり、筋肉の持続的な緊張によって、硬く強張ってしまう症状のことです。
筋肉の柔軟性が失われ、リハビリにとって邪魔になるだけでなく、場合によっては疼痛や、関節の変形を招く可能性もあります。
褥瘡と痙縮はどちらも、早期からリハビリを行い、身体や関節を少しでも動かすことで進行を抑制できるため、発症早期から予防を意識して生活すると良いでしょう。

まとめ

今回の記事では、脊髄損傷の後遺症改善に可能性の高い治療法について詳しく解説しました。
脊髄損傷による麻痺やしびれなどの後遺症は、現状では機能を完全に元に戻すことは困難であり、あくまで日常生活への復帰や自立度の向上を目標としたリハビリが主です。
しかし、近年では医用工学分野や再生医療分野の技術向上も目覚ましく、これらを組み合わせてリハビリを行うことで、さらなる後遺症改善が期待できます
また、最近では「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、脊髄や神経の治る力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、これまで改善の困難であった脊髄損傷の後遺症の改善が期待できます。

よくあるご質問

脊髄損傷後のリハビリの効果とは?
脊髄損傷後のリハビリの効果として、損傷した神経ネットワークの再構築が挙げられます。リハビリによって神経細胞の軸索が伸長し、再び損傷部に繋がることで、失われた機能の改善が期待できます。

脊髄損傷の後遺症の症状は?
脊髄損傷の後遺症として最も代表的な症状は、四肢の麻痺やしびれです。また、仙髄によって支配されている膀胱や直腸の機能も障害されるため、尿失禁や便失禁などの膀胱直腸障害も代表的な症状です。

<参照元>
脊髄損傷のリハビリテーション治療|日本リハビリテーション医学会:https://www.jarm.or.jp/civic/rehabilitation/rehabilitation_03.html
慢性期脊髄損傷者の歩行再建と再生医療 | J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/resja/37/1/37_26/_pdf/-char/ja
脊髄損傷患者に対する最新のリハビリテーション治療 | J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/7/56_56.555/_pdf
脊髄損傷に対する再生医療等製品「ステミラック注」を用いた診療について | 札幌医科大学付属病院:https://web.sapmed.ac.jp/hospital/topics/news/stemirac.html

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