点滴×同時刺激リハビリで神経障害の後遺症を改善へ

脊髄損傷

 首の手術による脊髄損傷の治療と回復プロセス

<この記事を読んでわかること>

脊椎手術の術式による違いがわかる
脊髄損傷術後の管理方法がわかる
脊髄損傷術後の適切なリハビリ方法がわかる


脊髄損傷は非常に緊急性の高い疾患であり、特に頸髄の損傷は呼吸停止する可能性があるため、早急に緊急手術が必要です。
術後のより良い機能回復を得るためには、適切な術後管理と早期からのリハビリが重要です。
そこでこの記事では、首の手術による脊髄損傷の治療と回復プロセスについて詳しく解説します。

脊髄損傷を伴う頚椎手術の一般的なプロセス

脊髄損傷を伴う頚椎手術の一般的なプロセス
脊髄は脳と身体をつなぐ架け橋のような役割を担う重要な神経組織であり、背骨や靭帯・椎間板などによって構成される、脊柱管と呼ばれる円柱状の構造物によって常に保護されています。
しかし、外傷や交通事故・転落・転倒などによって脊柱管内の構造が変化すると、内部を走行する脊髄が損傷し、さまざまな神経症状をきたすため注意が必要です。
軽度であれば若干の痺れや麻痺のみですが、重度の脊髄損傷となれば四肢麻痺によって歩行や体位変換などの基本的にな日常動作も困難となり、また膀胱や直腸の正常な機能も障害されるため、正常な排尿や排便も失われます。
そこで、発症早期に適切な治療を行うことが重要です。
軽度であればカラー固定やコルセット等の外固定による保存療法が選択されますが、神経症状が目立つ場合は手術療法が選択されます。
(参照サイト:骨折の解説|日本整形外傷学会)
脊髄損傷に対して行われる手術療法は主に下記の通りです。

  • 除圧術:脊髄を圧迫している原因を除去する手術
  • 固定術:不安定な脊椎を固定する手術

どちらの手術も、脊髄を損傷するに至った要因を除去し、その上で脊椎が不安定であれば脊椎を金属製のプレートなどで固定します。
通常は、全身麻酔を行った患者をうつ伏せにした状態で手術を行う後方アプローチが一般的ですが、除圧の対象が椎間板である場合などは仰向けで前方からアプローチすることもあります。
またどのような術式であっても、脊髄周囲の手術であるため、誤って手術操作で脊髄や周囲の神経を損傷しないよう、手術中には細心の注意が必要です。
場合によっては、手術中に常に神経機能をモニタリングして脊髄を保護しながら手術を行うこともあります。

手術後の初期治療で重要なポイント

脊椎手術後、初期治療として特に重要なポイントは下記の6つです。

  • 早期から離床を促し、リハビリを行う
  • 早期から飲食を再開する
  • 適切な疼痛管理を行う
  • 不必要なカテーテルやドレーンは離床の妨げになるため、抜去する
  • 感染対策を行う
  • 術後の呼吸状態をしっかりモニタリングする

脊椎手術後は、元々の脊髄損傷による麻痺に対して早期に理学療法などのリハビリを行いたいところですが、自身での飲食が困難であったり不必要なカテーテルやドレーンがあると離床の妨げになります。
また、術後の疼痛が強いと離床は進まず、特に固定術の場合は除圧術よりも疼痛が強い術式であることから、十分な鎮痛を行うことが肝要です。
次に、脊椎術後には感染症を引き起こすリスクがあり、その発症リスクは1〜2%という報告から10%前後という報告もあり、さまざまです。
(参照サイト:脊椎術後SSI発生要因の検討-Japan Nosocomial Infections Surveillance(JANIS)データとの比較からの問題点抽出-|J STAGE)
仮に感染を発症した場合、最悪の場合再手術が必要となってしまうため、予防的な抗菌薬の使用と、体温チェックや創部観察など、患者状態の把握による早期発見が必要となります。
最後に、脊椎、特に頚椎手術においては術後の呼吸状態のモニタリングが肝要であり、その理由は下記の通りです。

  • 横隔神経麻痺の可能性があるため
  • 気道浮腫による窒息の可能性があるため

手術中に頸髄やそこから分岐する横隔神経を損傷したり、術後の再灌流障害によって神経が障害されると、呼吸に関わる横隔神経がうまく機能せず、横隔膜がうまく運動できなくなることで呼吸状態が悪化する可能性があります。
(参照サイト:頚椎椎弓形成および後方固定術術後に呼吸不全を発症した1症例|J STAGE)
さらに、術後に出血を引き起こすと頚部に血液が溜まり、周囲を走行する静脈を圧迫することで気道に浮腫が生じ、窒息する可能性もあります。
どちらも命に関わる合併症であるため、術後の呼吸状態のモニタリングが必要不可欠です。

機能回復を目指したリハビリテーションの進め方

脊椎術後はいかに早期からリハビリテーションを進めるかが肝要です。
以前までは術後早期のリハビリは危険と考えられていましたが、安静によって生じる諸問題(筋力低下・肺炎・血栓症・認知機能低下など)の方が問題であると認識され、近年では術後早期のリハビリが推奨されています。
ただし、患者によって術前の運動機能や麻痺の程度は異なるため、各患者の機能に見合ったリハビリを行うことが重要です。
まずはベッドサイドで実践可能なストレッチや、足首・太ももなどの運動を中心に行うと安全かつ効果的にリハビリを行えます。
リハビリ中には、不用意なカテーテル・ドレーンの抜去、神経症状の悪化、出血、疼痛増強などの症状を引き起こす可能性があるため、十分注意しましょう。

まとめ

今回の記事では、首の手術による脊髄損傷の治療と回復プロセスについて詳しく解説しました。
特に頚椎損傷では早期に緊急手術を行わなければ命に関わる可能性もありますが、手術そのものにもさまざまなリスクがあるため、注意が必要です。
また、術後は早期からリハビリに取り組むことで、神経機能のより良い回復が期待できます。
一方で、手術で脊髄を損傷したり、脊髄損傷そのもので不可逆的な後遺症を負った場合、現状、唯一の改善策はリハビリテーションですが、それでも神経症状を根治することは不可能です。
そこで、近年では脊髄損傷に関わる後遺症に対する再生医療の効果が大変注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった脊髄損傷後遺症の改善が期待できます。

よくあるご質問

頚椎症性脊髄症のリハビリでどんなことをするのでしょうか?
頚椎症性脊髄症のリハビリでは、関節可動域の維持や改善、麻痺側の筋力の維持や改善、日常生活のなかで適切な姿勢の指導などを行います。
一方で、頚部に負担のかかるような動作、運動は控える必要があります。

頚椎手術後のリハビリ期間は?
頚椎手術後のリハビリ期間は、術式や手術の範囲、患者の年齢などによっても異なりますが、多くの場合、2〜4ヶ月程度と考えておきましょう。
リハビリを怠ると筋力が低下し、日常生活にも支障をきたすため、継続的なリハビリが肝要です。

<参照元>
1骨折の解説|日本整形外傷学会https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip34.html
2脊椎術後SSI発生要因の検討-Japan Nosocomial Infections Surveillance(JANIS)データとの比較からの問題点抽出-|J STAGEhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/32/3/32_300/_pdf
3頚椎椎弓形成および後方固定術術後に呼吸不全を発症した1症例|J STAGEhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/35/1/35_027/_pdf/-char/ja

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