<この記事を読んでわかること>
・痛み緩和のための薬物治療
・非薬物療法による痛みの管理
・脊髄損傷患者のための包括的な痛み治療計画
脊髄損傷に伴う痛みの緩和と治療には総合的なアプローチが必要です。薬物療法では鎮痛薬や抗炎症薬の使用、非薬物療法では物理療法や神経ブロックが有効です。その他、認知行動療法やリハビリテーションも痛みの軽減に役立ちます。痛みの持続期間や程度に応じて、医療スタッフのもとで適切な治療計画と定期的なフォローアップが必要です。
この記事では、脊髄損傷に伴う痛みの緩和と治療について3つの観点から説明いたします。
痛み緩和のための薬物治療
薬物治療は、患者の苦痛を和らげ、生活の質を改善するための重要な手段です。
鎮痛薬が最も使われます。
鎮痛薬はステロイド系と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類されます。
ステロイド系鎮痛薬は、コルチコステロイドと呼ばれるホルモン剤です。
本薬は、炎症反応を抑制することにより痛みを軽減します。
デキサメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンなどがあります。
一方で、NSAIDsは、プロスタグランジンと呼ばれる物質の生成を阻害することにより痛みを軽減します。
サリチル酸誘導体(アスピリン)、イブプロフェン、ナプロキセンなどがあります。
NSAIDsは使用範囲が広く、関節炎、筋肉痛、頭痛、歯痛などの痛みのコントロールにも使用されます。
しかしながら、胃潰瘍や出血などの消化器系副作用に注意が必要であるため、適切な投与量と期間を守ることが重要です。
抗うつ薬や抗てんかん薬などの他の薬剤も、特定の痛み状態に対して有効であり、神経系の痛みを緩和する場合があります。
非薬物療法による痛みの管理
以下が代表的な非薬物療法です。
物理療法
脊髄損傷に伴う筋肉の強化、柔軟性の向上などを目的として行われます。
具体的には、エクササイズ、ストレッチ、マッサージ、電気刺激療法、温熱療法などがあります。
適切に実施されると筋肉の強化と関節の機能向上につながり痛みが軽減します。
神経ブロック
痛みの箇所に薬剤を直接注入し痛みの神経を抑える治療です。
薬剤として、局所麻酔薬やステロイドが使用され、炎症を抑え、神経の信号伝達を遮断することができます。
磁気療法
磁場を用いて痛みを軽減する治療です。
炎症や筋肉の緊張を軽減し、神経の活動を調整することにより痛みを軽減します。
超音波療法
高周波の音波を使って深部組織に熱を発生させ、筋肉の緊張や炎症を緩和する治療です。
血行を促進し筋肉の柔軟性を向上させることにより痛みを軽減します。
認知行動療法
痛みに対する思考や行動パターンを変えることで、痛みへの対処能力を向上させる心理療法の1つです。
脊髄損傷患者のための包括的な痛み治療計画
複数のアプローチを組み合わせて痛みを管理し患者の生活の質を向上させることを目指します。
以下が検討すべき治療計画の具体例です。
評価と診断
患者の症状や状態を理解するために、最初に痛みの原因や種類を正確に評価し包括的な評価が必要です。
薬物療法
適切に鎮痛薬を使用します。
適切な薬物療法の選択は、患者の痛みの程度、原因、および既存の状態に基づいて決定されます。
非薬物療法
物理療法、神経ブロック、磁気療法、超音波療法などを検討します。
その他、心理療法や認知行動療法も、痛みへの対処能力を向上させるために取り入れられます。
リハビリテーション
筋力の回復、日常生活の機能の向上、および痛みの管理を目指して患者に提供されます。
具体的には、フィジカルセラピー、作業療法、および言語療法などがあります。
支援グループやカウンセリング
脊髄損傷を経験した患者や家族のための支援グループやカウンセリングサービスが提供されます。
患者と家族が痛みや障害に対処し、心理的および社会的なサポートを受けることができます。
まとめ
今回の記事では、脊髄損傷に伴う痛みの緩和と治療について解説しました。
脊髄損傷は神経細胞の損傷が原因で、神経細胞の死滅に伴い様々な身体的障害が起きる疾患です。
神経細胞は死滅と再生が難しい細胞です。
しかしながら再生が可能となりましたら身体機能は回復が期待されます。
そのため、神経の再生医療は希望をもたらす可能性を秘めています。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、脳脊髄損傷部位の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって脊髄損傷の新たな治療に光明がさすことを期待したいです。
よくあるご質問
- 脊髄損傷後に痛みが出るのはなぜですか?
- 痛みが出る主な理由は、神経組織の損傷や炎症、神経の過剰興奮、神経の再生過程に関連する変化などが起因しています。これらが要因により、神経信号が適切に伝わらなくなるため痛みが生じます。
- 高齢者の脊髄損傷の特徴は?
- 特徴として、骨密度や筋力の低下による脆弱性があります。加えて、高齢者が有する基礎的疾患や認知機能の低下など複数の合併症が存在することがよくあります。このため、治療やリハビリテーションが複雑になる場合が多々あります。
脊髄レベルでの痛みに対する治療法| 日本脊髄外科学会:http://www.neurospine.jp/original36.html
Pain Management Network:https://aci.health.nsw.gov.au/chronic-pain