点滴×同時刺激リハビリで神経障害の後遺症を改善へ

脊髄損傷

 すべり症の原因とは?そのメカニズムを徹底解説

<この記事を読んでわかること>
すべり症の発症原因がわかる
分離すべり症と変性すべり症の違いがわかる
すべり症と遺伝的要因の関係がわかる

すべり症とは、なんらかの原因で脊椎の安定性が低下し、上位の椎体が前方にすべることで、その前方に位置する脊髄や神経が圧迫される病気です。
すべり症は病態別に変性すべり症と分離すべり症に大別され、それぞれの原因やメカニズムも異なります。
この記事では、すべり症の原因や発症のメカニズムについて詳しく解説します。

加齢による変性:椎間板と関節の劣化がもたらす影響

加齢による変性:椎間板と関節の劣化がもたらす影響
脊椎、いわゆる背骨は、小さい椎骨が椎間板や靭帯で連結して、連なって形成されており、7個の椎骨で形成される頚椎、12個の椎骨で形成される胸椎、5個の椎骨で形成される腰椎に分類されます。
椎骨同士は、椎間板や靭帯・筋肉などで強靭に連結されて、脊柱管というトンネルを形成し、この脊柱管内部を脊髄が走行していますが、なんらかの原因で上位椎骨が下位の椎骨に対して前方にズレることで、脊髄や神経が圧迫される病気をすべり症といいます。
脊椎すべり症は、その原因によって下記の2つに大別可能です。

  • 分離すべり症:椎体後方が疲労骨折し、安定性が損なわれることで滑る
  • 変性すべり症:疲労骨折は認めず、加齢に伴う椎間板の変形によって滑る

いわゆる、中高年に多いすべり症は変性すべり症のことで、加齢によって椎間板と関節が劣化し、椎骨を支えることができなくなることですべります。
では、具体的にどのような変化を起こすのでしょうか?
椎間板は中央がゼリー状の髄核と、周囲を囲む繊維輪(コラーゲン繊維)から形成されており、椎骨と椎骨の間でクッションのように機能しています。
しかし、加齢とともに髄核の水分が失われていき、クッションとしての機能が低下することで椎骨同士の連結にずれが生じるのです。
変性すべり症は分離すべり症よりも脊柱管の狭窄を起こしやすく、下肢の痺れや筋力麻痺、排尿や排便の調整が効かなくなる膀胱直腸障害など、さまざまな神経症状をきたします。

外傷やスポーツの影響によるすべり症のリスク

外傷やスポーツの影響によるすべり症のリスク
一方で、分離すべり症は繰り返す激しい運動や外傷などによって、椎体後方が骨折することで生じるすべり症であるため、外傷やスポーツ選手で生じやすいです。
特に発症リスクが高いのは下記のようなケースです。

  • 繰り返し腰を反ったり、腰の回旋運動を行うスポーツ選手
  • 骨の成長過程にある10代の子供で激しいスポーツを行うケース
  • 不適切な姿勢で長時間作業を行うケース
  • 重量物を頻回に持ち上げるケース

主に腰椎後方の疲労骨折を伴うため、分離すべり症の場合は腰痛を伴いやすく、腰の運動によって誘発されるため、日常生活に与える支障も少なくありません。
さらに、ズレた腰椎が周囲を走行する神経を圧迫するため、下肢の麻痺やしびれを併発する可能性があります。
変性すべり症と異なり、椎骨のすべりだけでなく、腰椎の疲労骨折が加わっている点でも、治療の上では厄介な病態です。

遺伝的要因や骨の異常が引き起こすケースとは?

実は、すべり症には遺伝的要因も大きく影響することが知られています。
遺伝によって脊椎周囲の構造が脆弱であったり、椎間板の元になるコラーゲン繊維が不十分な場合、通常の人よりもすべり症を発症しやすくなるためです。
実際に、家蔵内に同様の症状を持つ人が多い場合、本人もすべり症を発症する可能性が高く、注意が必要です。
遺伝様式にはさまざまな学説があり、確実にはなっていませんが、特に分離すべり症においては常染色体優性遺伝を提唱する学説も少なくありません。
常染色体優性遺伝であれば、性別に関係なく50%の確率で次世代に遺伝するため、高い遺伝性を持つことになります。
そのため、親子や兄弟など、血の繋がりのある家族に発症者が多い場合、腰部に過度な負担がかかるとすべり症を発症する可能性が高いため、普段から適切な姿勢を保ち、腰部に過度な負担のかかる作業やスポーツは避けると良いでしょう。

まとめ

今回の記事では、すべり症の発症メカニズムや原因について詳しく解説しました。
すべり症は病態によって、比較的若年者やスポーツ選手などに発症しやすい分離すべき症と、加齢によって椎間板が変性することで発症する変性すべり症の2つに大別されます。
どちらにせよ、脊椎の一部が前方にすべってしまい、脊椎前方に位置する脊柱管内を走行する脊髄や、脊髄から分岐する神経が圧迫されることでさまざまな神経症状をきたします。
腰椎のずれに伴う腰痛に対しては、薬物療法や装具療法などによって症状の増悪防止や緩和を試みますが、過度なずれによって神経症状が重くなった場合は、不安定な脊椎を固定するための手術が必要です。
仮に治療が遅れれば、脊髄や神経に不可逆的なダメージが生じて、麻痺やしびれ、膀胱直腸障害などの後遺症が残ってしまう可能性があります。
これらの後遺症に対して、主な治療はリハビリテーションですが、根治することが困難であり、あくまで症状の緩和が主な治療目的となります。
そこで、近年ではすべり症に伴う重篤な神経学的後遺症に対する再生医療の効果が大変注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であったすべり症による神経学的後遺症の改善が期待できます。

よくあるご質問

すべり症の原因は何ですか?
すべり症の原因は、加齢に伴う椎間板の変性や、外傷もしくは激しい運動によって脊椎の一部が疲労骨折することです。
どちらの原因であっても、脊椎が不安定になり、一部が前方にすべってしまうことでさらに前方に位置する脊髄が圧迫されて発症します。

すべり症を悪化させないためにはどうしたらいいですか?
すべり症を悪化させないためには、脊椎に負担のかからないように、特に腰部に激しい負担のかかるような運動や作業は避ける必要があります。
また、不適切な姿勢を長時間保つことで症状がさらに悪化する可能性があるため、普段から適切な姿勢を保つことが肝要です。

<参照元>
日本整形外科学会:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondylolisthesis.html
日本脊椎脊髄病学会:https://ssl.jssr.gr.jp/assets/file/common/sick/d_tsuikanban.pdf
Pub Med:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/383720/

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