患者様の背景
2017年5月に自転車で転倒され頭部を打ち、右側の大脳を挫傷されました。
受傷後に脳出血や脳の腫れによる症状増悪を避けるために外減圧術という頭蓋骨の一部を外す手術をされました。
その後、状態が安定されたため頭蓋骨を元の状態に戻す頭蓋形成術という手術をされました。
しかし中脳といわれる部位の左側に脳梗塞も出現してしまい、事故後3週間ほどは昏睡状態になってしまうほどの重症でした。
昏睡状態から回復されたときには指1本しか動かせない状態だったようですが、リハビリを頑張られて杖歩行ができるようになり、仕事復帰されるまでに回復されました。
しかしその後は改善を感じられなくなった様子で、少しでも良くなりたいとの想いから再生医療をされることになりました。
治療前の症状について
大脳では右側が挫傷し、中脳では反対の左側が脳梗塞を発症したため、片麻痺が両側に出現している状態でした。
左上肢の動きはわずかにぎこちなさがあるくらいでしたが、利き手である右上肢は左上肢よりも動きが硬い状態でした。
下肢は両側ともに太ももの内側や裏側の筋肉やふくらはぎの筋肉が刺激に反応しやすい状況で、常にかなりの力が入っていました。
膝を伸ばした状態では足首を上下に動かすのがとても苦手でした。
反対にお腹・腰・臀部などの身体の中心に近い部位にある筋肉(特に右側)には力が入りにくい状態でした。
そのため歩くのは杖を用いれば可能でしたがスムーズな足の運びができていなかったり、腰回り・股関節周りがフラフラしていたりで、転倒しないように気を付けながらゆっくりとした歩行になっていました。
治療経過
【1回目点滴後~2回目点滴前】※約1か月経過
右足首を上げる動きがわずかに良くなっていました。
【2回目点滴後~3回目点滴前】※約1か月経過
右足首の上げ下ろしがスムーズになりました。
また腰周り・股関節周りの力が強くなってきたことも加わり、杖歩行の際に全身に入っていた過剰な力が軽減し、滑らかかつ速く歩けるようになってきました。
両上肢に過剰に力が入りやすかった状態も軽減し、右指や左肩の動きがスムーズになってきました。
【3回目点滴後~フォロー検診時】※約1か月経過
両膝関節周囲の筋肉の硬さが軽減し、膝関節の動きが滑らかになりました。
左足首の上げ下ろしもスムーズになりました。
両上肢は自分で動かすときに勝手に力が入って硬い動きになっていたのが、かなり力を抜いて滑らかに動かせるようになりました。
これらの影響で杖なしでもスムーズかつ安定して歩けるようになりました。
方向転換の時には立ち止まることなく、バランスを保ったままスムーズに180°の方向転換が行えるようになりました。
また、歩いているときの腕の振りも出るようになりました。
改善ポイント
身体機能
- 上肢では両肘や右指が、下肢では両股関節や両膝関節の筋肉の硬さが軽減し、それぞれの動きがスムーズになりました。
両足首も滑らかに動かせるようになってきました。 - 腰回り・股関節周りの筋肉が働きやすくなり、身体の中心が安定したことでバランスが良くなりました。
- 脳卒中の機能障害は運動麻痺だけではなく、感覚障害や高次脳機能障害など多岐にわたるため、脳卒中の機能障害を点数化して総合的に評価する脳卒中機能障害評価法(SIAS)という評価法があります。
また、運動麻痺の程度を表したBrunnstrom Recovery Stage test(BRS-t)という評価法もあります。
どちらも点数が高いほど機能が良いということになりますが、ご本人さまは以下の経過で良くなられました。
SIAS | 1回目 | 2回目 | 3回目 | フォロー検診 |
---|---|---|---|---|
右半身 | 47点 | 49点 | 56点 | 60点 |
左半身 | 52点 | 53点 | 60点 | 63点 |
BRS-t | 1回目 | 2回目 | 3回目 | フォロー検診 |
---|---|---|---|---|
右上肢 | 5 | 5 | 6 | 6 |
右手指 | 5 | 5 | 6 | 6 |
右下肢 | 4 | 4 | 4 | 5 |
左上肢 | 5 | 5 | 6 | 6 |
左手指 | 5 | 5 | 6 | 6 |
左下肢 | 4 | 4 | 4 | 5 |
歩行
- 杖を使用すれば一定の速度を保ちながら楽に長距離の歩行ができるようになりました!
- 平地では杖が無くても以前より柔らかく歩けるようになってきました!
- バランスが良くなり方向転換を立ち止まることなく流れのままに行えるようになりました!
- 歩く時に両手の振りが出るようになりました!
実際の歩行場面についてはYouTube動画をぜひご覧ください。
今後のリハビリについて
両下肢をスムーズに動かせるようになり歩く効率が良くなったことで、今後は特別なリハビリを行わなくても普段の生活の中で少しずつ歩く機会を増やしていただければ、腰回り・股関節周りがさらに安定し、両下肢の動きもさらにスムーズになっていくと思われます。
それにより階段の降段も行いやすくなっていくと考えています。
リハビリ担当者のコメント
ご本人は再生医療を行うにあたり『歩くのが良くなりたい』・『階段、特に下りるほうが楽にできるようになりたい』との希望をおっしゃられていました。
今回、再生医療とリハビリを行っていただいたことで長い距離でなければ杖なしでもスムーズかつ速く歩けるようになっていただけました。
また、歩く格好が良くなったことで外出時の疲労が軽減し、杖を用いれば長い距離も歩けるようになったことで行動範囲が広がり、再生医療の効果にご満足いただけたようです。
フォロー検診時では階段の降段については大きな変化を実感していただくところにまでは届きませんでしたが、歩行の改善とともに今後良くなっていかれると考えております。
治療内容
治療期間 | 2023年11月~2024年4月(初診~フォロー検診) |
---|---|
治療内容 | 骨髄由来幹細胞点滴3回コース+点滴中同時リハビリ3回 自己骨髄由来サイトカインカクテル点鼻療法(90本)、TMS治療(計3回) |
治療費 | 海外患者様価格 |
こちらの患者様は、幹細胞点滴治療3回投与コースを受けられました。
1回の点滴投与で約1億個の骨髄由来幹細胞をお身体に戻しますので、合計3億個の幹細胞を投与しております。
また、ご自身の幹細胞を培養する際に生成される〈自己骨髄由来サイトカイン〉を使用した点鼻治療も併用しております。
骨髄由来サイトカインには、神経保護因子や神経再生因子が多く含まれており、リハビリの効果を後押ししてくれる作用があります。
当院では、より治療効果を高めていただくためにも併用で治療されることをおすすめしております。
まとめ
当記事の患者様の治療経過・改善の様子はYoutubeでもご紹介しておりますので是非ご覧くださいませ。歩行時の比較動画もございます!
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、脳卒中や脊髄損傷による神経障害の後遺症治療を専門に再生医療を行っております。
当院では、幹細胞点滴をしながら麻痺などが出ている部位のリハビリを同時に実施する【神経再生医療™×神経再生リハビリ®】という治療方法を提供しており、
狙った神経回路の強化と再構築を目指しております。
幹細胞がお身体に入るタイミングでリハビリをすることがとても重要であり、同時にリハビリを行うことで幹細胞の活性化や
狙った神経回路の伝達を強化すること、血流がアップすることで幹細胞が集まりやすくなることが期待できます。
治療の詳しい内容や効果、改善の症例など何か気になる点がございましたら、まずは再生医療カウンセラーまでお気軽にご相談ください。
ご病気の経緯や現在の症状に対するお悩みなどをヒアリングしながら、治療の詳しいご案内をさせていただきます。
患者様の声
治療をされた多くの患者様のなかから、ご承諾をいただきました患者様のお声をご紹介しています。
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