<この記事を読んでわかること>
・脊髄損傷の主な原因(交通事故、スポーツ、転倒、加齢など)についてわかる。
・脊髄損傷が体に及ぼす影響(麻痺、自律神経系の障害など)についてわかる。
・脊髄損傷の予防策(生活環境の見直しや栄養管理、適切な防具の着用など)についてわかる。
脊髄損傷の原因として多い交通事故やスポーツ、高齢者の転倒などの具体例を挙げながら、その影響や症状を詳しく解説します。
さらに、脊髄損傷が引き起こす麻痺や自律神経の障害、日常生活への影響についても触れていきます。
予防策や損傷後のサポート方法についても具体的にご紹介し、リスクを減らすための知識についても説明していきます。
交通事故が脊髄損傷に与える影響
脊髄損傷は、脊髄の脱臼や骨折によって脊髄が傷つくことです。
脊髄損傷の原因としては、交通事故や高所からの落下などによるケースと、頸椎の変性が元になって起こる非骨傷性頸髄損傷などがあります。
いずれも、損傷を受けた脊髄の高さによって症状が変わってきます。
脊髄の損傷の程度によって、「完全損傷」と「不完全損傷」に分けることができます。
「完全損傷」とは、脊髄の機能が完全に失われた状態を指し、この場合、脳からの指令は体に伝わらず、運動機能が喪失します。
また、脳へ情報を送ることもできなくなるため、感覚も失われます。
簡単に言えば、「動かすことも感じることもできない」という状態(麻痺)になります。
ただし、完全に無感覚になるわけではなく、損傷部位から下の麻痺した部分において、痛みや異常な感覚を感じることがあります。
一方で、「不完全損傷」は脊髄の一部に損傷があるものの、部分的に機能が残されている状態です。
これには、感覚機能だけが残っている重いケースから、ある程度運動機能が保たれている軽いケースまで、さまざまな段階があります。
損傷後しばらく経って慢性期になると、動かせないはずの筋肉が本人の意思に反して突然こわばったり、けいれん(痙攣)を引き起こすことがあります(痙性)。
麻痺の程度によって、日常生活に大きな影響が出る場合があります。
例えば、手では箸を使ったり字を書くことが難しくなったり、完全にできなくなることもあります。
その際には特殊な道具が必要となる場合があります。
足では歩行が困難になったり不可能になったりし、杖や車椅子が必要になることも少なくありません。
特に、頸椎の高い位置で脊髄損傷が起こると、手足だけでなく呼吸筋も麻痺するため、人工呼吸器なしでは生命を維持することが難しくなります。
さらに、排尿や排便といった排泄機能にも影響が及び、オムツや導尿カテーテルなどの補助器具が必要になることがあります。
また、男性では勃起障害などの性機能の問題が生じることもあります。
脊髄損傷は運動や感覚の問題に加えて、自律神経系にも影響を及ぼします。
麻痺した部位では代謝が低下するため、傷が治りにくくなります。
また、発汗や鳥肌、血管の収縮・拡張といった自律神経の働きが損なわれ、体温調節が難しくなることもあります。
(参照サイト:脊椎・脊髄損傷|労災疾病医学研究普及サイト)
(参照サイト:脊髄損傷|一般社団法人日本脊髄外科学会)
怪我による脊髄損傷は外傷性脊髄損傷(TSCI)と言います。
日本におけるTSCIの最近の発生率を調べた報告によると、交通事故によるTSCIは全体の頸髄損傷の中では平面の転倒(38.6%)に次いで多く、20.1%となっています。
また、年齢別にみると、0-9歳の小児や、20−29歳の若い方に割合として多くみられます。
さらに、交通事故の原因で最も多かったのは四輪車(46.3%)で、次いで二輪車(26.6%)でした。
(参照サイト:Miyakoshi N, Suda K, Kudo D, Sakai H, Nakagawa Y, Mikami Y, Suzuki S, Tokioka T, Tokuhiro A, Takei H, Katoh S, Shimada Y. A nationwide survey on the incidence and characteristics of traumatic spinal cord injury in Japan in 2018. Spinal Cord. 2021 Jun;59(6):626-634. doi: 10.1038/s41393-020-00533-0. Epub 2020 Aug 11. PMID: 32782342.)
交通事故による脊髄損傷は、特に車両同士の衝突や自動車からの投げ出しなど、強い衝撃を伴う場面で発生しやすいです。
また、事故の衝撃による頸椎の過度な屈曲や伸展(いわゆるむち打ち状態)が、脊髄損傷の原因となる場合もあります。
スポーツや転倒による外傷のリスク
脊髄損傷がスポーツなどで起こるリスク
脊髄損傷は、スポーツや転倒による外傷によっても起こります。
日本のTSCIについて調べた調査では、スポーツによるTSCIの原因として最も多かったのはスキー(11.9%)で、次いで自転車競技(10.4%)、スノーボード(8.9%)、ラグビー(8.9%)、サーフィン(8.9%)の順という結果でした。
スポーツによる脊髄損傷は、10−19歳の方に多くみられます。
特に接触型スポーツやスピードが関係する競技では、脊髄に大きな負担がかかる危険性が高まります。
適切な防具の着用や、技術を学ぶためのトレーニングが事故防止に重要です。
一方、転倒による脊髄損傷は、60歳以上の高齢の方に多くみられます。
高齢者の場合、骨密度の低下や筋力の衰えが転倒のリスクを高めており、骨折や脱臼による脊髄損傷につながる可能性があります。
特に家庭内や日常生活の中での転倒が多いため、環境の見直し(段差の解消や手すりの設置)も大切です。
加齢や骨粗鬆症が引き起こす脊髄の弱化
加齢とともに骨の強度が低下し、特に骨粗鬆症を抱えている場合、脊椎骨の圧迫骨折が起こりやすくなります。
これが脊髄に影響を与え、神経の損傷を引き起こすことがあります。
高齢者に多い転倒事故がこの状況を悪化させる要因となり、軽い外力でも重度の脊髄損傷を引き起こす可能性があります。
また、頸椎の変性が進行することで、非骨傷性頸髄損傷(SCIWORA)が発生するケースもあります。
骨の健康を保つために、適切な栄養摂取や運動習慣が予防に役立ちます。
(参照サイト:「脊髄損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる)
(参照サイト:脊髄損傷|一般社団法人日本脊髄外科学会)
(参照サイト:脊椎・脊髄損傷|労災疾病医学研究普及サイト)
まとめ
脊髄損傷は、交通事故、スポーツ、転倒、加齢による骨の弱化など、さまざまな原因によって引き起こされます。
年齢や生活スタイルに応じたリスクを理解し、予防策を講じることが、脊髄損傷の発生を減らすために重要です。
また、損傷後の早期対応が予後を大きく左右するため、専門医の診断を迅速に受けることが求められます。
脊髄は一度損傷を受けると、修復は難しいとされてきました。
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よくあるご質問
- 脊髄損傷の原因は?
- 脊髄損傷の原因は、主に外傷性と非外傷性に分けられます。
外傷性の原因としては、交通事故や高所からの落下、スポーツ中の外傷、60歳以上の高齢者に多い転倒などが挙げられます。
非外傷性の原因には、加齢による頸椎の変性や骨粗鬆症による脊椎骨の圧迫骨折などが含まれます。 - 脊椎麻痺の原因は?
- 脊椎麻痺は、脊髄が脱臼や骨折で圧迫されたり、損傷を受けることが直接的な原因です。
交通事故では、車両の衝突や自動車からの投げ出しが衝撃となり脊椎麻痺を引き起こすことがあります。
また、接触型スポーツや高所からの転落も脊椎麻痺のリスクを高めます。
高齢者の場合、骨粗鬆症により軽い転倒でも脊髄が損傷し、麻痺を引き起こす可能性があります。
(1)脊椎・脊髄損傷|労災疾病医学研究普及サイト:https://www.research.johas.go.jp/sekizui/
(2)脊髄損傷|一般社団法人日本脊髄外科学会:https://www.neurospine.jp/original62.html
(3)Miyakoshi N, Suda K, Kudo D, Sakai H, Nakagawa Y, Mikami Y, Suzuki S, Tokioka T, Tokuhiro A, Takei H, Katoh S, Shimada Y. A nationwide survey on the incidence and characteristics of traumatic spinal cord injury in Japan in 2018. Spinal Cord. 2021 Jun;59(6):626-634. doi: 10.1038/s41393-020-00533-0. Epub 2020 Aug 11. PMID: 32782342.:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32782342/
(4)「脊髄損傷」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spinal_cord_injury.html
・交通事故の脊髄損傷と後遺障害の等級認定について:https://u-s-kotsujiko.com/kouishogaicon/spinal-cord-injury/
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交通事故や転落など不慮の事故によって脊髄を損傷し、損傷部以下の全ての神経機能が障害された状態を完全麻痺といいます。この状態では、麻痺以外にもさまざまな生理機能も障害されるため注意が必要です。この記事では、今回の記事では、 脊髄損傷による完全麻痺や、さまざまな後遺症と予後の関係について詳しく解説します。

脊髄損傷に伴う痛みの緩和と治療には総合的なアプローチが必要です。薬物療法では鎮痛薬や抗炎症薬の使用、非薬物療法では物理療法や神経ブロックが有効です。その他、認知行動療法やリハビリテーションも痛みの軽減に役立ちます。痛みの持続期間や程度に応じて、医療スタッフのもとで適切な治療計画と定期的なフォローアップが必要です。
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