<この記事を読んでわかること>
・若年性脳梗塞の頻度や30代でも発症するリスクがあることがわかる。
・脳梗塞の初期症状として、一時的な手足のしびれや麻痺、失語症、視覚障害などがあることがわかる。
・生活習慣病の予防や適切なコントロールが脳梗塞の発症リスクを下げることがわかる。
脳梗塞は高齢者だけではなく、若い世代でも発症する可能性があります。
初期症状として、一時的な手足のしびれや麻痺、言葉が出にくい軽度の失語症、視野の片側が欠ける視覚障害などが挙げられます。
これらは脳の異常を示す重要なサインであり、放置すると症状が悪化するリスクがあります。
適切な予防と早期対応が、健康を守る鍵となります。
一時的な手足のしびれや麻痺が示す危険サイン
脳梗塞は、脳の血管が詰まることで、脳の組織が壊死(死んでしまう)病気のことです。
その結果、運動麻痺や感覚障害、言語障害などの症状が現れます。
(参照サイト:脳梗塞 (のうこうそく)とは | 済生会)
脳梗塞は高齢で発症するイメージがあるかもしれないが、若い方でも起こりえます。
日本で行われた多施設研究では、50歳以上の脳卒中患者(非若年群)と50歳以下の脳卒中患者(若年群)を比較して調査しました。
非若年群は1998年から1999年の2年間に発症後7日以内に入院した症例が対象となり、若年群は1995年から1999年の5年間に発症後1カ月以内に入院した症例が対象となっています。
この研究によると、30代での脳卒中の割合は50歳未満の患者全体の 約10.35%(計算式:(4+16+11+27+36+70) ÷ 1584 × 100)でした。
また、全体の患者数は50歳未満が1,584人、51歳以上が5,661人で、50歳未満の脳卒中患者は全体の約22%を占めています。
さらに、50歳未満の若年層では「虚血性脳血管障害」が多く見られ、その中でも特に 動脈解離 が主要な原因となっていることが示されました。
(参照サイト:若年者脳卒中診療の現状に関する共同調査研究若年者脳卒中共同調査グループ(SASSY JAPAN).脳卒中.2004;26:331-339.|J STAGE)
さて、若年性脳梗塞の発生頻度について述べたところで、症状についても解説していきましょう。
脳梗塞の症状はどの年齢層でも変わりなく、一時的な手足のしびれや麻痺が危険サインを示している可能性があります。
脳梗塞の前兆のことを、一過性脳虚血症状(TIA)と言います。
これは、急に手足が動かしづらくなったり(麻痺)、しびれ(感覚障害)たりする症状や、ろれつが回らなくなり言葉がうまく話せない症状が一時的に起こるものです。
TIAが起こってから、早い方では1−2日、長い方では3ヶ月くらい経ってから脳梗塞を発症してしまうことがあります。
少しでもいつもと違う症状がみられる場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。
(参照サイト:脳梗塞 (のうこうそく)とは | 済生会)
言葉が出にくい、話が伝わらない…軽度の失語症に注意
脳梗塞の初期症状として見られる軽度の失語症は、「言いたい言葉が出てこない」「思っていることをうまく伝えられない」といった症状が特徴です。
脳の言語を司る部位(主に左脳のブローカ野やウェルニッケ野)がダメージを受けることで発生します。
一見軽い症状に見えるため、特に周囲の人が気づきにくいことがありますが、失語症は脳梗塞の重要なサインの一つです。
失語症にはいくつかのタイプがありますが、軽度の場合、本人の意識がはっきりしているため、「簡単な単語は話せるが、複雑な文が作れない」「質問に的確に答えられない」といったケースが多く見られます。
また、言葉だけでなく、読み書きが困難になる場合もあります。
軽度の失語症を放置すると、脳梗塞が進行し、症状が悪化する可能性があります。
これを防ぐためには、症状が現れた時点で速やかに医療機関を受診し、MRIやCTスキャンなどで脳の異常を確認することが重要です。
「うまく話せない」「相手の言葉が理解できない」といった異変を感じたら、ただの疲労だと軽視せず、すぐに対応しましょう。
(参照サイト:脳血管障害と失語症.神経心理学.2021;37:10-20.|J STAGE)
片側の視野が欠ける視覚障害が教える脳の異常
脳梗塞の症状の一つとして挙げられるのが、「片側の視野が欠ける」という視覚障害です。
これは「同名半盲(どうめいはんもう)」と呼ばれ、視野の左右どちらか片側が見えなくなる状態を指します。
この障害は、脳の視覚を司る後頭葉や視神経の通り道がダメージを受けることで引き起こされます。
(参照サイト:見えないのにわかる−「盲視」の脳内メカニズム.Jpn J Vis Sci.2009;30:109-114.)
同名半盲では、自分では気づきにくい場合が多いことが特徴です。
例えば、食事中に片側の料理に気づかなかったり、人混みで片側から来る人や車を見落としてしまうといったケースが見られます。
このような視覚障害は、交通事故や転倒の原因にもなり得るため、日常生活に大きな影響を及ぼします。
この症状が現れた場合、脳梗塞による血流障害が疑われます。
視覚障害は他の症状(手足の麻痺や言語障害など)と併発することが多いため、脳の異常を早期に特定する重要な手がかりとなります。
特に突然症状が現れた場合は、迷わず救急車を呼びましょう。
視覚の異常を軽視せず、早急な診断と治療が必要です。
まとめ
今回の記事では、若年性脳卒中の頻度や、脳梗塞における見逃してはならない初期症状について解説しました。
脳梗塞の予防のためには、高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病にならないようにすることや、あるいは適切にコントロールしていくことが大切です。
塩分や脂質、糖質を摂りすぎないようにし、適切な運動をするようにしましょう。
また、禁煙や節酒も重要なポイントとなります。
一度脳梗塞を発症してしまうと、麻痺や言語障害などの後遺症が残ってしまうこともあります。
そのような場合には、リハビリテーションが症状改善の鍵となります。
そこで、ニューロテックや脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、脳卒中や脊髄損傷に特化した治療として、『リニューロ®』を提供しています。
この治療法は、脳や脊髄の損傷部位に焦点を当て、その治癒力を高めることを目指したものです。
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そして、その基盤をもとに「神経再生リハビリ®」を実施することで、神経障害の軽減を目指します。
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参照サイト:ニューロテックメディカル
よくあるご質問
- 若年性脳梗塞の初期症状は?
- 若年性脳梗塞の初期症状には、片側の手足が動かしにくくなる、顔の片側が垂れる、言葉が出にくい、急激な視野障害や激しい頭痛などが挙げられます。
これらの症状が現れた場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。 - 脳卒中になる確率は30代でどのくらいですか?
- 30代の方が脳卒中になる割合を調べた報告はいくつかありますが、人口10万人対脳卒中発症者数として、30代男性は16.4、女性は7.9であるという報告があります。
若年層でもリスクは存在するため、生活習慣の見直しや健康診断が重要です。
<参照元>
(1)脳梗塞 (のうこうそく)とは | 済生会:https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/cerebral_infarction/
(2)若年者脳卒中診療の現状に関する共同調査研究若年者脳卒中共同調査グループ(SASSY JAPAN).脳卒中.2004;26:331-339.|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/
(3)脳血管障害と失語症.神経心理学.2021;37:10-20.|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/
(4)見えないのにわかる−「盲視」の脳内メカニズム.Jpn J Vis Sci.2009;30:109-114.:https://www.jstage.jst.go.jp/
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脳卒中のなかには、早期に診断して治療を開始することで予後が改善できるものがありますので、顔や手の麻痺が生じたり、言葉が不明瞭になったりする初期症状には注目しましょう。応急処置は、呼吸や意識の評価と評価に基づく対応、迅速な救急要請、救急隊が到着するまでの安全な体位の確保、また症状や時間経過の記録などしておくことが理想的です。
脳梗塞の前兆や初期症状を詳しく解説します。例えば、片側の手足のしびれ、ろれつが回らない、突然のめまいやバランス障害は要注意です。一過性脳虚血発作(TIA)は脳梗塞の警告サインであり、早期に発見し治療することが重要です。脳卒中を防ぐための具体的な行動や受診のポイントについても紹介します。
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