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脳卒中

 くも膜下出血の原因と治療について

<この記事を読んでわかること>
くも膜下出血は、動脈瘤の破裂によって脳が圧迫される重篤な脳卒中だと分かる
突然の激しい頭痛が特徴的な症状で、CTスキャンを用いた迅速な診断と治療が重要
高血圧の管理と喫煙、過剰な飲酒の回避が、くも膜下出血の予防には重要

くも膜下出血について、原因から治療まで
脳卒中のひとつであるくも膜下出血は、動脈瘤が破裂して出血した血液が、脳を圧迫することで重篤な状態を起こすものです。
突然発症する激しい頭痛という特徴的な症状があり、早急にCTスキャンによる診断、全身状態の安定化、出血のコントロール、そして合併症対策が必要です。
高血圧をコントロールし、喫煙や過剰な飲酒を避けることは、重要な予防策です。

くも膜下出血とは?

くも膜下出血とは?
まずくも膜下出血について、簡単にご説明します。

くも膜とは?くも膜下腔とは?

くも膜下出血が起こる場所である、くも膜下はどこに存在するのか、ご説明します。
脳は3つの膜に囲まれています。一番内側にあるのが軟膜で、一番外側にあるのが硬膜です。
この2つの膜の間にあるのが、くも膜です。
そして脳脊髄液が、くも膜下腔と呼ばれるエリアを満たしています。

くも膜下出血とは?

くも膜下出血は、脳出血や脳梗塞と合わせて、脳卒中と呼ばれる脳血管障害の一種です。
くも膜下出血は、くも膜のすぐ内側、軟膜の外側に走行する動脈が破裂することで起こります
動脈から出血すると、突然勢いよく血液が出ますので、突然激しい症状を起こす特徴があります。
そしてくも膜下腔に出血した血液は、くも膜下腔を血液で満たしていき、脳を圧迫していきます。
そのため、頭痛を起こすことが一般的で、かつ出血の程度次第では脳が圧迫されてしまい、意識がなくなったり、呼吸が止まったりします。
くも膜下出血を起こすと、3分の1程度が亡くなってしまいます。

くも膜下出血の症状

くも膜下出血の最初の症状は、多くの場合突然の激しい頭痛です。
多くの方が、頭をバッドで殴られたような激しい痛み、人生で最悪の頭痛と表現されます。
後頭部付近で感じることが多いようですが、必ずしも後頭部の頭痛がくも膜下出血と関係があるわけではありません。
くも膜下出血は、多くの場合このような激しい症状で発症しますが、ときに少しだけ出血してすぐに治ることがあります。
ただくも膜下出血の予兆としてみられる症状も、通常は「突然」発症します。
秒単位まで時間を特定できるほど、突然発症することが特徴です。
なお頭痛以外の症状には、首のこり、嘔吐、意識障害、失神、けいれんなどがあります。

くも膜下出血の原因

くも膜下出血は、いくつかの要因で発症します。
その代表的なものをご紹介します。

動脈瘤

くも膜下出血の原因として、脳動脈瘤の破裂が最も多くなっています
動脈瘤は、文字通り血管の一部がこぶのように膨らむことで発生します。
これは動脈の血管壁の一部が弱くなっていることが原因です。
血圧が高い状態が続くと、血管は弱くなっているところで膨らみます。
膨らみが大きければ大きいほど、破裂の危険性が高くなります。
くも膜下出血の原因となる動脈瘤は、Willis動脈輪と呼ばれる、脳に血液を供給している複数の動脈で構成された輪のなかで発生しやすい傾向があります。
なかには先天的に血管壁が弱く、動脈瘤のリスクが高い方がおられます。
ただ一般的には、喫煙、大量の飲酒、管理不十分な高血圧が、動脈瘤の主たる危険因子となっています。

脳動静脈奇形

脳動静脈奇形は、先天的な血管の異常です。
動静脈奇形は脊髄や脳の血管に発生するもので、通常毛細血管を介してつながっている動脈と静脈が、複雑で絡み合った網の目のような血管の塊になって直接つながっています。
ナイダスと呼ばれるこの血管の塊に、動脈瘤ができることがあります。
脳動静脈奇形は、実際に出血が起こるまで症状が現れないことが多くなっています。
その他のくも膜下出血原因に、頭部外傷があります。

くも膜下出血の診断方法

突然発症する首のこりや激しい頭痛があり、他に原因がない場合、くも膜下出血の可能性があります。
くも膜下出血は、生死に関わる緊急事態ですので、疑いのある場合は大至急救急車を呼びましょう
病院では、通常全身状態の評価を行ない、呼吸や循環を安定化させた上で、画像検査を行います。
くも膜下出血の診断には、CTスキャンが有用です。CTスキャンにより、くも膜下腔への出血の程度やその影響が及ぶ範囲を特定できます。
出血の原因を明らかにするために、造影剤を使用することもあります。
ただ出血量が少ないと、CTスキャンでは診断ができないこともあります。
頭痛の発症の仕方からどうしてもくも膜下出血を除外したいとき、腰椎穿刺を行います。
腰椎穿刺は、細い針を使って脊椎の間からくも膜下腔まで刺し入れ、脳脊髄液のサンプルを採取します。
採取した脳脊髄液を検査することで、通常は存在しないはずの血液があるかどうかがわかります。
動脈瘤や脳動静脈奇形の診断には、MRIや血管造影を行うことがあります。
これらの検査は、出血やその他の血管の問題を特定するのに役立つ場合があります。

くも膜下出血の治療

くも膜下出血を起こした方への急性期の治療は、全身状態の安定化、出血のコントロール、そして合併症の予防が、治療の目的になります。
全身状態を安定化させるため、呼吸と循環の状態を評価し、場合によっては気管にチューブを挿入し、人工呼吸器を使って呼吸を介助することがあります。
この場合、集中治療室で治療が行われます。
出血をコントロールするために、脳外科医が動脈瘤のすぐ近くの血管にクリップをかけることもあります。
これは、金属製の小さなクリップで血管を挟むことで、動脈瘤への血液の流入を止めます。
血管内コイルも出血をコントロールする治療法の選択肢のひとつです。
この治療法は、カテーテルを脚の動脈から挿入し、動脈瘤のある脳の動脈まで到達させます。
この後プラチナ製のコイルを、カテーテルを通して動脈瘤の中に挿入します。
このコイルが動脈瘤への血流を止め、出血を効果的に食い止めます。
出血の悪化を防ぐため、カルシウム拮抗薬と呼ばれる薬剤を投与することがあります。
カルシウム拮抗薬は、破裂した動脈瘤の近くの血管が痙攣するのを防ぐことが使用の目的ですが、高血圧の治療としても用いられます。
くも膜下出血の合併症として発症する水頭症を治療するために、脳室と腹部等をチューブでつなぐシャントを挿入します。
シャントによって、脳室内に蓄積して問題を起こしている髄液を、安全に脳室外に排出することが必要になります。

くも膜下出血の合併症

くも膜下出血の最も危険な合併症は、脳血管攣縮です。
これは動脈瘤の近くの血管がけいれんを起こし、出血を悪化させる状態です。
適切な処置をしないと意識障害が進行し、死に至ることもあります。
また出血による脳障害により、麻痺や感覚障害のような、脳梗塞等でみられる合併症が残存することもあります。
そのほかくも膜下出血の合併症として、水頭症があります。
水頭症は、くも膜下腔に出血した血液が、脳脊髄液の流れをブロックしてしまい、その結果脳室内に過剰に脳脊髄液が蓄積した場合に発生します。
この圧力が、脳に損傷を与える可能性があります。
なおくも膜下出血は、約3分の1の方が命を落としてしまうほど重篤な病気です。
また一命を取り留めても、麻痺やてんかんなどの合併症に苦しむ方々がおられます。
動脈瘤が適切に治療されていなければ、再出血することもあります。

くも膜下出血と再生医療

脳卒中の治療手段として注目を集めている再生医療。
もちろんくも膜下出血においても、重い障害を残している方々に対し、主に自己由来の間葉系幹細胞を利用した再生医療が行われています
多くの方が標準的な医療として再生医療を受けるまでの道のりは遠くありますが、着実に実用化に向けて進歩しています。

まとめ

くも膜下出血の概要を説明しました。
くも膜下出血は突然発症し、生命の危機に瀕してしまう病気です。
ただ医療の進歩は日進月歩。
くも膜下出血を起こさないように、リスクを低減に努めることはなにより重要ですが、合わせて再生医療を含め、さらなる医療の進歩に期待したいところです。

<Q&A>くも膜下出血の一番の原因は何ですか?
くも膜下出血の一番の原因は、脳動脈瘤の破裂です。
脳動脈瘤は、脳の血管壁が弱まり、拡張して袋状に膨らんだ状態を指し、これが破裂すると出血が起こります。
くも膜下出血の生存率は?
くも膜下出血の生存率は研究や地域によって異なりますが、一般的には高い死亡率を持つとされています。
早期発見と適切な治療が行われることで生存率は向上しますが、状態の重さや合併症の有無によって大きく変わります。
全体の生存率に関する正確な数字を提供することは難しいですが、症状の重篤度や治療のタイミングにより生存率は変動します。
<参照元>くも膜下出血(SAH) – 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/
くも膜下出血 (SAH) – 07. 神経疾患:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/
あわせて読みたい記事:脳梗塞の後遺症治療

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