・心原性脳塞栓症が起こる原因と機序
・心原性脳塞栓症による主な症状と診断方法
・心原性脳塞栓症の即時対応が必要な理由
心原性脳塞栓症は、心臓からの塞栓物が脳血管に流れ込み血管を詰まらせてしまう疾患です。脳卒中全体の約2割を占めます。主な原因は心房細動などの心臓疾患です。突然に発症することが多く、片麻痺、言語障害、視野障害、失語症、意識障害などがみられます。脳卒中の中でも重症化しやすく後遺症のリスクが高いことが特徴です。
心原性脳塞栓症が起こる原因と機序
この記事では心原性脳塞栓症が起こる原因と機序について解説します。
心原性脳塞栓症は、血管を詰まらせる脳梗塞の原因の1つです。
心臓の異常が原因で起こります。
最も頻度が高いのは心房細動と呼ばれる不整脈で、原因の約9割を占めます。
心房細動は、心臓の心房が不規則に動くため心臓内の血液の流れが淀み、左心房内に血栓ができやすくなります。
次に心臓の収縮機能が低下した場合です。
特に、左心室のポンプ機能が低下すると、心臓から血液を十分に送り出すことができないため、血液が淀むため心臓内に血栓ができやすくなります。
その他の注意する疾患として、心筋梗塞、弁膜症、心内腫瘍などがあります。
いずれの病態においても、形成された血栓は血流に乗って脳へ運ばれます。
特に太い大動脈を通って脳底部にある脳血管へ運ばれやすい傾向があります。
血管は末梢に行くと細くなるので血栓はいずれかの血管で詰まります。
そうすると、その先の脳組織への血流が途絶え虚血と言う状態に陥ります。
最終的に、脳組織は酸素や栄養素の供給が途絶え脳機能が失われ、様々な症状が起きます。
これら一連の病態が疾患発生の機序です。心臓と塞栓症は密接な関係にあります。
心原性脳塞栓症による主な症状と診断方法
この記事では心原性脳塞栓症による主な症状と診断方法について解説します。
主な症状は、片麻痺、感覚障害、言語障害、視野障害、失語症、めまい、意識障害などです。
症状の種類や程度は、血栓の大きさや脳への損傷程度によって異なりますが、突然発症することが特徴です。
更に、重症化、後遺症リスクが高いので緊急介入を要することが多いのが特徴です。
診断には以下の検査が使われます。
最初に、診察にて片麻痺、言語障害、視覚障害などの脳塞栓に伴う神経学的症状が無いかを診察します。
既往歴、家族歴などの病歴も詳しく聞きます。
特に生活習慣病の有無は重要です。
病院搬送後は、血液検査、心電図検査、画像検査、心臓超音波検査、血管造影検査などの検査が行われます。
心電図検査は心房細動などの不整脈が無いかを診断します。
画像検査としてCT検査やMRI検査を行い、血栓による塞栓部位、脳梗塞の範囲、脳血管の状態などを評価します。
心臓超音波検査では心臓内の血栓の有無、左心室機能や弁膜症の有無などを評価します。
特に、心房細動と弁膜症の併発は多いので心臓超音波検査は重要です。
必要に応じて脳血管の状態を更に知るために血管造影検査が追加されることもしばしばです。
心原性脳塞栓症の即時対応が必要な理由
この記事では心原性脳塞栓症の即時対応が必要な理由について解説します。
心原性脳塞栓症は脳卒中の約20%を占めますが、突然の発症とともに急激な症状の進行を来すのが特徴です。
更に、重症化と後遺症のリスクが高いことが特徴です。
そのため、脳卒中の初期治療としてストロークユニットなど救急治療が完備された施設への搬送が重要です。
脳塞栓症は、発症からの時間経過とともに脳細胞が死ぬことで脳損傷が進行する疾患のため、可能な限り迅速な対応が必要です。
発症から4.5時間以内であれば、tPAを用いた血栓溶解治療が可能です。
この治療は、早期の症状の改善とともに後遺症のリスクを減らす効果があります。
寛解しても、心原性脳塞栓症は再発リスクが高い疾患であることを念頭におく必要があります。
再発率は約20%と報告されています。
再発を防止するためには不整脈を含む心臓疾患の安定化とともに、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病をコントロールすることが極めて重要です。
タバコも再発リスクとしては大きい要因となるので禁煙に心がけましょう。
再発予防の治療として、血栓の形成を防ぎ、再発リスクを低減する効果がある抗凝固療法が行われます。
まとめ
今回の記事では、心原性脳塞栓症の基本と身体への影響について解説しました。
脳塞栓症は脳の血管が詰まることにより脳細胞が壊死する疾患です。
壊死した細胞の再生は難しく、広範囲に及ぶと後遺症が出現し日常生活に支障を来たします。
そのため、神経の再生医療は期待のもてる治療法です。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、脳脊髄損傷部位の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「再生医療×同時リハビリ™」があります。
脳塞栓症の後遺症に苦しむ患者に対して、神経を再生する医療は新たな治療の選択肢として期待がもてます。
よくあるご質問
- 心原性脳塞栓症の症状は?
- 片麻痺、言語障害、感覚障害、視野障害、失語症、構音障害、意識障害などがありますが、突然発症することが特徴です。これらの症状は、脳の損傷部位や塞栓物の大きさによって異なります。他のタイプの塞栓症と比較して重症化しやすい傾向があります。
- 心原性塞栓症の危険因子は何ですか?
- 血栓ができる原因として、心臓の心房が不規則に動く心房細動と呼ばれる不整脈が最も重要で、原因の約9割を締めます。その他、心臓の機能が低下することにより血液を十分に送り出せなくなった状態も危険因子となります。心室内に血液が溜まりやすくなり血の塊である血栓ができやすくなるからです。
<参照元>脳卒中治療ガイドライン2021:https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf
日本脳卒中協会:https://www.jsa-web.org/
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今回は心原性脳塞栓症のリスク要因について解説します。最も重要な要因は心房細動という不整脈です。心不全や心臓弁膜症も見逃せません。いずれの疾患も心臓内に血の固まりである血栓が出来て脳の血管を詰まらせ発症します。これら以外にも、加齢、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、睡眠時無呼吸症候群などがリスク要因として知られています。
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