点滴×同時刺激リハビリで神経障害の後遺症を改善へ

脳卒中

 小脳性運動失調の特徴とリハビリ

<この記事を読んでわかること>
小脳性運動失調の原因について
小脳性運動失調の特徴について
評価方法とリハビリテーションについて

小脳が何らかの原因でダメージを負ったとき、運動失調が起きることが知られています。この記事では、小脳性運動失調の原因や特徴、その評価方法とリハビリテーションについて説明しています。

小脳性運動失調とは

小脳性運動失調とは
小脳が何らかの原因で障害を受けることにより運動失調が出現する疾病を小脳性運動失調といいます。

小脳性運動失調の原因

小脳がダメージを受ける原因は様々ありますが、脊髄小脳変性症などの神経疾患や脳卒中・小脳梗塞・出血・脳腫瘍・頭部外傷などなどが代表的です。
その他にも、アルコールや薬物による中毒、感染による脳炎でも小脳にダメージをきたすことがあります。
小脳へのダメージが原因による運動失調が、最も頻度が高いと言われています。

運動失調とは

普段、何かの運動や動作を行う場合、その動きに必要な筋肉が協調して収縮します。
この筋収縮の協調が失われ正しい動きができなくなることを運動失調といい、口唇・舌が上手く動かせず話しづらくなったり、体のバランスが上手くとれなくなってしまいふらついてしまったりします。

小脳性運動失調の特徴

小脳性運動失調には、以下の様な特徴があります。

  1. 四肢の測定異常と動揺
  2. 関節運動時の動作の分解
  3. 運動パターンの切り替えの遅延
  4. 姿勢保持困難

小脳性運動失調における歩行の特徴

小脳に障害がある運動失調の場合、脳梗塞などの麻痺とは異なり、自分で動かすことは出来るのに運動の調節が効かなくなります。
発症初期から歩行障害(失調性歩行)がみられ、立ち上がり・歩行中の方向転換・階段の昇降などが不安定になり、病気の進行に伴い、壁や手すり・杖・歩行器などの支持補助具や人による介助が必要となります。
歩行時に足を小股で一歩踏み出そうとしても大股となってしまうなど、自分の意思通りに身体が動かないため、以下の様な特徴があります。

  1. 歩行中の体幹の前後左右への動揺
  2. 歩隔の拡大もしくは歩幅の短縮
  3. 遊脚期(歩行において脚を振り出すタイミング)の顕著な短縮
  4. 足底接地期の延長
  5. 歩行に合わせた上肢の振りの減少

過去にドラマでも話題になった脊髄小脳変性症(spinocerebellardegeneration:SCD)も、共通する徴候は小脳性運動失調で、緩徐に発症し運動失調が進行する原因不明の神経変性疾患です。

小脳性運動失調の評価

小脳性運動失調の評価方法として、Schmitz-Hubschらが提唱したScale for the Assessment and Rating of Ataxia(以下、SARA)に基づいて厚生労働省難治性疾患克服研究事業「運動失調に関する調査研究班」が作成した日本語版SARAが利用されています。
SARAは全8項目「歩行、立位、坐位、言語障害、指追い試験、鼻指試験、手の回内回外運動、踵すね試験」から構成された簡便な評価スケールで、合計点数 0点(小脳性運動失調なし)~ 40点(最重度の小脳性運動失調)まで、5分弱の実施時間で簡便に採点できます。

小脳性運動失調は治るのか?

小脳の疾患に対する代表的な治療は以下の3つが挙げられます。

  1. 薬の服用などの内科的治療
  2. 外科手術
  3. リハビリによる機能改善、悪化予防、運動方法の再獲得

運動失調の様な小脳疾患の後遺症に対しては、リハビリテーションにより筋力をつけることで症状を軽減させることが可能です。

小脳性運動失調に対するリハビリ

小脳性運動失調に対するリハビリは、専門家による適切な筋力コントロールのもとでの歩行訓練・バランス訓練、小脳への固有感覚や視覚などの感覚入力を強化する訓練が行われます。
具体的なリハビリ内容は以下の通りです。

  • 重錘(じゅうすい)による負荷を利用した運動
  • 弾力帯を装着して行う運動
  • フレンケル体操
  • 固有受容性神経促通法(PNF)
  • リラクセーション
  • 動作の反復練習
  • 中間姿勢の練習

フレンケル体操とは

フランケル体操は、運動失調の運動療法として昔から行われています。
身体の動きを目で見ながら(視覚で確認しながら)、運動のコントロールを反復して行うことにより、脳内の神経回路を活性化し運動失調の症状の改善を期待する運動です。

ピラティスは有効?

小脳のダメージにより症状が出ている場合、退院後に以下の懸念があります。

  1. 歩行時などに太腿などの大きな筋肉が必要以上に強く活動し、本来は起こらない痛みが生じてしまう
  2. 身体を動かすことが面倒になり、身体活動量が低下する
  3. 日常生活でも疲れやすくなり、座位や臥位の時間が長くなることで廃用症候群になりやすい
  4. 他者とのコミュニケーションも減り認知力が低下する

それらへの対策として、ピラティスマシンを用いたリハビリにより次の様な効果があると言われています。

  1. 呼吸を意識することによりインナーマッスルの活動が高められ、姿勢が安定する
  2. 胸郭の可動域が拡大し、呼吸が楽になる
  3. ピラティスマシンにより体幹背面が安定な状態で運動することにより姿勢が矯正でき、さらに安心感により過度な筋肉の緊張が抑えられる
  4. 体幹を活動させながら運動ができるようになると、運動失調、体幹失調が軽減する可能性がある
  5. 足裏を接することにより全身をコントロールしやすく、感覚系のトレーニングになる

ピラティスに加えて、小脳疾患による廃用症候群を予防するために、自転車エルゴメーターなどの有酸素運動や低負荷高頻度の運動による持久力と最大筋力の改善なども効果的です。
小脳性運動失調の後遺症が残ってしまった場合でも、諦めずリハビリを継続し、筋力を落とさないことが症状の改善に大切です。

当院で行っている再生医療リハビリについて

当院では、脳の治る力を高める『同時刺激する神経再生医療』という、リハビリテーションのための下地作りをおこなっています。
骨髄由来の間葉系幹細胞を培養し点滴することで、損傷部位にとどまり、骨髄由来幹細胞が分裂増殖したり神経細胞に分化し、さらにサイトカインを産生することにより、神経損傷に対する治療効果が認められています。
損傷を受けた小脳の神経細胞を再生医療により回復させながらリハビリを行うことで相乗効果が期待できます。

まとめ

この記事では、小脳性運動失調の原因や特徴、リハビリテーション治療の内容と可能性についてご説明しました。
リハビリテーションのみでは小脳性運動失調の後遺症を完全に回復することは困難ですが、将来的に再生医療を組み合わせることにより後遺症のさらなる改善に繋がり、患者さんの希望となれることを切に願っています。

<参照元>
小脳性運動失調の重症度とバランス機能との関連性|J STAGE:https://doi.org/10.14900/cjpt.2009.0.B4P3087.0
小脳性運動失調のリハビリテーション医療―体幹・下肢について|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/2/56_56.101/_pdf

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