<この記事を読んでわかること>
脳出血が寿命に与える影響がわかる
脳梗塞が寿命に与える影響がわかる
脳卒中の予後に与える因子がわかる
脳出血や脳梗塞は発症後、さまざまな合併症を発症し、その結果、誤嚥性肺炎や尿路感染によって寿命が短縮されることが知られています。
また、発症した年齢や後遺症の程度も寿命に大きく関わる因子として知られています。
そこでこの記事では、脳出血や脳梗塞後の余命と生存率を最新データも踏まえて詳しく紹介します。
脳出血後の平均余命と生存率の統計と詳細
脳出血や脳梗塞など、脳卒中を発症した場合、仮に急性期を脱したとしても、その後の後遺症によって嚥下障害や排尿障害を引き起こせば、長期的に誤嚥性肺炎や尿路感染によって死に至る可能性が高まります。
では実際に、脳出血は平均余命や生存率にどのような影響を与えるのでしょうか。
これについては、フィンランドで実施された研究がとても参考になります。
フィンランドの医療機関で認めた頭蓋内出血患者411名(男性199人、女性212人)を対象に、早期死亡(28日以内)および晩期死亡に関連する因子を特定している研究です。
Fogelholmらによって行われたこの研究では、入院前に死亡した患者は30人、発症後28日以内に死亡した患者は208人(全体の50.6%)、発症後16年時点での累積生存率は男性で3.2%、女性で9.8%でした。
これを見ると長期的に見て非常に生存率の低い疾患のように思えますが、65歳以下の患者における発症後16年時点での累積生存率は19.3%であり、65〜73歳の患者では2.7%、73歳以上の患者では1.8%であったため、高齢発症によって生存率が低下していることがわかります。
また、鈴木らの研究によれば、50歳の日本人男性の平均余命が28. 9年であるのに対し、同年代の脳出血発症者の平均余命は23. 5年でした。
以上のことからも、全年代、特に高齢者の場合は脳出血による平均余命への影響が大きく注意が必要です。
脳梗塞後の平均余命と生存率の統計と詳細
ついで、脳梗塞が平均余命と生存率に与える影響についても数々の報告があります。
まず、先述した鈴木らの報告によれば、50歳日本人男性の平均余命が28.9年であるのに対し、同年代の脳梗塞発症者の平均余命は20.9年と、60歳日本人男性の平均余命20.6年に近い結果でした。
さらに、50歳の日本人女性でも平均余命が35. 0年であるのに対し、同年代の脳梗塞発症者の平均余命は30. 8年と、性別を問わず短縮した結果でした。
他にも、Shavelleらの研究では脳卒中患者の長期追跡研究11個をまとめて、年齢・性別・mRS(神経学的後遺症の程度を表すスケール)別の死亡率を算出し、寿命に与える影響を評価しています。
その結果、性別に関わらず全年代で、mRSが高ければ高いほど、寿命が短縮してしまうことがわかりました。
以上のことからも、脳梗塞は神経学的後遺症の程度に比例して平均余命が短縮することがわかるため、早期発見・早期治療が予後にとっても重要です。
年齢や重症度が余命に与える影響
まず結論から言えば、脳梗塞や脳出血においては発症年齢や重症度(後遺症の程度など)に比例して、余命が短縮する傾向にあります。
先述したShavelleらの研究における各年代の重症度別の平均余命は下表の通りです。
平均余命 | mRS0 | mRS1 | mRS2 | mRS3 | mRS4 | mRS5 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
50代男性 | 30年 | 28年 | 27年 | 22年 | 17年 | 13年 | 9年 |
60代男性 | 22年 | 20年 | 19年 | 16年 | 13年 | 9年 | 7年 |
70代男性 | 14年 | 13年 | 13年 | 11年 | 8年 | 6年 | 5年 |
80代男性 | 8年 | 7年 | 7年 | 6年 | 5年 | 4年 | 3年 |
女性においてもほとんど同様の結果を得られており、よりmRSが重症であるほど平均余命に対して寿命が短縮していることがわかります。
また、脳卒中患者の生命予後因子を調査した小野らの報告によれば、男女ともに65歳以上と65歳未満で生存率に大きな有意差を認めており、年齢が高齢であるほど命の危険性も高いことが示されています。
まとめ
今回の記事では、脳出血・脳梗塞後の余命と生存率について詳しく解説しました。
脳出血・脳梗塞はともに発症によって平均余命を短縮することが知られており、発症年齢が高齢になればなるほどその影響も大きいです。
また、いかに後遺症の程度が重いかで予後も変わってくることがわかっているため、後遺症の軽減が寿命にも関わります。
しかし、後遺症を軽減するためにはリハビリを積極的に実施する以外に選択肢がなく、現状では後遺症を完全に根治するのは困難です。
そこで、近年では脳卒中の後遺症に対する新たな治療法として、再生医療が非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善困難であった脳卒中に伴う神経学的後遺症の改善が期待でき、寿命の改善が期待できます。
よくあるご質問
- :脳梗塞を発症した人の寿命はどれくらいですか?
- 脳梗塞を発症した人の寿命は、発症した年齢によっても異なりますが、同年代の健常者の平均寿命と比較して短縮されることが知られています。
特に、脳梗塞による神経学的後遺症の程度が重ければ思いほど、残りの寿命も短縮します。 - 脳出血で長生きはできますか?
- 脳出血は発症年齢や後遺症の程度によっても、その後の寿命も変わってきます。
若年発症や後遺症の軽度の方の場合、平均寿命とそこまで違いなく、ある程度長生きできる可能性が高いです。
(1)Long term survival after primary intracerebral haemorrhage: a retrospective population based study|Pub Med:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16227546/
(2)秋田研究 脳卒中の予後|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/45/2/45_2_169/_pdf
(3)Life Expectancy after Stroke Based On Age, Sex, and Rankin Grade of Disability: A Synthesis|Pub Med:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31676160/
(4)脳卒中発症者の予後に影響を与える因子|J STAGE:https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000088257_00/ek1989_34_6_02.pdf
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