<この記事を読んでわかること>
・半側空間無視とは、脳の損傷(右脳が多い)によって視界の片側が認識できなくなる視覚認知障害であることがわかる。
・視力には問題がないものの、脳の認知機能の異常により空間の片側が「見えていない」と認識されることがわかる。
・空間認識や注意機能に関わる脳の部位が損傷されると、日常生活においても片側の情報に気づきにくくなる影響が出ることがわかる。
半側空間無視は、脳梗塞による脳損傷で視界の片側が無意識に見えなくなる認知障害です。
特に右脳の損傷で左側を認識できなくなるケースが多く、日常生活に支障が生じます。
リハビリや再生医療による改善も期待されます。
この記事では、半側空間無視のメカニズムや原因、そしてそれが生活にどのように影響を与えるかについて詳しく解説します。
半側空間無視のメカニズム:脳梗塞が視覚認知に与える影響
半側空間無視は、視覚認知に関わる脳の特定部位が損傷を受けた際に発生する視覚障害です。
この障害は「視野欠損」とは異なり、目の機能には問題がなく、視界には全体が映っているものの、脳が特定の側の空間を認識できないという特徴を持ちます。
半側空間無視は脳梗塞に伴う視覚認知障害の一つで、特に右脳の後頭葉、頭頂葉、側頭葉などの損傷により、左側の空間が認識されにくくなります。
視覚認知と空間認識の関連
脳は視覚情報を「見る」だけでなく、空間全体を認識する役割も担っています。
視覚情報が目から視神経を通じて後頭葉の視覚野に到達すると、そこから視覚的な空間情報は頭頂葉や側頭葉へと伝達されます。
頭頂葉は「空間認知」に関与し、私たちが周囲の物の配置や距離を把握するための重要な領域です。
特に右頭頂葉が空間認知に大きな役割を果たしており、ここが損傷を受けると左側の空間の処理が難しくなります。
注意機能と半側空間無視
脳は視覚情報を処理する際、意識的に注意を向ける方向を調整します。
右脳の頭頂葉や側頭葉は、空間的な注意を全体的に司っており、左側に注意を向ける役割も果たしています。
右脳が損傷すると、左側の空間への注意を向けることが困難になり、結果として左側に存在する物や人に気づきにくくなるのです。
この注意機能が低下することで、半側空間無視の症状が顕著になります。
視覚と体性感覚の連携
半側空間無視には視覚認知だけでなく、体性感覚や自己認識に関わる要素も影響を与えています。
視覚情報は体性感覚や触覚、自己の位置感覚などとも相互に連携して処理されるため、脳の損傷によってこれらの連携が崩れると、見えていても「そこにある」と認識できない現象が発生します。
これにより、例えば自分の左手が「見えているはずなのに感じられない」という症状も起こることがあり、このような自己認識の障害も半側空間無視に含まれる場合があります。
右脳の損傷が招く?半側空間無視の原因となる脳の部位
半側空間無視は、主に右脳の損傷が原因で引き起こされることが多く、左側の空間が無視されやすいとされています。
これは、右脳が空間認識や注意機能に大きく関与しているためです。
具体的には、右側頭葉や頭頂葉が損傷を受けると、左側の視覚情報や空間情報の処理が正常に行われなくなります。
この領域は、私たちが周囲の環境を認識し、左右の情報を均等に処理する役割を担っています。
例えば、右側の頭頂葉が損傷を受けた場合、左側の空間認識に影響が出てしまい、片側の物体や人に気づかなくなる「無視」が起こります。
脳が一方の情報を優先的に処理するため、損傷を受けた側の反対側の情報が処理されにくくなるのです。
このような脳の構造と機能の相互作用により、半側空間無視の症状が引き起こされると考えられています。
半側空間無視が日常生活に与える影響
半側空間無視は、日常生活に大きな影響を及ぼす障害です。
患者は、片側に存在する物や人に気づきにくくなるため、日常生活での行動や動作が制限されることがあります。
例えば、食事中に片側の食べ物に気づかずに残してしまったり、片側に物が置かれているのに気づかず、転倒や物を壊す原因にもなり得ます。
また、外出時には片側の障害物や車両を見落とす危険性が高くなり、安全面でもリスクが伴います。
さらに、半側空間無視は、他者とのコミュニケーションにも影響を及ぼします。
片側にいる人に気づかないために会話ができなかったり、相手を無視しているように見られることもあります。
これにより、周囲の人との交流が制限され、孤立感を感じることも少なくありません。
このように、半側空間無視は視覚認知だけでなく、心理的な影響も伴うため、患者や家族にとって大きな課題となります。
まとめ
半側空間無視は、脳梗塞による脳の損傷が原因で引き起こされる視覚認知障害の一種です。
視力には問題がないにもかかわらず、片側の空間が見えないと感じるのは、視覚情報を処理する脳のメカニズムに異常が生じているためです。
特に右脳の損傷が原因となり、左側の空間を無視するケースが多く、日常生活や安全面に様々な支障をきたします。
適切なリハビリテーションや支援が求められ、家族や周囲の理解も重要です。
脳梗塞後の半側空間無視に対するリハビリテーションの効果を高める方法の一つとして、再生医療による取り組みがあります。
私たちニューロテックメディカルでは、『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』を、ニューロテック®と定義しました。
そして、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力』を高める治療を、リニューロ®と定義しました。
リニューロ®は、同時刺激×神経再生医療®にて『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』です。
また、その治療効果を高めるために骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリ®の併用をお勧めしています。
ご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談くださいね。
よくあるご質問
- 半側空間無視の影響は?
- 半側空間無視は片側の空間を認識しづらくなるため、食事中に片側の食べ物に気づかない、片側に置かれた物に気づかず転倒するなど、日常生活に様々な支障が出ます。
また、片側にいる人に気づかず会話できないなど、周囲とのコミュニケーションにも影響を与え、安全面や心理的な不安も伴います。 - 脳梗塞で左半側無視になるとはどういうことですか?
- 主に右脳が脳梗塞で損傷を受けた場合、左側の空間認識が困難になります。
これは右脳が空間認識や注意を向ける役割を担っているためです。
右脳が損傷を受けると左側の情報を処理できず、無意識に「見えない」と認識するようになります。
これにより、左側の物や人に気づかない半側空間無視の症状が現れます。
<参照元>
半側空間無視 – 難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/
ヒトの注意における『右脳の優位性』を解明 | 東工大ニュース:https://www.titech.ac.jp/news/2022/065077
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