この記事を読んでわかること
・くも膜嚢腫の主な原因とは?
・くも膜嚢腫による症状とその見分け方
・幹細胞治療で新たな治療法への期待
今回は、くも膜嚢腫の原因と症状をわかりやすく解説について解説します。
くも膜嚢腫は、脳の中に液体が貯留した袋ができ、その周囲の膜が髄膜の1つであるくも膜からなるものです。
稀な疾患であり、一般的に自覚症状はありません。
原因は主に先天性の発生異常ですが、その他、外傷、出血、感染後の炎症などで起きることもあります。
くも膜嚢腫の主な原因とは?
この記事ではくも膜嚢腫の主な原因とは?について解説します。
原因として先天性と後天性があります。
でも、主な原因は先天性の発生異常です。
具体的には、胎児の脳の発育過程でくも膜が正常に形成されないため、くも膜と呼ばれる髄膜の間に隙間ができてしまい、その隙間に液体が溜まって嚢腫の袋が形成さることが原因です。
たまたま発見されることが多く、全体の約75%は小児期に発見されます。
男性に多いのも特徴です。
後天性のくも膜嚢腫は、外傷、出血、感染後の炎症などが原因となります。
いずれも本来1枚のくも膜が2枚にわかれてしまうのが要因です。
頭部外傷の場合、くも膜に損傷が生じ、それが修復される過程で液体が溜まり嚢状の構造が形成されます。
また、感染の場合は、くも膜が炎症を起こすことで嚢腫が形成されます。
特に、脳や脊髄の手術後に嚢腫が発生することがあります。
後天的な原因によるくも膜嚢腫は、先天性のものと比較して非常に少ないのが現状です。
くも膜嚢腫による症状とその見分け方
この記事ではくも膜嚢腫による症状とその見分け方について解説します。
多くの患者さんは症状がありません。
画像検査でたまたま発見されることが多いです。
でも、嚢腫が大きい場合は、周辺の脳組織を圧迫し、さまざまな症状を起こすことがあります。
代表的な症状は以下です。
まず、頭痛です。
頭の中に嚢腫が出来て増大した場合、頭の内部の圧力が上昇します。
その結果、脳が圧迫され、頭痛が起こります。
特定の部位に持続的に痛みを感じたり、頭痛薬を内服しても改善しないことが多いです。
その他、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
次に、視覚障害です。
嚢腫が視神経を圧迫した場合、視力低下、視野欠損、複視(物が二重に見える)といった症状を起こすことがあります。
嚢腫が脳の電気的活動に影響を与えた場合には、てんかん発作や痙攣が起きることもあります。
嚢腫が大脳の運動や感覚の神経部位に及ぶと、手足の麻痺やしびれ、筋力低下が見られることもあります。
大脳半球に及んだ大きなものは、知的発達障害を起こすこともあります。
幹細胞治療で新たな治療法への期待
この記事では幹細胞治療で新たな治療法への期待について解説します。
従来の治療は、嚢腫の除去や内容物の排出などの外科的手術でしたが、侵襲があるのが欠点です。
術後の合併症も懸念されます。
幹細胞治療は、これらの課題を克服する可能性があります。
幹細胞治療とは、自身の体などから採取した幹細胞を、病気の部位に移植することで、損傷した組織や器官を再生させたり、機能を回復させたりする治療法です。
これにより、嚢腫の原因となる異常な細胞や組織を正常な状態に戻すことが期待できます。
具体的には以下の内容が期待できるでしょう。
幹細胞を嚢腫壁に移植することで、損傷した部分を修復し、嚢腫の成長を抑制することが期待されます。
幹細胞が神経細胞に分化することで、嚢腫によって損傷した神経組織を再生し、神経機能の回復を促すことも期待できます。
さらに、幹細胞が分泌する様々な成長因子によって、嚢腫周囲の炎症を抑制し、神経組織の保護効果をもたらすことも可能です。
しかしながら、実用化には、安全性、有効性、倫理的な問題など、解決しなければならない課題があります。
でも、これらの問題が解決されると、期待が持てる新たな治療法となるでしょう。
まとめ
今回の記事では、くも膜嚢腫の原因と症状をわかりやすく解説について記載しました。
くも膜嚢腫は比較的稀な疾患ですが、神経損傷によってさまざまな神経症状が起こる可能性がある疾患です。
従来の治療法として外科治療がメインですが侵襲を考慮すると、他の治療法が望まれます。
そのため、新たな治療として再生医療には期待が持てます。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、脳脊髄損傷部位の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」があります。
これらの治療法は、くも膜嚢腫における侵襲の少ない新たな治療法として期待が持てます。
よくあるご質問
- くも膜嚢胞は何人に1人くらいですか?
- 一般的に稀な疾患とされており、何人に1人と回答することは難しいです。
典型的な症状が無いうえに、多くは無症状のため、病院を受診する人が少なく、正確な統計がとれないことが一因です。
でも、一部の報告では0.1〜0.3%程度とされています。 - くも膜嚢胞と慢性硬膜下血腫の違いは何ですか?
- 両者は全く異なるものです。
くも膜嚢胞はくも膜にできた袋状の嚢状構造ができる疾患です。
多くの場合、無症状です。
一方、慢性硬膜下血腫は頭部外傷などによって、脳と硬膜の間に血液がゆっくり溜まる疾患です。
症状として、頭痛、片側の麻痺、意識障害などを起こすため治療が必要です。
<参照元>
慶応義塾大学医学部脳神経外科学教室:https://www.neurosurgery.med.keio.ac.jp/disease/childhood/06.html
日本小児神経外科学会:http://jpn-spn.umin.jp/sick/b.html
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