点滴×同時刺激リハビリで神経障害の後遺症を改善へ

脳卒中

 脳卒中がもたらす右片麻痺と発語障害:身体と心の負担

<この記事を読んでわかること>
脳卒中で片麻痺が起こるメカニズムがわかる
脳卒中で発語障害が起こるメカニズムがわかる
片麻痺と発語障害を併発するメカニズムがわかる

片麻痺や発語障害はどちらも脳卒中の代表的な後遺症です。
片麻痺では歩行などの日常基本動作が、発語障害は他者とのコミュニケーションが障害されますが、それに加えてこの2つの後遺症は同時に出現する可能性が高いため、厄介です。
この記事では、片麻痺や発語障害を生じるメカニズムや、併発しやすい理由について解説します。

右片麻痺が引き起こされる脳の部位とその影響

右片麻痺が引き起こされる脳の部位とその影響
脳梗塞や脳出血などの疾患を発症すると、その部位に応じてさまざまな神経学的後遺症を残しますが、特に代表的な後遺症が片麻痺です。
片麻痺とは体の左右半身のいずれかが麻痺してしまった状態を指し、当然体の自由が効かなくなるため、歩行や入浴などの日常動作はもちろんのこと、家事や仕事にも大きな支障をきたします。
片麻痺のメカニズムを理解するためには、身体を思うように動かすために必要不可欠な神経回路「錐体路」に対する理解が必要です。
錐体路とは、大脳皮質運動野から始まり、大脳の

内包後脚⇨中脳大脳脚⇨橋⇨延髄⇨延髄の錐体交叉⇨脊髄

からなる一連の神経回路であり、錐体路を経由して発生した運動の指令は脊髄から末梢神経に伝達され、最終的に筋肉を刺激します。
ここで重要なのは、延髄の錐体交叉で神経回路が左右交叉する点であり、それによって右大脳皮質運動野からでた指令は左半身を、左大脳皮質運動野からでた指令は右半身の運動をコントロールしています。
そのため、右片麻痺をきたした場合に疑う病変部位は、錐体交叉より上流の左側の橋や中脳・大脳が強く疑われるわけです。

発語障害のメカニズム:なぜ言葉が出にくくなるのか?

発語障害のメカニズム:なぜ言葉が出にくくなるのか?
右片麻痺を伴う脳卒中の場合、左大脳半球に脳梗塞や脳出血を発症している可能性が高く、その場合、発語障害を併発する可能性があります。
これは、多くの場合で左大脳半球に言語中枢が存在しているためです。
右利きの人の場合、ほとんどが左大脳半球に言語中枢が存在しており、左利きの人の場合、⅔は言語中枢は左大脳半球に、残り⅓は右大脳半球に存在するため、基本的に左大脳半球で脳血管障害を起こした場合、言語障害を引き起こす可能性が高いです。
特に、感覚性言語中枢の位置する側頭葉後上部と運動性言語中枢の位置する前頭葉後下部の運動皮質のすぐ前方、さらにはこれらに隣接する頭頂葉下部や皮質下連絡線維が障害を受けると、言語機能が障害されます。
どの部位が障害されるかで出現する言語障害も異なり、具体的には下記の通りです。

  • 感覚性言語中枢の障害:単語を流暢に発話できるが、意味を理解できないため、会話上で単語同士の関係がおかしかったり、会話が成り立たない。また、書かれている文字の意味も理解できない。
  • 運動性言語中枢の障害:話された内容や書かれた文字の意味は理解できるが、言語の表出能力が障害されるため、発話や書字に支障をきたし、他者とのコミュニケーションに重大な支障をきたす。

さらに、障害部位次第で感覚性言語中枢と運動性言語中枢が両方同時に障害される全失語や、復唱能力だけ保たれる超皮質性失語など、障害される範囲や部位によって言語障害の症状の程度もさまざまです。

右片麻痺と発語障害が同時に現れる理由とは?

上記で記したように、右片麻痺は脳出血や脳梗塞によって左大脳半球の錐体路が障害されることで生じます。
一方で、発語障害は多くの人で左大脳半球に位置する言語中枢が障害されることで生じる症状であり、どちらも左大脳半球の障害が原因です。
左大脳半球で、より広範に損傷を受けた場合、右片麻痺と発語障害が同時に現れる可能性が高く、日常生活に大きな支障を与えるため、注意が必要です。

まとめ

今回の記事では、脳卒中がもたらす右片麻痺と発語障害について詳しく解説しました。
左大脳半球における脳卒中で錐体路が障害されれば右片麻痺が、言語中枢が障害されれば発語障害が出現します。
損傷範囲が広いとどちらの症状も併発する可能性があり、片麻痺は仕事や家事はもちろん、移動や入浴などの基本動作にも支障をきたします。
このような状態では、介護が必要となる可能性も高いですが、同時に発語障害を併発している場合は、介護者とのコミュニケーションに重大な支障をきたすため、非常に厄介な病態です。
これらの後遺症に対し、現状では早期からリハビリテーションを行うことが重要ですが、これらの後遺症を根治させることは困難です。
一方で、近年では片麻痺や発語障害に対して再生治療が新たな治療法として非常に注目されています。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで難治であった片麻痺や発語障害の改善も期待できます。

よくあるご質問

脳卒中による身体機能障害にはどんなものがありますか?
脳卒中による身体機能障害は、片麻痺などの運動障害、痺れなどの感覚障害、嚥下障害、構音障害、眼球運動障害、自律神経障害など、多岐にわたります。
さらに、言語中枢が障害されることで失語症をきたす可能性もあります。

脳卒中になると言葉が出てこなくなるのはなぜですか?
ほとんどの人の場合、左大脳半球に言語中枢が存在しているため、脳卒中を発症して左大脳半球が障害されると、言葉が出てこなくなります。
特に、前頭葉に位置するブローカ野と呼ばれる部位が障害されると、うまく言語を表出できなくなります。

<参照元>
MSDマニュアル:https://www.msdmanuals.com/
J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/27/3/27_3_231/_pdf

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