<この記事を読んでわかること>
出血後に残る後遺症と神経障害の可能性
再発を防ぐために注意すべき生活習慣
再発時に早期対応できるよう備える方法
内頚動脈海綿静脈洞瘻による脳出血後の予後は、瘻孔の大きさや静脈還流障害の程度により異なります。
早期に適切な治療、特にコイル塞栓術やステント留置が行われた場合は、後遺症を最小限に抑え、良好な回復が期待できます。
しかし、治療が遅れた場合は、重篤な意識障害や片麻痺を残すリスクが高まります。
出血後に残る後遺症と神経障害の可能性
この記事では、出血後に残る後遺症と神経障害の可能性について解説します。
内頚動脈海綿静脈洞瘻による脳出血後には、さまざまな後遺症や神経障害が残る可能性があります。
まず、海綿静脈洞を通る動眼神経、滑車神経、外転神経が障害されることで、眼球運動障害や複視が起こりやすくなります。
具体的には、視線を動かす際に違和感が出たり、二重に見えたりします。
また、三叉神経第1枝が障害されると、額や眼周囲の感覚が鈍くなったり、しびれや痛みが残ったりすることがあります。
さらに、瘻孔による異常な血流が脳内静脈系に負荷をかけると、脳浮腫や静脈性梗塞を引き起こし、片麻痺や失語など重篤な神経障害が起こるリスクが高まります。
眼に対する影響も大きく、静脈うっ滞による眼圧上昇や視神経障害を介して視力低下や失明に至ることもあります。
出血による脳組織の直接的障害により、意識障害、記憶障害、認知機能低下が持続するケースも少なくありません。
後遺症の程度は、発症から治療までの時間、瘻孔の血流量、脳出血の範囲や部位によって大きく異なります。
再発を防ぐために注意すべき生活習慣
この記事では、再発を防ぐために注意すべき生活習慣について解説します。
再発を防ぐためには、日常生活において血管への負担を減らすことが重要です。
第一は、血圧管理です。
高血圧は再出血の最大の危険因子であるため、塩分摂取を控えたバランスの良い食事や、適度な有酸素運動を継続することが大切です。
ただし、過度な運動や急激な動作は血圧上昇となるため、医師と相談しながら無理のない範囲で行うことが必要です。
次に、禁煙です。
喫煙は血管壁を脆弱にし、再出血のリスクを高めるため、禁煙しましょう。
アルコール摂取も控えめにし、大量飲酒は避けるべきです。
また、十分な睡眠を確保し、ストレスをためない生活を心がけることも血管の健康維持に寄与します。
ストレスは交感神経を活性化して、血圧上昇を招くため、リラクゼーション法や趣味の時間を取り入れることが勧められます。
さらに、定期的な通院と画像検査による瘻孔部のフォローアップを怠らず、万一再発兆候が見られた場合は速やかに医療機関を受診することが大切です。
再発時に早期対応できるよう備える方法
この記事では、再発時に早期対応できるよう備える方法について解説します。
再発に備えるためには、早期に異常な症状を察知し、迅速に対応できる体制を整えておくことが重要です。
具体的な症状として、頭痛、眼球突出、視力低下、複視、耳鳴りなどが見られます。
これらの症状について、本人と家族が十分に理解しておくことが必要です。
また、これらの症状が出現した際には、自己判断で様子を見ず、すぐに医療機関を受診する意識づけも大切です。
また、緊急時に対応できるよう、かかりつけ医や専門医療機関の連絡先を明らかにして、受診の流れをあらかじめ家族で共有しておくことも重要です。
加えて、定期的な脳MRIやMRAなどの画像検査による経過観察を欠かさず受け、瘻孔の再開通や静脈還流障害の兆候を早期に発見することが再発防止に直結します。
すでに、高血圧や糖尿病などの基礎疾患がある場合は、医師の指導のもと管理を徹底し、血管への負担を最小限に抑えることが肝要です。
日常生活においては、過度な運動や過剰なストレスを避け、血圧の急激な上昇を来すような生活習慣を避ける心がけも予防に役立ちます。
まとめ
今回の記事では、内頚動脈海綿静脈洞瘻による脳出血後の予後とリスク管理について解説しました。
内頚動脈海綿静脈洞瘻による脳出血の治療として、コイル塞栓術やステント留置などが治療の主流です。
しかしながら、これらの治療後も視覚障害や運動障害などの後遺症が残るケースが多く、現行治療だけでは神経機能の完全な回復には限界があるのが現状です。
そのため、再生医療に期待が寄せられています。
再生医療の実際例として、「神経障害は治るを当たり前にする取り組み」を、ニューロテック®と定義しています。
また、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄の治る力を高める治療』を、リニューロ®と定義しました。
具体的に、リニューロ®とは、同時刺激×神経再生医療Ⓡにて『狙った脳・脊髄の治る力を高める治療』です。
また、その治療効果を高めるために骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリ®の併用をお勧めしています。
ニューロテック、脳梗塞脊髄損傷クリニックなどでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供し、神経障害の軽減を目指しています。
これらの治療は、内頚動脈海綿静脈洞瘻による脳出血後の後遺症に悩む患者さんに期待が持てる治療となるでしょう。
よくあるご質問
- 内頸動脈海綿静脈洞瘻の症状は?
- 眼球突出、結膜充血、拍動性雑音、視力低下、複視など眼に関連する症状が多いです。
特に、拍動に一致した耳鳴りや頭痛を訴えることもあります。
症状は瘻孔の流速や静脈還流障害の程度によって異なります。
重症例では眼球運動障害や視神経障害が進行し、失明に至ることもあります。 - 脳の病気で海綿静脈洞とは何ですか?
- 海綿静脈洞は、脳の中心部に位置する静脈の集合体で、脳から心臓へ血液を戻す役割を担っています。
その内部には、内頚動脈や、動眼神経、滑車神経、外転神経、三叉神経第1枝などの重要な血管や神経が走行しています。
(1)海綿静脈洞内内頸動脈瘤7症例の検討|日眼会誌 1991; 95; pp1268-1274:https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/95_1268.pdf
(2)硬膜動静脈奇形と内頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF-53)|船橋市立医療センター:https://www.mmc.funabashi.chiba.jp/neurosurgery/uploads/CCF-53_1.pdf
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