・陳旧性視床梗塞とラクナ梗塞が身体に与える影響がわかる
・再生医療が脳細胞を再生させるメカニズムがわかる
・再生医療によって陳旧性視床梗塞とラクナ梗塞がどう改善するかわかる
陳旧性の視床梗塞やラクナ梗塞では、麻痺やしびれ、記名力低下や見当識障害など、さまざまな後遺症が残る可能性があります。
そこで、近年ではこれらの後遺症に対する新たな治療法として再生医療が非常に注目されています。
この記事では、再生医療が陳旧性視床梗塞とラクナ梗塞に与える影響について詳しく解説します。
陳旧性視床梗塞とラクナ梗塞の治療における再生医療の可能性
脳梗塞は部位や障害される血管によっていくつかの種類に分類されますが、陳旧性視床梗塞やラクナ梗塞とはそれぞれ下記のような脳梗塞です。
- 陳旧性視床梗塞:過去に視床を栄養する血管が梗塞することで生じた脳梗塞
- ラクナ梗塞:脳深部を栄養する細い血管(穿通枝)が梗塞することで生じた脳梗塞
一般的に、視床は言語機能や感覚機能、記憶力や注意力に関わる部位であるため、陳旧性視床梗塞ではこれらの機能が障害される可能性があります。
また、ラクナ梗塞とは脳深部を栄養する穿通枝の梗塞であり、梗塞範囲は小さく、1.5cm以下の梗塞巣の脳梗塞のことを指します。
ラクナ梗塞では梗塞範囲自体は小さいものの、運悪く脳内部の重要な部位が障害されれば半身麻痺や重篤な感覚障害が後遺症として残る可能性もあり、注意が必要です。
現状、陳旧性の視床梗塞やラクナ梗塞による後遺症に対しては、それぞれの症状に対するリハビリテーションが主な治療法ですが、近年では再生医療によって損傷した脳細胞の機能そのものを再生させる試みも盛んです。
例えば、北海道大学では脳梗塞患者に対する自家骨髄間葉系幹細胞を用いた再生医療の治験が開始されており、今後研究が進めば、重篤な後遺症を残した陳旧性の視床梗塞やラクナ梗塞の改善も期待できます。
幹細胞治療の概要と神経再生の仕組み
では、具体的にどのような作用機序で脳細胞が再生するのでしょうか??
まず、再生医療を理解する上で重要なのが幹細胞への理解です。
損傷部位を再生させるためには、損傷部位と同じ細胞に分化し、かつ大量に自己複製できる細胞が必要となります。
再生医療に用いられる幹細胞は、どのような組織にも分化でき、かつ高い自己複製能力が求められます。
これまでさまざまな幹細胞の開発が行われてきましたが、開発コストや医療倫理的課題から、現状で最も一般的に使用される幹細胞は骨髄や脂肪から採取できる間葉系幹細胞です。
自身の骨髄や脂肪から採取した間葉系幹細胞は、体内の損傷している部位に生着し、損傷した細胞と同じ系統の細胞に分化し、その上で頻回に細胞分裂を繰り返すことで損傷した組織・臓器の再生を促します。
しかし、いかに再生医療といえど、トカゲのように切断された組織が再び生えるような再生は今の所認めません。
現状で認められている、再生医療の神経細胞への作用機序は下記の通りです。
- 神経栄養因子を介した神経保護
- 抗炎症作用
- 血管新生作用
- 神経細胞そのものの再生作用
先述した幹細胞による直接的な神経再生効果もありますが、幹細胞の培養を行った培養上澄液には大量のサイトカインが含まれており、このサイトカインによる抗炎症作用や血管新生作用、神経保護効果が、損傷した神経細胞の再生を促進します。
また長崎大学の研究によれば、幹細胞を移植することで樹状突起の構築や軸索の伸長など、神経細胞に対する直接的な効果も報告しています。
再生医療が視床や小血管疾患に与える具体的な効果
再生医療が視床や小血管疾患に与える具体的な効果は主に下記の通りです。
- 麻痺やしびれの改善
- 半側空間無視の改善
- 記名力低下の改善
- 見当識障害の改善
本来であれば後遺症として残ってしまう上記のような症状も、再生医療によって改善する可能性があり、今後の知見が待たれるところです。
まとめ
今回の記事では、再生医療が陳旧性視床梗塞とラクナ梗塞に与える影響について詳しく解説しました。
陳旧性視床梗塞やラクナ梗塞は麻痺やしびれなど、さまざまな後遺症を残す可能性があり、現状ではリハビリテーション以外に症状の改善・緩和を見込める治療はありません。
一方で、近年では新たな治療法として再生医療が非常に注目されています。
再生医療では幹細胞を用いて損傷した臓器や組織の再生や機能の改善が見込めるため、これまで修復不可能と考えられてきた神経細胞や心筋細胞の改善も見込めます。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、脳梗塞後の後遺症改善が期待できます。
よくあるご質問
- ラクナ梗塞の予後は?
- ラクナ梗塞は梗塞範囲が15mm以下の小さな梗塞巣であると定義されており、一般的に予後は良好です。
仮に発症したとしても、約80%の人で日常生活の自立が保たれます。 - ラクナ脳梗塞の原因は水分不足ですか?
- ラクナ脳梗塞の原因は動脈硬化であり、長期的な高血圧・糖尿病・高脂血症・喫煙・肥満などがリスクとなります。
ただし、水分不足は血液の粘度を上げるため、血栓が形成されやすくなり、脳梗塞のリスクも上がるため注意が必要です。
<参照元>
脳梗塞慢性期に対する再生医療等製品HUNS001の第I/IIa相医師主導治験(RAINBOW2a研究)が開始されました|北海道大学病院:https://www.huhp.hokudai.ac.jp/
脳梗塞と脊髄損傷の再生治療|首相官邸ホームページ:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/suisin_dai18/siryou6.pdf
神経幹細胞|長崎大学 脳神経外科:https://www.nagasaki-nouge.jp/katsudou12.html
関連記事
ラクナ梗塞は脳の深部にある細い血管(穿通枝)が閉塞することで起きる脳梗塞です。動脈硬化が主な原因です。体の片側の運動麻痺や感覚障害が起きることがあり、後遺症として残る可能性があります。生活習慣の改善と急性期治療、再発の予防が重要であり、再生医療の可能性にも注目が集まっています。
脳は全身の随意筋(意思の通りに動かせる筋肉)の司令塔であるため、脳梗塞などの神経疾患によって、病側とは左右反対側の半身麻痺に陥ります。半身麻痺によって歩行や体位変換など、さまざまな基本的生活動作にも支障が出ます。そこで、この記事では脳梗塞で右半身麻痺になった場合の影響や、右半身麻痺になる理由について詳しく解説します。
外部サイトの関連記事:気付いた時にはラクナ梗塞が増えている多発性脳梗塞