<この記事を読んでわかること>
・横断性脊髄炎の定義と概要
・横断性脊髄炎の原因とリスク要因
・急性横断性脊髄炎の主な症状
この記事では横断性脊髄炎とは?について解説します。
横断性脊髄炎は、脊髄の一部に炎症が起こり、神経伝達が妨げられるため、さまざまな神経症状を起こす疾患です。
原因はいろいろですが、ウイルス感染や自己免疫反応などが知られています。
診断と治療が遅れると、神経障害が残ることがあるため、早期の医療介入が重要です。
横断性脊髄炎の定義と概要
この記事では横断性脊髄炎の定義と概要について解説します。
横断性脊髄炎の定義として、脊髄の一部に炎症が起こり、その部位の神経が損傷されるため、さまざまな神経症状が出る疾患です。
脊髄を横断するように炎症が広がることが特徴です。
診断の概要は以下の通りです。
診断には、MRI検査や脳脊髄液検査が用いられます。
MRI検査では、脊髄の炎症による腫脹や損傷が画像でみられ、脊髄機能の障害を来す他の疾患の除外に役立ちます。
髄液検査では単球がみられ、タンパクの軽度上昇、IgG indexの上昇がみられます。
治療の概要です。
原因が同定された場合は、原因の治療を優先的に行います。
たとえば、感染症であれば、抗ウイルス薬などが使われます。
明らかな原因が無い場合は、主に炎症を抑えるためのステロイド療法が中心となります。
血漿交換を考慮することもあります。
適切に管理されないと、後遺症として神経障害が残る可能性があるので、早期の診断と治療が重要です。
横断性脊髄炎の予後
予後の概要です。
病気の進行が急速であるほど予後は不良と言われています。
患者さんの3分の1は回復し、3分の1は筋力低下および尿意切迫などの後遺症が残り、残りの3分の1は寝たきりになることが多いです。
横断性脊髄炎の原因とリスク要因
この記事では横断性脊髄炎の原因とリスク要因について解説します。
原因は多岐にわたります。
でも、多発性硬化症という神経疾患に伴って起こることが、最も多いと報告されています。
その他、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群など)、ウイルス感染(マイコプラズマなど)、細菌感染(梅毒、結核など)が原因となります。
リスク要因は、完全に解明されていないのが現状です。
現在、考えられているリスク要因は、以下です。
- 一つ目は、特定のウイルスや細菌によって起きる感染症です。
免疫を落とさないような規則正しい生活を心がけることが大切です。 - 二つ目は、多発性硬化症などの自己免疫疾患に罹患している人です。
- 三つ目は、遺伝子変異の可能性です。
- その他、特定の化学物質が存在する環境が、発症のリスクを高める可能性も考えられています。
加えて、アンフェタミンや静注ヘロインなどの薬物使用者に起こることが指摘されています。
非常に稀ではありますが、特定のワクチン接種後に免疫反応が過剰に働き、リスク要因となることがあります。
急性横断性脊髄炎の主な症状
この記事では急性横断性脊髄炎の主な症状について解説します。
症状の概要として、炎症が脊髄の特定部分に起こり、急速に進行することが特徴です。
初期症状の多くは、突然の背中の痛みが現れることが多く、この痛みは病変が存在する脊髄の位置と一致することが多いです。
帯状に広がり、体が締め付けられるような感覚を伴うこともあります。
その後、数時間から数日後に、手足の筋力低下や麻痺、しびれなどの感覚障害を伴います。
歩行困難や立ち上がりに支障を来すことも多いです。
また、自律神経が関与するため、排尿や排便に障害が起きることもあります。
症状は急速に進行することが多く、数時間から数日以内にピークに達することがあります。
症状の範囲や重症度は、脊髄内の炎症の場所や広がりによって異なり、軽度な症状から重篤な麻痺までさまざまです。
まれに呼吸筋が障害され、呼吸困難を起こすこともあります。
症状の回復は、発症後2週間ないし12週間で始まりますが、2年程度続くこともあります。
しかしながら、最初の3〜6ヶ月間で症状の改善が認められない場合は、著しい回復が望めないことが多いです。
まとめ
今回の記事では、横断性脊髄炎とは?について解説しました。
この疾患は重症化すると神経が高度に損傷されます。
これまでの医療では、高度に損傷した神経を蘇ることは非常に難しいです。
そのため、新たな治療法として、再生医療が注目されています。
たとえば、脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」があります。
これらの治療法は、神経損傷による後遺症を残した患者さんにとって、将来的に期待が持てる治療となるでしょう。
よくあるご質問
- 急性横断性脊髄炎はMRIでわかりますか?
- 診断の一端を担うことはできます。
脊髄の炎症による腫れや損傷が画像として捉えられ、他の原因による神経疾患との鑑別診断に役立ちます。
でも、MRI検査だけでは確定診断には至りませんので、他の検査(髄液検査など)が必要です。 - 横断性脊髄炎の初期症状は?
- 突然の背中の痛みから始まることが多いです。
この痛みは、帯状に広がり、体が締め付けられるような感覚を伴うことがあります。
その後、手足に力が入らない、しびれなどの感覚異常が出たりします。
さらに、排尿や排便に障害が起こることもあります。
MSDマニュアル:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%84%8A%E9%AB%84%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%80%A5%E6%80%A7%E6%A8%AA%E6%96%AD%E6%80%A7%E8%84%8A%E9%AB%84%E7%82%8E
横断性脊髄炎 / Transverse Myelitis:https://www.christopherreeve.org/international/top-paralysis-topics-in-japanese/transverse-myelitis/
運動神経や感覚神経、自律神経など多くの神経が束になった脊髄を損傷することで多岐に渡る神経障害が出現します。中でも、最も下位のレベルに存在する仙髄は障害を受けやすく、仙髄の障害によって排尿や排便に障害をきたし、日常生活にも多くの支障を来してしまいます。そこで本書では、脊髄損傷における排尿障害に関して詳しく解説していきます。