<この記事を読んでわかること>
・エクソソームの構造がわかる
・エクソソームの役割や能力がわかる
・エクソソームがどのように医療に応用されているかがわかる
医療技術の発展によって、以前までは特に存在意味を持たないと思われていたエクソソームが急速に注目されています。
エクソソームは細胞間での情報伝達に関わっており、この能力を治療に応用することで、これまで改善困難であった病気の新たな治療法にもなり得ます。
この記事では、エクソソームと幹細胞培養上清液の基本理解について解説します。
細胞間コミュニケーションを担うエクソソームの機能
最近「エクソソーム」という言葉をよく耳にする方も多いのではないでしょうか?
エクソソームとは細胞から分泌される小胞のことで、発見されたのは30年以上前とその歴史は古く、発見当初は細胞内に蓄積したゴミを細胞外に排出するゴミ箱だと思われてきました。
しかし、徐々に医学が発展するとともに、エクソソームがT細胞の活性化に関わっていることや、細胞間情報伝達に大きく関与していることが明らかになり、世界中の医学者から注目されるようになったのです。
エクソソームはある細胞から分泌された後、他の細胞内部に入り込んでエクソソーム内部にある分泌元の細胞のRNAが読み込まれることでその細胞の変化を促し、複数の細胞間で情報交換をしていると考えられています。
また、分泌元の細胞内部に蓄積した不要なDNAの断片をエクソソームが回収して細胞外に排出することで、分泌元の細胞の向上性維持や老化予防に寄与していることも近年報告されています。
では、細胞間コミュニケーションを担うエクソソームの機能は実際に私たちの身体の中でどのように機能しているのでしょうか?
例えば、体内で発生したがん細胞は大量のエクソソームを分泌し、そのエクソソームを介して周囲の細胞に働きかけることで、自身の生存に有利な環境に作り変えてしまいます。
そうすることでがん細胞はその小さな環境で生存・増殖することができ、徐々に周囲に浸潤・転移していくわけです。
逆に、がん細胞の発生するエクソソームの効果を抑制できればがんの成長を予防できると考え、新たながん治療薬の開発も進んでいます。
またウイルスもがん細胞同様、自身が生きていく環境下で有利になるように、エクソソームを分泌して周囲の細胞に影響を与えていることが知られています。
エクソソームの構造と含まれる成分の特徴
エクソソームは全身のほぼ全ての細胞から放出されるわずか40〜150nmの小胞のことです。
内部にはその分泌元となる細胞のタンパク質や核酸が含まれ、DNA・mRNA・miRNAなどが豊富に含まれており、外殻を脂質二重膜に囲まれています。
また、エクソソームに含まれる特徴的なタンパク質は下記の通りです。
- 熱ショックタンパク質(HSP70,HSP90)
- 膜貫通タンパク質ファミリーのテトラスパニン(CD9, CD63 ,CD81)
これらの特徴的なタンパク質がエクソソームの抽出に役立っています。
エクソソームが注目される理由とその応用分野
近年、急速にエクソソームが注目される理由の1つが、その応用性の高さです。
先述したように、がん細胞のエクソソームを抑制することで新しい抗がん剤を開発しようという動きも活発です。
また、エクソソームによってインスリン分泌を行う膵臓のβ細胞の機能が活性化し、インスリン分泌が活性化することで糖尿病の新たな治療薬としても注目されています。
このように多方面でエクソソームの効果が期待されており、実際にアメリカではエクソソーム市場は約2億ドルの価値があると評価されています。
さらに、今後も市場拡大が見込まれており、2035年までに見込まれている市場価値はなんと45億ドルです。
今後更なる開発や研究が進めば、今まで改善困難であった病気への新たな治療法の登場も期待できます。
まとめ
今回の記事では、エクソソームと幹細胞培養上清液の基本理解について詳しく解説しました。
エクソソームは細胞間での様々な情報伝達に関わり、この能力を応用して近年ではさまざまな病気の治療に応用されています。
特に、再生医療の分野でもエクソソームに対する注目は増しており、再生医療に用いられる幹細胞から分泌されるエクソソームは幹細胞培養上清液にたくさん含まれており、これを患者に投与することで細胞の再生や活性化効果が期待できます。
脳梗塞や脳出血による麻痺やしびれなどの後遺症に対して、これまではリハビリテーションが唯一の改善策でしたが、今後エクソソーム治療がさらに進化すれば新たな治療法になる可能性もあり、非常に注目されています。
さらに、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった神経学的後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 幹細胞培養上精液にはどんな効果があるのですか?
- 幹細胞培養上精液には幹細胞から分泌された多くのサイトカインやエクソソームが含まれています。
血管新生、抗炎症作用、免疫調整作用などさまざまな効果があり、組織再生に非常に役立ちます。 - エクソソームの主成分は何ですか?
- エクソソームの主成分は分泌元となる細胞のタンパク質やDNA、mRNA、miRNAなどです。
またこれらは脂質二重膜によって内包されており、その表面にはテトラスパニン類やインテグリン類などの膜タンパク質が存在します。
(1)エクソソームと細胞老化の関係を解明|大阪大学:https://www.biken.osaka-u.ac.jp/achievement/research/2017/104
(2)がん細胞をはじめとする種々のエクソソーム分泌の新たな機序解明|国立がん研究センター:https://www.ncc.go.jp/jp/information/researchtopics/2024/0724/index.html
(3)エクソソームの脂質二重膜の構成成分および生理機能|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/21/2/21_69/_pdf
(4)カフェインの過剰摂取について|農林水産省:https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html
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