・頸椎症性脊髄症と難病の関係性がわかる
・頸椎症性脊髄症の診断方法がわかる
・指定難病と非指定難病の違いがわかる
頸椎症性脊髄症は頚椎の加齢性変化によって脊髄が圧迫され、麻痺やしびれ、歩行困難など、さまざまな神経症状をきたす疾患です。
早期診断・早期治療すれば根治可能ですが、原因によっては難病にもなりうる病気のため、注意が必要です。
この記事では、頸椎症性脊髄症が難病であるかどうかについて詳しく解説します。
この病気は「難病」なのか?定義と誤解されやすい点
いわゆる難病とは、発症のメカニズムが不明で、治療法が確立されておらず、長期にわたり療養が必要となる病気を指しますが、医学的に明確な線引きがされているわけではありません。
では、頸椎症性脊髄症は難病なのでしょうか?
そもそも、頸椎症性脊髄症とはどの様な病気かといえば、頚椎の加齢性変化によって頚椎周囲を走行する脊髄が圧迫され、さまざまな神経症状をきたす疾患です。
頚椎の加齢性変化として下記のような変化が生じます。
- 椎間関節が不安定になる
- 椎間板(椎間のクッション)が潰れる
- 骨棘の形成
- 椎間を走行する靭帯の肥厚
上記のような加齢性変化によって頚椎周囲の解剖に変化が生じると、頚椎・靭帯・椎間板・筋肉などによって構成された脊柱管内部を走行する脊髄が圧迫される可能性があり、圧迫によって麻痺やしびれが生じる病気が頸椎症性脊髄症です。
この病気は難病の代表例であるパーキンソン病などの変性疾患と異なり、早期に治療すれば改善が見込める疾患です。
加齢性変化によって脊髄を圧迫している原因部位を、手術で直接除去すれば改善が見込めます。
そのため、難病とは言えないでしょう。
ただし、頸椎症性脊髄症の原因疾患となる黄色靭帯骨化症や後縦靭帯骨化症などの疾患自体は国の定める指定難病です。
黄色靭帯とは、脊髄の後方、脊柱管の後面を縦走する靭帯で、棘突起間をつないでいます。
後縦靭帯とは、脊髄の前方、脊柱管の前面を縦走する靭帯で、椎体の後方をつないでいます。
黄色靭帯骨化症、もしくは後縦靭帯骨化症は、これらの靭帯が原因不明に肥厚することで脊柱管内部の脊髄を圧迫し、さまざまな神経症状をきたす疾患です。
仮に手術で骨化した靭帯を除去しても、他の部位の靭帯で再発する可能性があり、難病と言われています。
頸椎症性脊髄症の診断に使われる検査方法
頸椎症性脊髄症の診断には、主に下記の2つの検査が実施されます。
- レントゲン検査:椎体のズレや骨棘の形成など、骨の変化を見つけられる
- MRI検査:骨はもちろんのこと、靭帯や椎間板なども観察可能
レントゲン検査は骨の性状を確認するのに優れており、骨棘の形成など、椎体の加齢性変化を比較的簡便に発見できる検査です。
MRI検査は骨以外の靭帯や椎間板も明瞭に視認でき、どのレベルの脊髄がどのように圧迫されているのか判断するのに適している一方で、検査できる医療機関に限りがあり、また検査には時間もかかる点でレントゲンに劣ります。
どちらの検査も行った上で、総合的に治療方針を決定する必要があります。
厚労省の指定難病と非指定疾患の違いと助成の有無
文頭でも示したように、いわゆる難病は明確に線引きされていません。
しかし、難病の中でもその病気の治療研究等を国が主導で進める必要があると判断された病気を指定難病と区分けしており、現在厚生労働省によって341疾病が指定難病に認定されています。
指定難病と非指定難病の違いは主に下記の2つです。
- 患者数が本邦において一定の人数に達しないこと
- 客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立していること
指定難病を発症した場合、特定医療費助成制度を活用することで診察、薬剤の支給、手術、入院、在宅療養など、指定難病に係る医療費の自己負担分の一部に対し、助成を受けることができます。
まとめ
今回の記事では、頸椎症性脊髄症と難病の関係性について詳しく解説しました。
頸椎症性脊髄症自体は国の定める指定難病ではありませんが、頸椎症性脊髄症の原因疾患である黄色靭帯骨化症や後縦靭帯骨化症は指定難病です。
もしこれらの疾患によって手術やリハビリが必要な場合は、特定医療費助成制度を活用することで医療費の助成を受けることができます。
一方で、これらの難病は難病と言われるだけあり、治療が困難であったり、後遺症が残りやすく、療養期間が長期化する傾向にあります。
もし重篤な神経学的後遺症が残った場合、現在の医療では根治することは困難ですが、近年では頸椎症性脊髄症の後遺症に対する新たな治療法として再生医療が大変注目されています。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、脊髄や神経の治る力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった頸椎症性脊髄症の後遺症改善が期待できます。
よくあるご質問
- 頚椎症は難病指定ですか?
- いわゆる頚椎症は難病指定ではありません。
ただし、頚椎症の原因疾患となりうる、黄色靭帯骨化症や後縦靭帯骨化症を認める場合は、国の定める指定難病となり、さまざまな助成を受けることができます。 - 難病と指定難病の違いは何ですか?
- 難病の中でも、患者数が少なく、また診断基準が確立されている疾患については指定難病として認定されます。
・(1)日本整形外科学会:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/cervical_spondylotic_myelopathy.html
・(2)日本整形外科学会:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/opll.html
・(3)厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184562.pdf
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