・言語中枢が受ける影響で話せない理解できないメカニズム
・言語機能の回復を目指すリハビリテーションの重要性
・新しい治療法がもたらす言語機能の改善の可能性
この記事では脳卒中後遺症が引き起こす言語障害について解説します。
脳卒中後遺症が引き起こす言語障害は脳内の言語中枢が損傷を受けることで起こります。
一般的に、言語中枢は脳の左半球に集中しています。
症状として、言葉の意味が理解できなくなる、言葉をうまく表現できなくなるなど、さまざまな障害が起こります。
言語中枢が受ける影響で話せない理解できないメカニズム
この記事では言語中枢が受ける影響で話せない理解できないメカニズムについて解説します。
まず、言語中枢とは、脳内の言語を司る特定の領域のことです。
重要な領域は、脳の左半球に位置するブローカ野とウェルニッケ野の2つです。
ブローカ野は前頭葉にあります。
この部分が損傷されると、言葉を発することが困難になり、言語を流暢に話すことができない、言葉がゆっくりでぎこちないなどの症状が起こります。
しかしながら、言葉の理解力は比較的保たれることが多いです。
この状態を運動性失語と呼びます。
ウェルニッケ野は側頭葉にあります。
この部分が損傷されると、話すことはできるものの、言葉の意味を理解することが困難になります。
そのため、流暢に話すことができるものの、内容が意味不明で、他人が言うことが理解しにくくなります。
この状態を感覚性失語と呼びます。
さらに、ブローカ野とウェルニッケ野を繋ぐ神経線維の束である、弓上束が損傷されると、自分の言葉が間違っていることに気付くものの、正しい言葉に修正することができなくなったり、言葉を繰り返すことが難しくなったりします。
この状態を伝導性失語と呼びます。
言語機能の回復を目指すリハビリテーションの重要性
この記事では言語機能の回復を目指すリハビリテーションの重要性について解説します。
脳卒中により損傷を受けた言語中枢は、発話、理解、読み書きなどの機能に深刻な影響を与えて日常生活の質を大きく低下させます。
でも、適切な言語機能回復リハビリテーションを行うことで、多くの場合、回復が期待できます。
リハビリ治療の目的は、失われた言語機能を回復させるだけでなく、残存する機能を最大限に活用することです。
リハビリテーションは、開始時期が早ければ早いほど効果が高いことが知られています。
脳の可塑性は、脳卒中発症直後に高い状態となるため、早期のリハビリテーションが推奨されます。
リハビリテーションには、発語練習、理解力低下を改善するための訓練、コミュニケーションの円滑化の習得などが含まれます。
これらによって、言語機能回復を実感するとともに、社会復帰や家族とのコミュニケーションを再び円滑に行えるようになります。
患者さんの自立度向上の観点からもリハビリテーションは重要です。
機能回復には時間がかかることが多いですが、継続することが大切です。
周囲の家族や医療チームが一体となり、患者を支援することが成功に繋がります。
新しい治療法がもたらす言語機能の改善の可能性
この記事では新しい治療法がもたらす言語機能の改善の可能性について解説します。
従来の治療やリハビリテーションに加えて、最近では、脳の可塑性や神経再生に着目した新しい治療法が開発されています。
可塑性とは、脳の損傷部位を、他の正常部位が補おうとする性質を言います。
この可塑性を最大限に引き出すために、以下の治療が注目されています。
脳内の神経ネットワークを活性化させる脳刺激療法です。
この方法は、電気や磁気の刺激を利用して、損傷を受けた言語中枢を再活性化させ、言語機能を改善する治療法です。
神経再生の治療としては、幹細胞治療が注目されています。
患者さん自身の細胞や、他の生物から採取した幹細胞を脳の損傷部位に移植することで、新しい神経細胞を生成させ、言語機能を回復させる治療法です。
その他、神経細胞の成長を促進する成長因子と呼ばれる物質を投与することで、神経回路の再構築を促す治療法も考案されています。
さらに、デジタル技術を活用した言語訓練アプリやAIを用いたリハビリ支援ツールの開発が進んでおり、現在より効果的なリハビリ方法が検討されています。
まとめ
今回の記事では、脳卒中後遺症が引き起こす言語障害について解説しました。
脳卒中は脳血管の障害により神経を損傷する疾患です。
後遺症が残ることもたびたびあります。
でも、損傷した神経が再生すると、後遺症は軽減され社会復帰までの期間が短縮されます。
そのため、再生医療は期待の持てる治療となります。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」があります。
これらの治療法は、脳卒中の後遺症に苦しむ患者さんにとって、期待が持てる治療となるでしょう。
よくあるご質問
- 脳卒中による言語障害には何種類ありますか?
- 大きく分けると2種類に分けられます。
失語症と構音障害です。
失語症は、言葉の意味を理解したり、言葉を表現したりすることに障害が起きる状態です。
一方、構音障害は、発音に関わる筋肉や神経の障害により、言葉が聞き取りにくくなる状態です。 - 脳梗塞の言語障害とはどういうものですか?
- さまざまな障害が起こりますが、主に失語症と構音障害が代表的なものです。
失語症は、話す、聞く、読む、書くなどがうまくできなくなった状態です。
一方、構音障害は、言葉を正常にはっきり発音する能力が低下した状態で、言葉が聞き取りにくくなります。
<参照元>
厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11303000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Roudoueiseika/0000153518.pdf
回復期リハビリテーションnet:https://kaifukuki.doctorsfile.jp/sick/
脳梗塞リハビリBOT静岡:https://www.noureha-shizuoka.com/news/1289/
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