・脳卒中の疑い時の応急処置方法を解説
・症状や対処法、重要なポイントをまとめて紹介
・迅速な対応が重要で、救急車の要請も必要
脳卒中のなかには、早期に診断して治療を開始することで予後が改善できるものがありますので、顔や手の麻痺が生じたり、言葉が不明瞭になったりする初期症状には注目しましょう。
応急処置は、呼吸や意識の評価と評価に基づく対応、迅速な救急要請、救急隊が到着するまでの安全な体位の確保、また症状や時間経過の記録などしておくことが理想的です。
脳卒中が疑われる症状について
脳卒中を発症した方に、迅速かつ的確に対応するためには、脳卒中が疑われる症状を知っておく必要があります。
しかし脳卒中は、重症度によって、症状はわかりにくい場合と比較的わかりやすいものがあります。
そこでまず、簡便に脳卒中の初期症状に気づくためのポイントをご紹介します。
FASTを用いた確認方法
脳卒中の兆候を簡便にチェックし、迅速に対応を開始するためには、FASTという頭字語を使います。
- F: face
- 顔:顔が麻痺しているか、片方だけ垂れ下がっているか?
- A: Arm
- 腕:片方の腕がしびれたり、もう片方より力が弱くなったりしていないか?両腕を上げようとしても、片方の腕がもう片方より上に上がりにくくなっていないか?
- S: Speech
- 会話:言葉が不明瞭になっていないか、言葉が出てこないということはないか?
- T: Time
- 時間:上記のいずれかに当てはまる場合は、すぐに救急車を呼んでください。
もともとFast(迅速)という意味がありますので、この覚え方はわかりやすいのではないかと思います。
その他の脳卒中の初期症状
その他にも、脳卒中の症状には、以下のようなものがあります。
- 目がかすむ、片方の視力が低下する
- 体の片側がピリピリする、脱力する、しびれる
- 突然発症する激しい頭痛
- 吐き気がある
- 排尿や排便がうまくできなくなる
- 平衡感覚を失い、めまいやふらつきを感じる
- 意識の消失、意識障害
もし自分自身を含め、脳卒中の症状が現れた人がいたなら、様子を見ていてはいけません。
たとえ症状が軽くても、また一過性に症状が消えてしまっても、真剣に対処することをお勧めいたします。
脳卒中の影響を受けて脳細胞が死滅し始めると、わずか数分もしないうちに完全に脳細胞が死滅してしまいます。
死滅した脳細胞の機能を回復するためには、かなりの時間を要することもありますので、より迅速に対応が求められます。
一般的には、脳卒中を発症して病院に搬送されると、全身の状態を確認して、必要な検査を行いつつ、治療を開始します。
もし虚血性脳卒中、つまり脳梗塞であれば、血栓溶解剤を発症してから4.5時間以内に投与すれば、後遺症のリスクは減少します。
病院内で行う検査には、1時間は要すると考えられますので、発症から3時間程度以内に病院へ到着できるかどうかが重要になります。
脳卒中と思われるときの初期対応
これまでにも述べたように、脳卒中は通常一刻を争う病気です。
もし疑われるような症状が出現したのであれば、救急車を呼び、すぐに病院へ行きましょう。
脳卒中は、平衡感覚を失ったり、意識がなくなったりして、転倒する可能性があります。
自分や周りの人が脳卒中かもしれないと思ったら、以下の手順で対処することをお勧めいたします。
呼吸の状態や意識レベルの確認
最初に呼吸や循環、意識レベルの評価を行います。
まず呼吸をしているかどうか確認です。
こちらは胸の動きを見ることで、確認ができます。
もし意識がなく、かつ呼吸をしていない場合は、直ちに心肺蘇生を行います。
呼吸が苦しいと訴える場合は、ネクタイなど、首回りを中心に身体を締め付けている衣服を緩めましょう。
意識レベルは、呼びかけに応じるか、また痛み刺激に応じるかが、最初に確認しておくべきことです。
もし可能であれば、脈拍も確認しましょう。
救急隊に連絡する
脳卒中が疑わしい場合、次のステップは救急隊に連絡することです。
ただし、もしご自身に脳卒中の症状が認められる場合は、誰かに電話してもらいましょう。
救急隊が到着するまでの間は、できるだけ落ち着いてください。
救急隊が到着するまでは安全な姿勢で待機する
救急隊が到着するまでの待機中は、安全で快適な姿勢でいることを確認しましょう。
必要に応じて毛布で覆い、暖かくしてあげることも検討ください。
好ましくは、体の片側を下にして寝た状態で上半身を少しうえに上げ、吐いたときのために備えておくことも大事です。
脳卒中によって意識のレベルが悪いとき、吐いてしまうと気道の閉塞につながる恐れもありますので、迅速に対応します。
また誤嚥のリスクを減らすためにも、待機時に食べ物や飲み物を与えないようにすることも重要です。
なお、手足の麻痺が生じている場合は、身体を動かさないようにした方がよいでしょう。
容態が変化していないか、注意深く観察する
安全に横になることができれば、救急隊員が到着したときに備え、情報を集めておきます。
救急隊員には、症状やいつからその症状が始まったかを伝えられるようにしておきます。
もし発症した前後で倒れたり、頭を打ったりした場合は、必ずそのことを伝えてください。
そのほかにも、持病の有無、内服している薬剤の種類、アレルギーの有無などは、診療する医師に参考となる情報ですので、整理しておきます。
健康保険証と合わせ、お薬手帳も準備しておくとよいでしょう。
最初に症状が現れた時間をメモしておく
脳卒中を発症している人に、tPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)と呼ばれる血栓を破壊する薬を投与すると、症状を回復させたり、発症を食い止めたりできる可能性があります。
しかし、症状が現れてから4.5時間以内に投与しなければいけません。
したがって、発症した時刻はとても重要な情報ですので、救急隊員にできるだけ正確に伝えることができるようにしましょう。
まとめ
脳卒中の初期症状に気づくポイント、また初期対応について説明しました。
何より早期診断、治療がキモです。
いざと言うときにすぐに対応できるように、普段から意識しておきましょう。
ただもし初期対応が遅れてしまい、麻痺などの後遺症が残った場合、最近は再生医療等の最新医療技術を用いることで改善することも期待できます。
あきらめないで、主治医にご相談ください。
よくあるご質問
- 脳溢血の再発率は?
- 脳溢血は脳出血と同じ意味で用いられます。
脳出血では、1年再発率25.6%、5年再発率34.9%、10年再発率55.6%と報告されています。 - 脳出血の余命は?
- 脳出血を起こした30日後の生存率は85.9%、5年生存率は57.9%と報告され、平均余命は12年と計算されています。
発症年齢や基礎疾患、出血部位により個人差があります。
<参照元>国立循環器病研究センター|脳卒中・脳血管の病気|こんなときどうする?:https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/case/brain/
厚生労働省|消防庁からの情報提供:https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001043369.pdf
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