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脳卒中

 中大脳動脈基幹部梗塞とその影響とは

<この記事を読んでわかること>
脳血管の解剖が理解できる
中大脳動脈基幹部梗塞による症状がわかる
中大脳動脈基幹部梗塞が生活に与える影響について理解できる

中大脳動脈基幹部梗塞とは、脳を栄養する重要な血管である中大脳動脈の基幹部が梗塞し、広範囲に脳が壊死する可能性のある病気です。前頭葉・側頭葉・後頭葉がそれぞれ障害され、麻痺やしびれとともに、高次脳機能障害なども出現する可能性があります。この記事では、中大脳動脈基幹部梗塞のメカニズムや、出現する症状について解説します。

中大脳動脈基幹部梗塞の基本

中大脳動脈基幹部梗塞の基本
脳梗塞とは、脳を栄養する動脈が何らかの原因で閉塞し、脳細胞への栄養が供給できず、脳細胞が壊死してしまう病気です。
つまり、一言に脳梗塞といってもどの血管が閉塞するかで与える影響も異なります。

例えば、脳深部の非常に細い動脈(これを穿通枝という)が閉塞する脳梗塞をラクナ梗塞といい、梗塞範囲は非常に限定的です。
そのため、障害される部位にもよりますが、他の脳梗塞と比較してラクナ梗塞では神経所見が比較的少ないという特徴があります。

一方で、脳に流入する比較的太い動脈は、大脳の表層に位置する皮質や髄質、さらには脳深部に位置する尾状核・被殻・淡蒼球などの大脳基底核などを幅広く栄養しています。

不整脈などの心臓疾患が原因となり形成された血栓によって引き起こされる心原性脳梗塞や、長期間の動脈硬化によって血管壁にコブ(これをアテロームと呼ぶ)が形成され生じるアテローム性血栓性脳梗塞などによって、これらの太い動脈が閉塞するわけです。

脳を栄養する太い動脈とは?

では、脳を栄養する動脈とはどのような解剖なのでしょうか?

まず脳に分布する動脈は左右の内頚動脈と左右の椎骨動脈の計4本で、内頚動脈からは前大脳動脈、中大脳動脈が分岐し、椎骨動脈系は左右が合流して1本の脳底動脈となり小脳や脳幹部に枝を出した後、左右の後大脳動脈に分かれます。

前大脳動脈、中大脳動脈、さらには脳底動脈由来の後大脳動脈はそれぞれ交通動脈によって吻合し大脳動脈輪が形成され、左右の脳血管はここで交通し合っているわけです。

前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈は、そこからさまざまな枝を分岐し、脳の深部にも栄養を供給しているため、これらの動脈の基幹部で梗塞が生じると、それだけ脳梗塞の範囲も広範となります。

特に、中大脳動脈は最も脳梗塞が起こりやすい部位であり、また栄養している脳の範囲も広範であるため、起始部で完全閉塞が起こると大脳皮質と髄質そして基底核・内包などもすべて壊死に陥ります。
そのため、頭痛や嘔気・嘔吐などの症状とともに、麻痺やしびれ、意識障害、最悪の場合呼吸停止などさまざま神経障害をきたす可能性があり、注意が必要です。

梗塞が左大脳半球に与える影響

では、中大脳動脈基幹部梗塞が起こると具体的にどのような影響が生じるのでしょうか。

そもそも、ヒトの脳は左右で担っている機能が異なるため、左右どちらの脳が障害されるかで出現する症状も異なります。
右利きの人であれば基本的に左大脳半球が優位半球、右大脳半球が劣位半球であり、優位半球では言語的な理解能力や計算能力、劣位半球では空間認識能力や芸術的思考能力を担います。
そのため、右利きの人が左中大脳動脈基幹部梗塞をきたすと、右半身の麻痺やしびれとともに、両目が右方向を向く共同偏視、さらには失語症や失認症などの高次脳機能障害が出現するわけです。

一方で、多くの左利きの人にとっては左中大脳動脈基幹部梗塞は劣位半球の障害であり、右半身の麻痺やしびれは共通ですが、空間認識能力や芸術的思考能力が障害されることで半側空間無視や失認・失行などの高次脳機能障害が出現します。

また中大脳動脈基幹部梗塞のように広範囲な脳梗塞は脳に炎症を引き起こし、脳細胞における広範囲の浮腫をきたし、脳がパンパンに膨らんでしまいます。
脳は頭蓋骨という一定容積の器に入っているため、脳が浮腫を起こすことで脳そのものが圧迫され、その結果意識障害や、最悪の場合は呼吸中枢の存在する脳幹が圧迫されて呼吸停止が引き起こされます。

以上の理由からも、中大脳動脈基幹部梗塞はさまざまな神経症状をきたす脳梗塞であり、その被害も甚大です。

右片麻痺と失語症の日常生活への影響

上記で示したメカニズムから、右利きの場合、左中大脳動脈基幹部梗塞が起きると右片麻痺や失語症が生じます。
当然、右半身の麻痺は歩行や体位変換など、基本的な日常動作に大きな支障を与えるため、仕事などの社会生活はもちろんのこと、着替えや食事などにも大きな影響が出ます。

次に、失語症は言葉を紡ぎ出す筋肉が麻痺する構音障害とは異なり、言語に対する理解や認識が障害されることで、うまく言葉を理解できなくなったり、理解はできても言葉として表出できなくなる病気です。

失語症は、周囲の人はもちろん、家族や介護者とのコミュニケーションにも支障をきたすため、やはり与える影響は大きいです。

まとめ

今回の記事では、中大脳動脈基幹部梗塞の概要や症状について詳しく解説しました。
中大脳動脈は、脳血管の中でも最も梗塞を引き起こしやすい血管であり、かつ脳の広範囲を栄養する血管であるため、基幹部が梗塞すると被害も甚大です。
半身の麻痺や高次脳機能障害はその後の生活に大きな影響を与え、最悪の場合、意識障害による植物人間や呼吸停止を招くため、注意が必要です。
適切な治療が遅れれば後遺症として残ってしまい、現状ではリハビリテーションで症状の緩和・機能の維持を行うしか手立てはありません。

一方で、最近では「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
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よくあるご質問

中大脳動脈が詰まるとどうなる?
中大脳動脈は前頭葉・側頭葉・後頭葉と幅広く脳を栄養している血管であるため、中大脳動脈が詰まると広範囲に脳が障害されます。麻痺やしびれはもちろんのこと、意識障害や呼吸停止、高次脳機能障害などさまざまな神経症状が出現します。

中大脳動脈の支配域は?
中大脳動脈の支配域は、前頭葉の外側、頭頂葉の外側、側頭葉です。これらの部位の表層の白質や髄質、さらには深部に位置する大脳基底核や、運動機能をコントロールしている内包まで障害される可能性があります。

<参照元>
脳梗塞brain infarction|日本神経病理学会:https://www.jsnp.jp/shikkan/cerebral_2.htm
アテローム性中大脳動脈閉塞性疾患の梗塞メカニズムと急性期憎悪|J Stage:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/29/6/29_6_683/_pdf/-char/ja

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