<この記事を読んでわかること>
橋出血の定義と脳内での位置関係がわかる。
橋出血が引き起こす主な症状とその理由がわかる。
橋出血の診断方法と初期対応の重要性がわかる。
橋出血は脳幹の一部「橋」で起こる脳出血のことです。
橋は生命に直結する、呼吸や循環、意識の調節などの重要な機能を司っています。
この部位で出血が起こると、意識障害や呼吸困難などの重篤な症状を伴い、命に関わることもあります。
この記事では、橋出血の原因や症状、診断方法、早期対応の重要性、治療をわかりやすく解説しています。
橋出血の定義と脳内での位置関係
人間の脳は、大きく分けて「大脳半球」「小脳半球」、そして「脳幹」に分類されます。
このうち脳幹は、呼吸や血液循環、意識の維持など、生命活動に直結する重要な機能を担っています。
脳幹はさらに「中脳」「橋(きょう)」「延髄」の3つの部分から構成されています。
脳出血とは、脳の中の血管が破れて出血する状態のことを指し、その原因の多くは高血圧です。
そのほか、脳動静脈奇形(血管の生まれつきの異常)や、硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう:脳の血管にできる異常なつながり)、脳腫瘍に伴う出血、さらには抗血栓療法(血をさらさらにする薬)によって起こることもあります。
そして、脳幹の中でも「橋」で出血が起こるものを「橋出血(きょうしゅっけつ)」と呼びます。
橋出血が引き起こす主な症状とその理由
橋出血が起こると、以下のような症状が引き起こされます。
橋出血が引き起こす主な症状
体に現れる主な症状としては、片側の筋力が低下する片麻痺や、顔の筋肉が垂れ下がったり動かしづらくなる顔面神経麻痺があります。
また、顔の片側にしびれやチクチクといった異常な感覚が生じることもあります。
体の片側全体に感覚がなくなる半側感覚喪失や、言葉がうまく話せなくなる構音障害、飲み込むことが困難になる嚥下障害も見られることがあります。
さらに、呼吸がしづらくなる呼吸困難、手足の動きがぎこちなくなる運動失調、ふらつきやめまい、音が聞こえにくくなる難聴など、さまざまな神経症状が現れる場合があります。
感情のコントロールができなくなり、突然泣き出したり笑い出したりしてしまう情動調節障害がみられることもあります。
重症になると、両腕と両脚が動かなくなる四肢麻痺や、意識を失うといった深刻な症状につながることもあります。
目や視覚に関する症状としては、物が二重に見える複視(これは第六脳神経麻痺が原因であることが多い)や、眼球が繰り返し不随意に動く眼振、両目を同時に一方向へ動かせなくなる共同注視麻痺、さらに視覚に関する点滅への反応異常などが報告されています。
なぜ橋出血によってこのような症状が起こるのか
片麻痺や顔面神経麻痺、異常な感覚は、脳や脊髄の中で運動や感覚をつかさどる神経がダメージを受けることで起こります。
たとえば、脳梗塞や脳出血などでその部分の神経がうまく働かなくなると、反対側の手足や顔に力が入らなくなったり、しびれを感じるようになります。
構音障害や嚥下障害は、舌や喉の筋肉を動かす神経が影響を受けるために起こります。
言葉がはっきりしなかったり、食べ物や水分をうまく飲み込めなくなることがあります。
呼吸困難は、呼吸を調整している脳の部分や呼吸筋に関係する神経が障害されると、息を吸ったり吐いたりする動きがうまくできなくなるために生じます。
運動失調やめまい、バランスの悪さは、小脳や内耳(平衡感覚を司る部分)が関係しています。
これらの機能がうまく働かないと、まっすぐ歩けなかったり、ふらつきが出たりします。
難聴は、耳から脳へ音を伝える経路に障害が起きた場合に見られます。
情動調節障害は、感情をコントロールする脳の部位(前頭葉など)がうまく働かなくなると、自分の意志と関係なく泣いたり笑ったりしてしまいます。
四肢麻痺や意識喪失は、脳や脊髄の広い範囲が強く障害されている場合に見られる、重い神経の症状です。
視覚の症状(複視、眼振、共同注視麻痺、点滅への反応異常)は、目の動きを調整する脳の神経(脳神経)や視覚を処理する脳の領域が障害されたときに現れます。
これにより、両目の動きがバラバラになったり、見え方に違和感が出るのです。
橋出血の診断方法と初期対応の重要性
脳出血は、いつ、どのように起こり、どんな症状が現れてきたのか、といった情報がとても大切です。
橋出血の症状は先にご説明しました。
そうした症状があるために橋出血が疑われる場合には、医師はまず血圧や脈拍などのバイタルサインを確認し、その後心臓や呼吸の音をチェックします。
引き続き、神経学的に診察を行い、意識レベルや会話が可能かどうか、運動や感覚の麻痺がないかを診察します。
画像検査では、CT検査が特に有用です。
脳出血の場合には、発症早期から出血をはっきりと捉えられることが多いので、特に重要な検査となり、確定診断となります。
脳出血の後遺症を残さないためにも、初期対応が重要となります。
例えば、脳卒中を疑う症状を簡単に表現したものに「FAST(Face Arm Speech Time:ファスト)があります。
これは、Face(顔の麻痺)、Arm(腕の麻痺)、Speech(言葉の障害)を表しています。
この3項目のうち、1つでも当てはまる場合には、脳卒中の可能性が高く、その診断的中率は約80%とも言われています。
さらに、Timeは発症時間を示しています。
発症に気づいたら、発症した時間を確認して119番通報することが大切です。
まとめ
今回の記事では、橋出血のメカニズムと症状の特徴について解説しました。
橋出血は重度の場合には生命に関わる病態であり、後遺症も残る可能性が高いです。
こうした後遺症に対するリハビリをより効果的に行うために、ニューロテックや脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療「リニューロ®」という治療法も提供されています。
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よくあるご質問
- 脳幹出血のメカニズムは?
- 高血圧などが原因で脳幹内の細い血管が破れることで出血が起こります。
脳幹は生命維持に関わる神経が集まっているため、出血すると意識障害や呼吸障害など重篤な症状を引き起こすことがあります。 - 橋出血ではどちらが麻痺しますか?
- 体のどちら側が麻痺するかは、出血した部位によって異なります。
橋出血では、通常は出血した側と反対側の手足が麻痺します。
これを片麻痺といいます。
ただし、顔面神経が障害されると、顔面は出血側に麻痺が出ることもあります。
(1)脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕:https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf
(2)Pontine Stroke: What It Is, Causes, Symptoms & Treatment:https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/pontine-stroke
(3)脳卒中|病気について|循環器病について知る|患者の皆様へ|国立循環器病研究センター:https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2/
・脳梗塞、脳出血(脳卒中)|KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト:https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000326.html
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