<この記事を読んでわかること>
・エダラボンとtPA治療の違い:どちらが適しているのか?
・エダラボン治療と手術療法の併用は可能か?
・脳梗塞後のリハビリとエダラボン治療の相乗効果
この記事ではエダラボン治療と他の脳梗塞治療法との比較について解説します。
エダラボンは脳梗塞急性期の治療薬として使用され、フリーラジカルを除去することにより神経を保護する作用があります。
さらに、抗血小板薬や抗凝固薬などの従来の薬物と併用可能であることが特徴です。
エダラボンとtPA治療の違い:どちらが適しているのか?
この記事ではエダラボンとtPA治療の違い:どちらが適しているのか?について解説します。
両剤は、脳梗塞の治療に用いる代表的な薬剤です。
それぞれ異なる作用機序と適応症を持つため、どちらを投与するかは、患者さんの病態や発症時間によって異なります。
tPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)は血栓溶解薬であり、血管を詰まらせた血栓を溶かして血流を再開させる作用を有します。
tPAは治療開始時間が非常に重要で、発症から4.5時間以内の投与が推奨されます。
一方で、出血のリスクも伴うため、全ての患者さんに適用できるわけではありません。
エダラボンは、脳細胞の保護作用を持つ薬剤です。
tPAのように血栓を溶かすのではなく、脳梗塞によって発生するフリーラジカルの働きを抑制することで脳細胞の損傷を抑制する働きがあります。
tPAの治療期間が短いのに対し、エダラボンは発症後24時間以内の投与開始が可能です。
そのため、tPAの適応とならない患者さんや、tPA治療後に追加で脳細胞の保護をしたい場合に用いられます。
また、さまざまな脳梗塞タイプに適用が可能であることも特徴です。
エダラボン治療と手術療法の併用は可能か?
この記事ではエダラボン治療と手術療法の併用は可能か?について解説します。
エダラボンは、脳梗塞によって発生するフリーラジカルを抑制し、神経細胞の損傷を抑制する効果が期待される薬剤です。
一方、手術療法は、主に血管内治療や開頭手術などを指し、血栓を取り除いたり、血管を拡張させたりすることで、血流を改善する治療法です。
これらの治療を併用することは可能です。
例えば、血管内治療で血栓を除去した後にエダラボンを投与することで、再灌流障害を軽減し、脳細胞の保護効果を高めることが期待できます。
広範囲な脳組織の保護が期待でき、後遺症の軽減につながる可能性が高くなるでしょう。
ただし、エダラボンの効果は脳梗塞の病型や重症度によって異なる可能性があるため、個々の患者さんの状況に応じて適切に判断する必要があります。
また、エダラボン治療と手術併用による大規模な臨床試験はまだ十分に行われていないため、効果については今後さらなる研究結果が待たれます。
脳梗塞後のリハビリとエダラボン治療の相乗効果
この記事では脳梗塞後のリハビリとエダラボン治療の相乗効果について解説します。
エダラボンは脳保護薬としての機能を有するだけでは無く、壊死を免れた回復可能な神経組織を保護する機能を有します。
したがって、エダラボンが神経細胞の生存を促進し、神経可塑性(神経回路が正常に変化する能力)を高めることで、リハビリテーションによる神経回路の再構築を促進する相乗効果が得られる可能性があります。
結果、麻痺や感覚障害などの後遺症を軽減できる可能性があります。
その他、期待できる効果は以下の通りです。
エダラボンは脳梗塞による脳内の炎症を抑制する働きがあるので、神経細胞の損傷をさらに防ぎ、リハビリテーションの効果を高めることが期待できます。
さらに、エダラボンは脳血流を改善する作用を有するので、脳組織への酸素供給が改善され、リハビリテーションの効果がより促進される可能性もあるでしょう。
しかしながら、エダラボン治療とリハビリテーションの相乗効果についての大規模な臨床試験はまだ十分に行われていないため、今後さらなる研究が必要です。
まとめ
今回の記事では、エダラボン治療と他の脳梗塞治療法との比較について解説しました。
脳梗塞は神経細胞が壊死する疾患ですが、さまざまな治療があります。
しかしながら、壊死した神経細胞を再生させる確実な治療は無いのが現状です。
そのため、再生医療は期待の持てる治療法です。
再生治療として、脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」があります。
これらの治療法は、脳梗塞の予後改善をもたらす新たな治療として、期待が持てるでしょう。
よくあるご質問
- 脳梗塞の治療方法にはどのようなものがありますか?
- 主に薬物療法と外科治療があります。
薬物療法は、発症4.5時間以内の超急性期にt-PAを静注し血栓を溶解します。
その後、抗血小板薬や抗凝固薬を用いて血栓ができるのを予防します。
外科治療として、カテーテルを用いた血管内治療があり、血栓を直接除去して血流を再開させます。
さらに、血管吻合術やステント留置術などの治療もあります。 - エダラボンは脳梗塞にどのような効果があるのでしょうか?
- 脳梗塞急性期の治療薬として用いられ、主にフリーラジカルを除去することより脳の保護効果を発揮します。
脳梗塞によって生じる活性酸素などの有害物質の働きを抑制する作用があるので、まだ壊死していない回復可能な脳内の神経組織を保護します。
第35回日本脳卒中学会:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/32/6/32_6_572/_pdf
日本薬局方:https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00059718.pdf
札幌白石記念病院:https://ssn-hp.jp/cms/department/ns8lmp0000000fh9.html
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