・高次脳機能障害とは
・注意障害と遂行機能障害について
・高次脳機能障害と再生医療
脳卒中や交通事故などの後遺症で知られる高次脳機能障害には様々な症状があります。
高次脳機能障害は日常生活だけでなく仕事にも大きく影響しますが、麻痺のように外からはっきりとは見えにくいため、周囲の配慮も必要です。
この記事では高次脳機能障害の中でも注意障害と遂行機能障害について解説します。
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、脳卒中や外傷(交通事故や頭部打撲)により、認知機能や注意力、記憶などに問題が起きることを指します。片麻痺や失語のように外からみて分かりやすいものではなく、本人や周囲の理解が重要となってきます。
高次脳機能障害は様々なものがあり、この記事では注意障害と遂行機能障害についてリハビリテーションの話も交えながら解説します。
注意障害とは
注意障害とは、物事に意識を向けることができなくなる障害です。このような障害には以下のようなものがあります。
「持続性注意障害」
持続性注意障害の低下があると、物事に持続して取り組むことができず、いわゆる「集中力がない」状態となります。他にもミスが多かったり、疲れやすかったりします。
「配分性注意障害」
2つ以上のことを同時に行うために、注意を複数のものに向けることが難しくなります。会話をしながらメモをとる、車の操作をしながら周囲に気を配るなど、「ながら作業」ができなくなります。
「転換性注意障害」
注意を一つのものから他のものに切り替えることができなくなります。作業中に他の必要性が出てきても、作業を終えることができないなどです。
「選択性注意障害」
状況判断の中で必要な対象に、注意を向けることができなくなります。多くの物の中から目的の物を探すことができない、隣での作業で気になり自身の作業が進まないなどが具体的な例です。
注意障害のリハビリテーション
注意障害に対するリハビリテーションには直接的注意訓練、メタ認知、二重課題訓練などがあり、どの注意がどの程度障害が起きているのかによって方法が選択されます。
パズルや間違い探し、計算、調べ物など日常生活に近いものも訓練として有効です。脳卒中ガイドラインでは。コンピューターを用いた訓練、attentionprocesstraining、代償法の指導、身体活動などを行うことも妥当としています。
評価や訓練を行う際には、他のものに注意が向かないような環境設定も重要と言えます。
遂行機能障害とは
遂行機能障害は、目的をもった一連の動作について効率よく実施するために、物事を順序立てて考え実行することができなくなる障害です。
注意障害よりもより応用的な機能であるために、注意機能は正常であることが前提とされます。しかし、両者を厳密に区別することは簡単なことではありません。
遂行機能は我々の生活の中で、あらゆる所で能力を発揮しています。
例えば、買い物一つとっても、何が必要なのか、どうやってどこへ買いに行くのか、商品はどこにあるのか、会計の方法はなど、複数の課題でなりたっています。
遂行機能障害はこの順序立てと順序に沿った実行が難しくなります。
遂行機能障害のリハビリテーション
遂行機能には多くの要素が関わっているので、具体的にどこが苦手なのかを見つけながらリハビリテーションを行っていくことが重要です。
必要な行動や動作を練習する直接訓練や、手順を明らかにできるようなマニュアルの利用も有効と言えます。パズルなどのワークや、キットを組み立てる、日常生活動作を練習するなどもよいでしょう。
認知リハビリテーションの問題解決訓練(複雑な過程を、より解決しやすいように分解することで目的を達成する)は、外傷性脳損傷によるアプローチとして有効性は報告されておりますが、脳卒中ではまだ明らかではありません。
高次脳機能障害と再生医療
高次脳機能障害は麻痺のように外からはっきりと見えやすい後遺症ではありません。
しかし、ご本人だけでなく家族にも負担がかかる場合が多くあります。現在のところ、周囲の人によるサポートや環境調整、リハビリテーションが主な対処法となります。
高次脳機能障害も脳の障害であるので、再生医療に期待したいです。
脳卒中に対する幹細胞移植は麻痺の改善に有効であるという報告があります。当院でも幹細胞点滴による治療を行っており、さらに並行してリハビリを行う再生医療×同時リハビリ™により、より高い効果を目指しています。
まとめ
高次脳機能障害には様々なものがあり、その中でも注意障害と遂行機能障害について、リハビリのことも交えて解説しました。
高次脳機能障害を持つ人がその人らしく生きられるように、周囲のサポートやリハビリテーションだけでなく、再生医療など新規の治療にも期待したいです。
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