点滴×同時刺激リハビリで神経障害の後遺症を改善へ

リハビリ・その他

 進行性核上性麻痺における後遺症改善の可能性

<この記事を読んでわかること>

タウタンパク質の異常蓄積が神経細胞の機能障害を引き起こし、進行性核上性麻痺(PSP)の後遺症を進行させるメカニズムがわかる。
幹細胞治療やタウ阻害薬などの最新治療法が、PSPの症状進行を遅らせる可能性を持つことがわかる。
リハビリテーションが、後遺症の軽減と患者の生活の質向上に大きな役割を果たすことがわかる。


進行性核上性麻痺(PSP)は、神経細胞が変性することによって、転びやすくなる、眼球運動障害、構音障害・嚥下障害、さらには認知症などの後遺症が生じる難病です。
本記事では、後遺症が発生するメカニズムやタウタンパク質の異常蓄積の影響について説明し、最新の治療法やリハビリテーション、幹細胞治療についても解説します。

後遺症が発生する機序から見た神経系の変化を探る

後遺症が発生する機序から見た神経系の変化を探る
進行性核上性麻痺(PSP)は、大脳基底核や脳幹、小脳の神経細胞が変性する神経変性疾患です。
この疾患の特徴的な症状として、転びやすくなる、下の方がみにくかなる、喋りにくくなる、飲み込みづらくなるといったものがあります。
その他、転びやすさや歩行障害、眼球運動障害もみられます。
認知症を併発することもあります。
これらはすべて神経系の変化が原因となっています。
神経系の変化の要因とされているのはタウタンパク質の異常蓄積で、神経細胞内にタウが異常に蓄積し、細胞が正しく機能しなくなることで、神経伝達が妨げられ、症状が進行します。
また、PSPでは特に視覚と運動を統合する脳領域に影響が及ぶため、日常生活においてもバランス感覚の低下や転倒リスクが高まります。
この神経変化が後遺症の原因となり、症状の進行とともに日常生活が著しく制限されるようになります。
後遺症が発生するメカニズムを理解することで、改善のための治療法やリハビリテーションの効果を探ることが重要です。

改善を目指すための最新の治療法と研究成果

PSPの根本的な治療法はまだありません。
パーキンソン病治療薬や抗うつ薬が治療薬として用いられますが、効果は一時的です。
PSPの治療法について、現在も多くの研究が行われており、特にタウタンパク質に焦点を当てた治療が注目されています。
PSPは、脳内にタウタンパク質が異常に蓄積することによって神経細胞がダメージを受けるため、タウの蓄積を抑えることが治療の鍵とされています。

1. タウ阻害薬の開発

タウタンパク質の蓄積を抑える薬物の開発が進められており、その中でもタウ阻害薬は最も期待されている治療法の一つです。
タウ阻害薬は、タウの異常な凝集を防ぐことで、神経細胞へのダメージを減少させ、症状の進行を遅らせる可能性があります 。
現在いくつかの候補薬が臨床試験段階にあり、早期の効果が示されていますが、長期的な安全性や有効性についてはさらに検証が必要です。
タウ阻害薬の例として、MK-8719やBIIB092といった薬剤が挙げられ、これらはPSPだけでなく、他のタウ関連疾患にも応用可能な治療法として期待されています 。

2. タウワクチンの開発

もう一つのアプローチとして、タウに対するワクチン療法が注目されています。
タウワクチンは、免疫システムがタウタンパク質を異物として認識し、これを排除することを目的としています。
これにより、異常なタウの蓄積を抑える効果が期待されており、すでにいくつかの動物実験や初期臨床試験で成果が報告されています。
最近の研究では、タウワクチンの投与によって、脳内のタウ蓄積を著しく減少させる効果が確認されており、今後さらなる臨床試験が進行中です。

3. 幹細胞治療

神経変性疾患の分野では、幹細胞治療の可能性がますます注目されています。
幹細胞治療は、損傷を受けた神経細胞を再生させることを目指した治療法で、PSPのような疾患にも応用が期待されています 。
特に、間葉系幹細胞(MSC)の研究が進んでおり、これらの幹細胞を用いることで、脳内の神経細胞を再生し、症状の進行を抑える効果が期待されています。
例えば、神経幹細胞を損傷した中脳や基底核に移植することで、神経伝達機能を改善する試みが行われており、動物実験では一定の成果が報告されています。

後遺症軽減に向けたリハビリテーションについて

進行性核上性麻痺のリハビリテーションは、後遺症の軽減や生活の質向上に大きく貢献します。
特に、バランス訓練や筋力強化のプログラムが重要であり、患者の運動機能の維持や転倒防止に効果を発揮します。
加えて、音声や視覚に関するリハビリも、眼球運動障害や発話困難の改善を目指して行われます。
例えば、視覚トレーニングやコミュニケーション支援ツールを使ったアプローチが効果的であることが報告されています。
患者が自立して日常生活を送るためには、早期からの継続的なリハビリテーションがとても大切です。

まとめ

進行性核上性麻痺に対する根治療法は未だ確立されていませんが、神経変性のメカニズムの解明が進む中、症状の進行を遅らせたり後遺症を軽減するための研究が進んでいます。
リハビリテーションの重要性は、後遺症の軽減と生活の質向上に大きな役割を果たしており、患者の個々のニーズに応じた治療とケアが求められます。
今後、さらに研究が進むことで、新たな治療法が実用化されることが期待されています。
当院脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
リニューロ®では、同時刺激×神経再生医療®、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて狙った脳や脊髄の治る力を高めた上で、神経再生リハビリ®を行うことで神経障害の軽減を目指します。
進行性核上性麻痺などの変性疾患に対しても、再生医療とリハビリの組み合わせが効果を発揮することが今後期待されます。

よくあるご質問

進行性核上性麻痺は改善する方法はありますか?
進行性核上性麻痺(PSP)には現在、根治療法はありませんが、症状を改善するための治療法があります。
特に、タウタンパク質の蓄積を抑える薬や幹細胞治療の研究が進められています。
また、リハビリテーションによりバランスや運動機能の改善を目指すことも可能です。

進行性核上性麻痺の生命予後は?
進行性核上性麻痺(PSP)の予後は個人差がありますが、平均的な生存期間は発症から約5〜10年とされています。
症状は徐々に進行し、特に歩行困難や転倒による合併症が生命予後に影響します。
適切な医療ケアとリハビリテーションを受けることで、生活の質を向上させることが可能です。

<参照元>
進行性核上性麻痺(指定難病5):https://www.nanbyou.or.jp/entry/4114
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