<この記事を読んでわかること>
脳卒中や脳外傷後の患者さんが、身体機能が回復していても服薬や予定管理でつまずきやすい理由がわかる。
高次脳機能障害を疑う際に、看護師が日常場面で確認したい観察ポイントや記録の考え方がわかる。
環境調整や声かけ、家族への説明、多職種との連携など実践的な支援方法がわかる。
脳卒中や脳外傷後の患者さんの中には、身体面は自立していても、服薬管理や予定の把握がうまくできない方がいます。その背景には高次脳機能障害が関係している場合があります。この記事では、自己管理が難しくなる理由とともに、看護師が行いたい観察のポイントや具体的な支援方法、家族への説明の工夫について解説します。
高次脳機能障害の患者さんが自己管理できないのはなぜ?
脳卒中や脳外傷後の患者さんの中には、歩行や食事などの身体機能は回復しているにもかかわらず、服薬管理やスケジュール管理がうまくできない方がいます。
その背景には高次脳機能障害が関係している場合があります。
高次脳機能障害とは、けがや病気などによる脳の損傷によって記憶・注意・計画・判断・感情のコントロールなどの機能に障害が生じた状態です。
代表的な症状としては以下のようなものがあります。
- 記憶障害:新しい出来事を覚えることが難しい
- 注意障害:集中力を保つことが難しい
- 遂行機能障害:計画的に行動することが難しい
- 病識低下:自分の障害を十分に認識できない
例えば記憶障害がある場合は「薬を飲んだことを忘れる」、注意障害がある場合は「服薬の途中で別のことに気を取られてしまう」という問題がみられます。
さらに、遂行機能障害がある場合は「複数の薬を決められた順序で管理できない」という困りごとも生じます。
病識が低下している患者さんでは、自身の障害を十分に理解できず、「自分は問題なくできている」と認識していることも少なくありません。
看護師から見ると「説明したのに守れない」「何度言っても同じことを繰り返す」と感じる場面があります。
しかし、これは本人の意欲不足ではなく、脳機能の障害によって生じている可能性があります。
まずは「できない理由」を探る視点を持つことが、高次脳機能障害のある患者さんへの支援の第一歩です。
看護師が観察したいポイントと記録のコツ

高次脳機能障害では、症状が外見から分かりにくいため、「見えない障害」と呼ばれることがあります。
具体的には、高次脳機能障害の患者さんでは、服薬忘れや危険行動、スケジュール管理の困難などが生活上の問題として現れるケースもみられます。
そのため、看護師は患者さんの日常行動を丁寧に観察し、具体的な事実として記録することが重要です。
観察したいポイントとしては、以下のような項目が挙げられます。
- 服薬指示を理解できているか
- 同じ質問を繰り返していないか
- 予定や約束を覚えているか
- 注意が持続しているか
- 危険行動がみられないか
- 自身の障害をどの程度理解しているか
これらの観察結果は、看護問題の抽出や看護計画の立案にも重要な情報となります。
高次脳機能障害の患者さんでは、場面によってできたりできなかったりすることがあります。
そのため、「認知機能が低下している」といった抽象的な記録ではなく、「服薬説明後5分で内容を再確認すると答えられなかった」「リハビリ予定を説明したが、時間になっても病室で過ごしていた」など、具体的な行動として記録すると、多職種間で情報共有しやすくなります。
また、高次脳機能障害では疲労やストレスによって症状が目立ちやすくなることも知られています。
患者さんが混乱しやすい場面や失敗が増える時間帯を把握することも、看護師の重要な観察項目です。
服薬支援・環境調整・家族説明のポイント
高次脳機能障害のある患者さんへの支援では、「できない部分を補う環境づくり」が重要になります。
服薬管理では、一包化や服薬カレンダーの利用、スマートフォンのアラーム設定などの外的補助手段を活用します。
一度に多くの情報を伝えるのではなく、「朝食後にこの薬を飲みましょう」
など短く具体的な説明を行うことも大切です。
服薬支援は単に飲み忘れを防ぐためだけではありません。
患者さんが安全に自己管理できる範囲を評価し、必要な支援方法を検討するための重要な看護介入の一つです。
さらに、環境調整を行い、患者さんが安心・安全に活動できるよう周囲の環境を整え、生活の円滑化を図ることも大切です。
環境調整では、情報量を減らし、手順をできるだけ単純化します。
例えば、これらの工夫が挙げられます。
- 服薬場所を固定する
- 必要物品を同じ場所に置く
- 毎日同じ時間に行う
このような工夫は、患者さんの混乱を軽減する助けになります。
声かけの際には、失敗を責めるのではなく、成功した行動を評価することも重要です。
高次脳機能障害の患者さんは失敗体験を重ねることで自信を失いやすく、意欲低下につながることがあります。
家族は「身体は元気になったのになぜできないのか」と戸惑うこともあります。
そのため看護師は、「脳の障害によって忘れやすくなっています」「工夫すればできることも増えていきます」など、障害の特徴と支援方法を患者さんや家族に分かりやすく説明することが大切です。
退院後の生活を見据えて、医師・作業療法士・言語聴覚士・医療ソーシャルワーカーなどと連携しながら支援方法を検討することで、患者さんと家族の負担軽減につながります。
まとめ
高次脳機能障害では、身体機能が回復していても服薬管理やスケジュール管理が難しくなることがあります。
高次脳機能障害では自己管理が難しくなることがあるため、患者さんの特性に応じた自己管理支援を看護計画に反映させることが重要です。
また、看護師は「できない理由」を障害の特性として理解し、具体的な観察と記録を行うことが重要です。
環境調整や外的補助手段の活用、家族への適切な説明を通じて、患者さんが安心して生活できるよう支援していきましょう。
ニューロテック
近年では、脳卒中や脳外傷後に生じる神経障害に対して、再生医療やリハビリテーションを組み合わせた新しい支援の考え方が注目されています。
ニューロテック®では、脳卒中や脊髄損傷などによる神経障害に対して、再生医療「リニューロ®」や神経再生リハビリ®などを組み合わせ、一人ひとりの状態に合わせた回復支援を目指しています。
高次脳機能障害による服薬管理や予定管理の難しさに対しても、本人の努力だけに頼るのではなく、医療機関やリハビリ専門職と連携しながら、生活しやすい環境づくりや継続的な支援を行うことが大切です。
退院後の生活や服薬管理に不安がある場合は、早めに専門家へ相談し、患者さんに合った支援方法を一緒に考えていきましょう。
よくあるご質問
- 身体は元気そうなのに、なぜ退院後の生活で困りごとが増えることがあるのでしょうか?
- 歩行や食事が自立していても、段取りを考える力や状況判断、約束を覚えておく力などに影響が残ることがあります。そのため、見た目では分かりにくい困難が日常生活の中で表面化する場合があります。
- 看護師がチームで情報共有する際に意識したいことはありますか?
- 印象や主観だけで判断せず、実際に起きた行動や場面を具体的に共有することが重要です。共通認識が生まれやすくなり、職種ごとの対応のばらつきを減らすことにつながります。
(1)高次脳機能障害を理解する|高次脳機能障害情報・支援センター:
https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/rikai/
(2)高次脳機能障がいのある方への支援ヒント集|大阪府障がい者自立支援協議会:
https://www.rehab.go.jp/application/files/4416/1794/8794/zennbunn-hinntoshu.pdf
(3)高次脳機能障害―心で支えるリハビリテーション―|J-STAGE:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/32/3/32_360/_pdf
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