・脊髄空洞症の原因や症状がわかる。
・キアリ奇形や外傷との関連性がわかる。
・初期症状を見逃さないためのポイントと治療法がわかる。
脊髄空洞症は、脊髄内に空洞ができてしまい、そこに脳脊髄液という液体が溜まることで、感覚障害や筋力低下などを引き起こす進行性の病気です。
本記事では、キアリ奇形や外傷などの原因、初期症状や重症化のサイン、早期発見の重要性、そして治療法について詳しく解説します。
感覚の異常やしびれを感じたら早期受診をすることをおすすめします。
脊髄空洞症の主な原因:キアリ奇形や外傷との関係
脊髄空洞症とは、脊髄の中に大きな空洞ができ、その中に脳脊髄液という脳や脊髄を外部の衝撃から守っている液体が溜まってしまう病気のことです。
溜まった脳脊髄液が内部から脊髄を圧迫することによって、いろいろな症状が現れてしまいます。
脊髄空洞症の原因としては、脊髄そのものやそれを取り巻く膜などの炎症(癒着性脊髄くも膜炎)、あるいは腫瘍、脊髄梗塞や出血、外傷、そしてさまざまな奇形があります。
その奇形の中でもキアリ(Chiari)I型奇形と、外傷との関係は以下のようになります。
- キアリ奇形
キアリ奇形は、後頭部の奥にある小脳の一部が、生まれつき脊髄の方へ、下へと落ち込んでいる状態のことです。
頭蓋骨の一部である後頭骨の形成が不十分であることによって、後頭蓋窩(こうとうがいか;脳幹や小脳などを収めている部分)の体積が小さくなり、小脳や脳幹部が押し出されることで起こります。
この異常により、脳脊髄液の正常な循環が妨げられ、脊髄空洞症が進行するリスクが高まります。
キアリ奇形がある場合、症状がなくても定期的な検査を受けることが重要です。 - 外傷
外傷による脊髄損傷によって、脊髄の実質がむくんだり、壊死したり、瘢痕化することで、髄液の流れが妨げられてしまい、空洞が生じます。
外傷後の脊髄空洞症は、事故や転倒などの物理的な衝撃が原因となることが多く、症状が出るまでに時間がかかる場合があります。
外傷後に感覚異常や筋力低下を感じた場合は、早急に神経内科や整形外科を受診しましょう。
症状の特徴:感覚障害、運動麻痺、全身の違和感
それでは、脊髄空洞症の症状について解説します。
症状は、まずは片側の腕の感覚障害や脱力感で始まることが多いです。
その後、重苦しさや痛み、不快なしびれ感もあります。
脊髄空洞症の主な症状は、空洞のある脊髄領域の皮膚において、温痛覚を含む表在的な感覚障害があることです。
例えば、ものの温度や痛みがわからなくなるため、やけどや怪我をしていてもわからないという問題が生じます。
一方、振動を感じることや関節がどこに位置しているかを認識する感覚は保たれます。
また、左右差があることも特徴です。
病気が進行すると、しびれや筋肉が痩せ細ってしまう、手足の脱力感、突っ張り感といった症状が出ます。
このような症状は、脊髄空洞症ができた部位によって場所が異なります。
空洞が大きくなるにつれて、脳神経障害や関節障害、発汗の異常もみられてくるようになります。
初期症状と重症化のサインを見逃さないために
脊髄空洞症の初期症状は、片側の腕の感覚障害や脱力、重苦しさや痛み、しびれ感などがあります。
脊髄空洞症は、適切な治療を行わないと徐々に症状が進行してしまうことが懸念されます。
そのため、手足や体幹の感覚障害や筋力低下、自律神経障害や脳神経症候(めまい、しびれ、歩きにくい、しゃべりにくい、ふるえ、 気を失うなど)がみられる場合には、脊髄空洞症の可能性もあるため、脳神経外科や神経内科を受診するようにしましょう。
脊髄空洞症は進行性の病気であり、放置すると回復が難しい場合があります。
以下の行動を心がけると良いでしょう。
- 異常を感じたら早めに受診する
初期の感覚異常や痛みなど、些細な症状でも神経内科や整形外科を受診しましょう。 - 定期的な健康チェック
先天性異常(例:キアリ奇形)を指摘されたことがある場合、定期的に医師の診断を受けることが推奨されます。 - MRI検査を活用する
脊髄空洞症の診断にはMRIが有効です。
専門医の診断を受けると正確な情報が得られます。
もしも脊髄空洞症と診断された後は、定期的に受診するようにしましょう。
脊髄空洞症と診断された場合には、以下の対応が行われることがあります:
- しびれ感を和らげる薬剤を用いる。
- 後頭蓋窩減圧術(キアリ奇形が原因の場合)。
- くも膜下腔短絡術(髄液の流れを改善する手術)。
脊髄空洞症は進行性の病気であり、放置すると回復が難しい場合があります。
早期発見と適切な治療が、生活の質を維持するカギとなります。
まとめ
脊髄空洞症は、脊髄内に液体が溜まり空洞ができる病気で、感覚障害や筋力低下、痛みが主な症状です。
原因にはキアリ奇形や外傷などがあり、症状は徐々に進行します。
初期症状として、片側のしびれや痛み、温度感覚の低下が現れるため、異常を感じたら早期に神経内科や整形外科を受診しましょう。
MRI検査が診断に有効で、治療には手術や薬物療法が行われます。
早期発見と定期的な健康チェックが、症状の進行を防ぐ鍵となります。
こうした脊髄空洞症などによる神経障害に対しても、再生医療がその症状を改善するために役立つ可能性があります。
当院ニューロテックメディカルでは、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』を、リニューロ®と定義しました。
このリニューロ®は、同時刺激×神経再生医療®を用いて、『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』です。
また、その治療効果を高めるために骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリ®の併用をお勧めしています。
ご興味のある方は、ぜひ当院までご連絡くださいね。
よくあるご質問
- 脊髄空洞症の症状は?
- 脊髄空洞症の主な症状は、片側の手足の感覚障害(温痛覚の低下)、手足のしびれや脱力、筋肉の萎縮などです。
進行すると脳神経症状や自律神経障害も現れることがあります。 - 脊髄空洞症の死亡率は?
- 脊髄空洞症そのものはゆっくりと進行し、まれに症状が進んだ後に停止あるいは改善することもあります。
そのため、脊髄空洞症そのものによる死亡率は低いと考えられます。
脊髄空洞症は、放置すると皮膚感覚の低下によるやけどや怪我などの重篤な症状や合併症を引き起こすリスクがあります。
早期発見と適切な治療が重要です。
<参照元>
脊髄空洞症(指定難病117):https://www.nanbyou.or.jp/entry/283
E.キアリ奇形 日本小児神経外科学会:https://jpn-spn.umin.jp/sick/e.html
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