<この記事を読んでわかること>
・肥満と脳梗塞の関係がわかる
・肥満と生活習慣病の関係がわかる
・生活習慣病によって動脈硬化が進むメカニズムがわかる
肥満は高血圧や糖尿病・高脂血症などの生活習慣病の発症リスクを増大させることが知られています。
さらに、これらの疾患はそれぞれが動脈硬化の進展の原因となり、血管が固く脆く変化することで脳梗塞にも罹患しやすくなります。
この記事では、 太ると脳梗塞のリスクが上がるメカニズムと対策について解説します。
肥満と脳梗塞の関係:なぜ肥満が脳梗塞のリスクを高めるのか?
これまでの多くの研究によって、肥満と脳梗塞の間には強い正の相関関係があることが判明しています。
対象者31万人に及ぶアジア太平洋の33のコホート研究のメタ分析では、BMIの増加に伴い脳梗塞のリスクも増加すると報告しています。
BMIとは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で算出可能な、肥満度を示す指数です。
また、国内で行われた大規模研究「Japan Arteriosclerosis Longitudinal Studt:JALS」でも、心血管病の既往がない成人においてBMIの増加に伴い脳梗塞の発症リスクが増大することが報告されています。
肥満によって脳梗塞が発症するメカニズムは実に多様ですが、主に下記の4つです。
- アディポサイトカインの分泌とアディポネクチンの分泌抑制
- 高血圧の悪化
- 糖尿病の悪化
- 高脂血症の悪化
内臓脂肪が増加すると、脂肪細胞からPAI-1と呼ばれるアディポサイトカインが分泌されます。
このPAI-1はプラスミノーゲンアクチベータインヒビターと呼ばれ、血栓の線溶に関わるプラスミノーゲンの活性化を抑制する作用があり、血栓ができやすくなってしまう物質です。
その結果、直接的に脳梗塞の発症リスクを増大させます。
さらに、内臓脂肪が増加すると、脂肪細胞からアディポネクチンと呼ばれるアディポサイトカインの分泌が抑制されます。
アディポネクチンの主な作用は下記のとおりです。
- インスリン分泌の正常化
- 血管修復作用
- 糖や脂肪の燃焼促進
このアディポネクチンが抑制されることで、糖尿病の悪化や動脈硬化が進展し、脳梗塞の発症リスクが増大します。
高血圧や糖尿病との悪循環!肥満が脳梗塞リスクを高めるメカニズム
上記で挙げたように、肥満によって高血圧や糖尿病も悪化しやすく、その結果脳梗塞を発症しやすくなるため、注意が必要です。
高血圧と肥満
肥満によって高血圧が悪化するため、脳梗塞発症リスクが増大します。
肥満の場合、腎臓におけるNa排泄が障害され、交感神経も活性化するため、血管が収縮したり血管内に水分が貯留することで血圧が上がります。
血圧増加によって血管内皮細胞が障害されれば動脈硬化が進展し、また心臓に負担がかかることで心房細動などの不整脈の発症リスクが増加し、血栓ができやすくなることで脳梗塞に陥りやすくなるわけです。
糖尿病と肥満
先述したように、肥満の場合は脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンが分泌抑制され、さらにTNF-αが分泌されることでインスリン感受性の低下をもたらします。
その結果、血液中の糖分をうまく細胞内に取り込むことができなくなり、高血糖状態となって血管内皮細胞が障害され、脳梗塞の発症リスクが増大します。
肥満が血管に与える悪影響:動脈硬化との関係
ここまで記したように、高血圧や糖尿病によって血管内皮細胞は障害されますが、これがまさに動脈硬化の原因です。
血管内皮細胞が障害されると、血液中のLDLコレステロールが血管内皮に入り込み、血管壁を固く・脆く変性させ、結果として動脈硬化が進展し、アテローム性血栓性脳梗塞やラクナ梗塞の発症の原因となるため、注意が必要です。
肥満と高脂血症にも強い正の相関関係があり、高脂血症によって血液中にLDLコレステロールが増加すれば、先述したように動脈硬化が悪化します。
その結果、脳梗塞が発症しやすくなります。
内臓脂肪と脳梗塞:特に危険とされる理由とは?
肥満、つまり内臓脂肪が蓄積した状態では、特に脳梗塞を発症しやすく注意が必要です。
内臓脂肪が蓄積すると、上記で記したように高血圧や糖尿病・高脂血症を併発しやすく、単一の原因ではなく複数の要因で脳梗塞を発症しやすくなります。
特に、メタボリックシンドロームと呼ばれる状態は脳梗塞発症リスクが高いと言われ、その診断基準は下記のとおりです。
- 【必須項目】ウエスト周囲径(へその高さの腹囲)が男性で85cm以上、女性で90cm以上
- 上記1に加え、下記の3項目のうち、2項目以上を満たす
- 脂質異常:トリグリセライド(中性脂肪)≧150mg/dL、かつ/またはHDL-C値<40mg/dL
- 血圧高値:収縮期血圧≧130mmHg、かつ/または拡張期血圧≧85mmHg
- 高血糖:空腹時血糖値≧110mg/dL
これらの疾患は相互に悪影響を与えるため、メタボリックシンドロームのように複数を併発している状態ではより脳梗塞の発症リスクが高いです。
まとめ
今回の記事では、肥満と脳梗塞の関係性について詳しく解説しました。
肥満に伴う脳梗塞のリスク増大は1つの要因ではなく、複数の機序でリスクを増大させ、しかもそれぞれのリスクが相互に悪影響を与え合っています。
仮に肥満を放置して、脳梗塞を発症してしまうと身体に後遺症が残ってしまう可能性があります。
現状ではこれらの後遺症に対してリハビリテーションが唯一の改善策ですが、近年では再生治療が新たな治療法として非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、肥満に伴う脳梗塞後の後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 肥満が脳梗塞の原因になる理由は?
- 肥満によってアディポネクチンの分泌が抑制され、糖尿病の発症リスクが増大したり、血管修復作用が低下して動脈硬化が進展し、脳梗塞に陥りやすくなります。
また、脂肪細胞から分泌されるPAI-1にも血栓形成効果があり、注意が必要です。 - 太っていると脳梗塞になる?
- 太っている方は脳梗塞になりやすいです。
これまでの多くの研究で、BMI(肥満度)と脳梗塞の発症リスクには強い正の相関関係を認めています。
脳梗塞の病型に関わらず、BMIが高ければ高いほど発症リスクは増大します。
日本肥満予防協会:http://himan.jp/column/diseases/005.html
J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/ree/14/1/14_14.47/_article/-char/ja/
国立がん研究センター:https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8229.html
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