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 パーキンソン病と線条体黒質変性症の基本的な違い

<この記事を読んでわかること>
パーキンソン病の原因は何か。
線条体黒質変性症とはどのような病気か
パーキンソン病と線条体黒質変性症の違いは何か

パーキンソン病は、脳の黒質という部位が変性し、ドーパミンが減少することで振戦や筋強剛、無動、姿勢反射障害などの症状が出る病気です。一方、このパーキンソン病の症状に似た病気として線条体黒質変性症というものがあります。今回の記事では、これらの病気の概要や違いについて解説します。

パーキンソン病の概要と症状

ドパミン神経細胞
パーキンソン病は、脳の黒質という部位にあるドーパミン神経細胞の変性が主体となる進行性の神経変性疾患です。
そして、脳内のドーパミンが不足することにより、大脳基底核と呼ばれる脳領域の神経活動に異常が生じて発症します。
パーキンソン病の症状は、下記のようなものがあります。

  • 安静時の振戦(しんせん:ふるえのこと)
  • 筋硬直(筋固縮)
  • 無動・寡動(動きが緩慢になること)
  • 姿勢反射障害(転びやすくなること)

これらに加えて、2つの動作を同時にする能力の低下や、リズムを自由に作る能力の低下を加えると、パーキンソン病の症状をほぼ説明することが可能となります。

パーキンソン病の症状として特徴的であるふるえは、典型的な場合には指で何かを丸めるような動作です。
そのため、ピル・ローリング・トレモアとも呼ばれています。
ピルは丸薬といって、薬の粉を丸く固めたものです。
50歳以上で発症することが多いのですが、40歳以下で起こることもあり、これは若年性パーキンソン病と呼ばれています。

パーキンソン病の原因としては、大脳の中脳の黒質ドパミン神経細胞にアルファ-シヌクレインと呼ばれるタンパク質が蓄積し、ドーパミン神経細胞が減少することだと考えられています。

パーキンソン病の治療の基本は薬物療法となります。
ドパミン神経細胞の減少を補うために、ドーパミンの前駆物質であるL-ドパ(レボドパ)という薬を飲みます。
その他にも、ドパミンアゴニストと呼ばれる薬も使われます。
早期の段階であれば、疾患の進行をゆっくりにするためにこれらの薬は有効です。
また、外科的治療としては、微小電極を使用したDBS(脳深部刺激治療)があります。

パーキンソン病は進行性の病気ですが、適切に治療を行えば発症後10年ほどは普通の生活が可能とされています。
その後は個人差があり、寝たきりなどになってしまう場合もあります。

線条体黒質変性症の特性と主な症状

線条体黒質変性症は、多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)という病気の一つです。
MSAは、30歳以降、特に40歳以上で発症し、神経細胞とオリゴデンドログリアにアルファ-シヌクレインが蓄積し、進行性の細胞変性脱落をきたしてしまう病気です。

MSAは、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症、シャイ・ドレーガー症候群という3つの総称です。
その中でも線条体黒質変性症は、初発症状がパーキンソニズムであるものです。

これら3つの病気はもともと別疾患としてみなされていました。
しかし、いずれも進行すると同じような症状を呈してくるということや、小脳や脳幹の萎縮、線条体の異常がみられ、また、組織の病理も共通しているので、MSAと総称されることになりました。

線条体黒質変性症は、初期には筋硬直や無動、姿勢反射障害など、パーキンソン病に似た症状が現れます。
パーキンソン症状があった場合には、抗パーキンソン病薬が初期にはある程度の効果が期待できます。
リハビリテーションを行って残された機能を活用・維持し、寝たきりになることを遅らせるのが大切です。

二つの疾患の神経学的背景の違い

脳とその部位
一方で、パーキンソン病と線条体黒質変性症には違いもあります。
神経学的には、パーキンソン病では変性は黒質に限定されるのに対して、線条体黒質変性症は線条体という部位も変性します。

このために、パーキンソン病に比べて線条体黒質変性症は抗パーキンソン病薬の効きが悪いといわれています。
また、線条体黒質変性症は、小脳症状や自律神経障害も加わり、全体として進行性に悪くなっていくことが多いです。

そのために、余命にも違いが現れます。
パーキンソン病の方の平均余命は、一般より2〜3年短いだけと言われています。
一方で、線条体黒質変性症を含めたMSAでは発症後約5年で車いす使用、約8年で臥床状態になると報告されています。

まとめ

パーキンソン病や線条体黒質変性症の治療は、ドーパミンの補充などになります。
しかしながら、根本的な治療ではないので、病気が進むと効果が減弱したり副作用がみられたりします

そこで、脱落してしまったドーパミン神経細胞を移植によって補充する、再生医療を用いた細胞移植治療が新たな治療法の一つとして期待されています。

脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』を、ニューロテック®と定義しました。
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パーキンソン病や線条体黒質変性症に対しても、再生医療とリハビリテーションを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
パーキンソン病や線条体黒質変性症の症状にお悩みの患者さんやご家族の方は、ぜひご相談くださいね。

よくあるご質問

パーキンソン病と黒質線条体の関係は?
黒質のドーパミン神経細胞から線条体にある神経細胞へ情報が伝達されることで全身の運動が調整されます。パーキンソン病では黒質のドーパミン神経細胞が減り、線条体で放出されるドパミンの量が欠乏した状態となることでさまざまな症状が現れます。

パーキンソン病と線条体ドパミンの関係は?
パーキンソン病では、脳内の黒質のドーパミン神経細胞が減って、線条体のドーパミンが欠乏します。 症状としては、動作緩慢や筋固縮、振戦などがあります。自律神経障害の症状が現れることもあります。

<参照元>
パーキンソン病(指定難病6):https://www.nanbyou.or.jp/entry/314
多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17):https://www.nanbyou.or.jp/entry/221
プレスリリース パーキンソン病の症状を引き起こす神経メカニズムを解明:https://www.amed.go.jp/news/release_20210716.html
成果情報 臨床用iPS細胞を用いたパーキンソン病治療の非臨床研究 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構:https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20200806-01.html

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