・脳出血治療前の看護に必要な観察項目
・脳出血急性期の看護に必要な観察項目
・脳出血回復期から慢性期の看護に必要な観察項目
脳出血は緊急性の高い疾患であり、一刻も早い診断や治療が必要です。
治療中は患者さんの状態を把握し、その変化に素早く気づく必要があります。
治療後は体調を管理するとともに、再発予防や後遺症対策など全人的な対応が求められます。
このように病気の段階によって求められる対応は異なり、その中で看護が果たす役割は非常に大きいものと言えます。
この記事では、脳出血の患者さんの看護を行う時に必要となる観察項目を中心に紹介します。
脳出血治療前の看護に必要な観察項目
脳出血治療前の看護では、安全に素早く検査や治療につなげることが重要です。
治療を開始する時期が命運を決することもある疾患だ、という認識が必要です。
患者さんを搬送する経路の確保や各検査部との連絡など、細かい点に渡って準備を進めることが迅速な対応につながります。
素早さだけでなく、安全の確保も重要です。
口腔内に吐物があると誤嚥のリスクとなるため、大事な観察項目であると言えます。
出血量を最小限に抑えるためには、血圧の管理が重要です。
降圧薬を使用した治療が始まった後は、それによる状態変化や副作用の出現に注意する必要があります。
脳出血という診断がついていれば、医師の指示に従い15-30度程度のギャッジアップを行います。
血圧は脳出血だけでなく、患者さんの精神状態や不安も影響するものです。
落ち着いて患者さんの訴えに耳を傾け、支持的に対応する必要があります。
脳出血急性期の看護に必要な観察項目
脳出血の治療には保存的治療と外科的治療があります。
出血が少ない場合や神経症状が軽い場合などは保存的治療が選択されます。
ただし出血が続き状態が変化する場合は、手術に方針が切り替えられることもあります。
そのため患者さんの状態を細かく把握する必要があります。
治療方法に関わらず急性期は状態が変化しやすい時期であり、バイタルサインを中心に経過を観察します。
脳出血の看護では血圧や心拍数、血中酸素飽和度、体温といった基本的なバイタルサインだけでなく、意識や麻痺の程度、瞳孔の所見が重要になります。
Glasgow Coma Scale (GCS)、Japan Coma Scale (JCS)による意識の評価方法をしっかりと身につけておきましょう。
脳出血回復期から慢性期の看護に必要な観察項目
脳出血は再発しやすい疾患であるため、回復してからも血圧の管理が重要になります。
血圧のコントロールが良くないと再発が多いことが知られており140/90mmHg未満、可能であれば130/80mmHg未満に管理します。
血圧測定を継続するとともに、服薬状況の確認が重要です。
脳出血は後遺症を残すことの多い疾患です。
回復期の治療を行いながら、退院後の生活を見据えた支援方法を考えていく必要があります。
リハビリスタッフやソーシャルワーカー、ケアマネージャーなど多職種の連携が重要になります。
脳出血に対する再生医療
脳出血の看護は急性期から慢性期まで観察項目が多く、大変な疾患の一つです。
後遺症を残すことが多いという点が患者さんや医療スタッフにとって大きな問題になります。
脳出血により障害された神経は自然に機能を取り戻すことはなく、後遺症は生涯残るのです。
しかし神経の機能を取り戻すための新たな治療が発展してきています。
それが再生医療です。
再生医療では神経の元になる細胞(幹細胞)を使用して、神経の再生を試みます。
幹細胞は神経そのものに成長し、成長過程で神経を保護する物質を分泌することで、神経の機能を改善させる効果が期待されています。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、「ニューロテック」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
脳出血に対しては、再生医療と最先端のリハビリテーションを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
脳出血の症状にお悩みの患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。
まとめ
脳出血の看護について、治療前から急性期、回復期、慢性期の観察項目を中心に紹介しました。
時期によって必要な対応が異なり、看護が難しい疾患と言えますが、大きな不安を抱えている患者さんにとって身近な存在である看護スタッフは大きな支えになります。
必要な知識を身に着けて、患者さんの力になっていただきたいと思います。
よくあるご質問
脳出血後の観察項目は?
脳出血は再発しやすい疾患の一つで、血圧管理が重要です。血圧測定を通じて状況を把握するとともに、服薬状況の管理が重要な観察項目です。神経症状や麻痺は時間とともに変化するため、意識レベルや瞳孔、麻痺も観察項目に入ります。
脳血管疾患の看護の役割は?
脳血管疾患は発症早期に刻々と状態が変化する疾患であるため、患者さんの状態や患者さんを取り巻く状況の素早い把握が重要です。治療中は呼吸や循環といったバイタルサインを通じて経過を観察し、回復期や慢性期には生活の支援や再発予防が必要です。治療全体を通じて看護の役割は大きいものと言えます。
<参照元>
・「脳出血」脳卒中治療ガイドライン2009:https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_03.pdf
・「脳出血とは」BRAIN NURSING 37(2), 2021:https://www.molcom.jp/products/detail/143434/
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