<この記事を読んでわかること>
失語症の種類と回復過程
退院後に言語療法を受ける手段
家庭で行うコミュニケーション方法のポイント
失語症は脳がダメージを受けることで言葉の理解が難しくなったり、言葉が上手く出なくなる症状です。
退院した後も訓練を続けることで少しずつ改善していく可能性があるため、リハビリの継続と家族の関わりが重要になります。
この記事では失語症の退院後のリハビリ方法や家族でできるコミュニケーションの工夫について解説します。
退院してからも少しずつ良くなる?失語症の回復過程
失語症は脳がダメージを受けることで言葉の理解が難しくなったり、話す際に言葉がうまく出せなくなる症状です。
脳卒中を発症した後、失語症は時間をかけて少しずつ改善していきます。
失語症のタイプによる症状の違い
失語症の代表的なものとして言葉がうまく出せないブローカ失語と、流暢に話すことはできても言葉の意味が結びつかないウェルニッケ失語があります。
ブローカ失語は脳の中で言葉を話す順序を上手く組み立てることができなくなったり、文章を作ることが苦手になる症状が出現します。
大脳の中でも前方にある前頭葉が障害されるとブローカ失語が出現することがあります。
言葉を出すことは苦手になりますが、聞く能力については保たれることが多く、多くの方は話を聞いて理解する事ができます。
ウェルニッケ失語は流暢に言葉が出ても、言葉の意味が分からなくなってしまう失語症のことです。
大脳の外側にある側頭葉と呼ばれる部分がダメージを受けるとウェルニッケ失語が見られることがあります。
ウェルニッケ失語では、言葉の音自体を認識できなくなったり、言葉の音と意味を結びつけることが難しくなることで症状が出現します。
発症から半年を過ぎても失語症は改善する
失語症の改善度合いは脳卒中を起こした部位の大きさ、年齢、発症した際の重症度や家族の理解などによって影響を受けます。
発症してから数ヶ月は比較的変化が見られやすく、その後は改善の速度が緩やかになります。
その後、ゆっくりと1年以上の時間をかけて改善していきます。
この際に言語療法を継続することで改善が見られ、仮に一度リハビリを中断して機能が低下しても、再開することで再度改善するケースも多くあります。
また、本人だけでなく家族などの関わる人がコミュニケーション方法を工夫することで、意思を伝える機会を保ちやすくなります。
退院後に失語症のリハビリテーションを受けるための選択肢

回復期リハビリテーション病棟を退院した後、言語療法を続けるためにはいくつかの選択肢があります。
主なサービスとしては介護保険を使用した資源、医療保険を使用した通院リハビリなどがあります。
近年では保険診療ではない、自費を使用したオンラインの言語療法も増えてきています。
介護保険サービス(訪問リハビリ・デイケア)の活用
失語症のリハビリを継続するための最も一般的な方法は介護保険を使用したサービスを利用することです。
介護保険では訪問リハビリやデイケアなどのリハビリテーションが原則として1〜3割負担で受けられます。
利用条件や負担額は、要介護認定の結果や所得などによって異なります。
訪問リハビリでは言葉のリハビリを専門的に行っている言語聴覚士が自宅に訪問し、失語症に対するリハビリを行います。
デイケアは通所型のリハビリ施設で、自宅への送迎付きでリハビリや入浴などの必要なケアを受けることができます。
しかし、訪問リハビリやデイケアは言語聴覚士が在籍している事業所が少なく、ケアマネジャーと相談をして言語療法を提供している施設を探す必要があります。
医療保険での外来リハビリや自費リハビリ
失語症のリハビリを受けるもう一つの方法は医療保険下での外来リハビリや自費を使用したリハビリです。
医療保険では自己負担割合に応じた料金でリハビリテーションを受けることができます。
しかし、言語聴覚士は数が少なく、運営上数が足りていると答えた病院は42%しかなく、地方ではさらに割合が低下します。
そのため、医療保険で外来リハビリテーションを提供している施設は少なく、近所にない場合も多くあります。
近くに言語療法の外来リハがない場合は自費でのオンライン言語療法などが選択肢に挙がります。
オンライン言語療法はタブレットやパソコンなどでビデオ通話を使用し、言語療法を行う方法になります。
オンライン言語療法は自宅でリハビリを受けることができるため、通院の負担がなく自宅の慣れた環境で落ち着いて受けることができます。
家庭でできるコミュニケーションの工夫と家族の接し方

失語症は話をする機会が減ることで、話す能力が低下します。
そのため、できるだけストレスを感じずに気軽に話せる環境を作ることが重要です。
また、失語症の方と話をする際はブローカ失語かウェルニッケ失語かで注意するポイントが変わります。
急かさず、「はい・いいえ」で答えられる質問から始める
ブローカ失語の方は言葉を話すことが難しくなるため、急かさずに話をしましょう。
言葉が出づらくなるため、はい・いいえなどで答えられる質問を会話の中に混ぜることでストレスが減り、話しやすくなります。
言葉が上手く出ないことにストレスを感じやすくなるため、家族にゆっくりと話を聞いてもらえる安心感を感じてもらうことが重要です。
言葉だけでなく、表情・ジェスチャー・絵を活用する
ウェルニッケ失語では意味が曖昧になることが多く、毎回正しく伝わっているかを確認する必要があります。
耳からの言葉だけに頼るのではなく、メモや絵、ジェスチャーを使うことでよりコミュニケーションが取りやすくなります。
ウェルニッケ失語では意思が疎通できているか分からない状態になりやすいため、頷きや表情を見ながら正しく伝わっているか確認することが大切です。
まとめ
この記事では退院後も失語症のリハビリをする方法と家庭でのコミュニケーションの工夫について解説しました。
失語症の代表的なものはブローカ失語とウェルニッケ失語などがあり、時間をかけてゆっくりと改善します。
医療保険や介護保険で言語療法を受けられますが、近くにない場合はオンライン言語療法が選択肢になります。
家庭ではストレスをできるだけ感じにくいコミュニケーション方法を取るように意識しましょう。
よくあるご質問
- 認知症と失語症はどう違うのですか?
- 認知症は記憶や判断力そのものが低下しますが、失語症はそれらは保たれたまま言葉を操る機能がダメージを受ける状態です。
そのため、失語症の方は言葉が出なくても、物事の判断能力が低下することはありません。
- 失語症があっても、元の仕事に復帰することは可能ですか?
- 症状の程度や職種によりますが、復職されている方は大勢いらっしゃいます。
ただし、電話対応や会議での即答など、言葉を瞬時に処理する業務は難しくなることが多いため、職場と業務内容の調整を行うことが重要です。
(1)失語症:最近の知見―分類,評価,世界の趨勢|J-stage 高倉 祐樹 神経心理学 第37巻第4号:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/neuropsychology/37/4/37_17132/_pdf/-char/en
(2)失語症の経過と治療的介入の今|J-stage 福永真哉 認知神経科学 Vol.16 No3.4 2015:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku/16/3%2B4/16_157/_pdf
(3)理学療法士・作業療法士・言語聴覚士需給調査|四病院団体協議会:
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000120212_6.pdf
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