<この記事を読んでわかること>
被殻出血の再発頻度がわかる
被殻出血の治療法がわかる
被殻出血の再発予防法がわかる
被殻出血などの脳出血は一度発症すると再発しやすいことが知られており、再発すれば重篤な神経症状や死に至る可能性もあるため、注意が必要です。
そのため日常生活から再発予防に努め、また実際に再発した場合は病状に合った最適な術式での治療が必要です。
この記事では、右被殻出血の治療法と再発リスクを減らす方法について詳しく解説します。
血圧管理と薬物治療による再発防止策
被殻出血とは脳出血の1つであり、脳の被殻という部位で出血し、麻痺やしびれなどのさまざまな神経症状をきたす疾患です。
一度脳出血を引き起こすと再発しやすいことも知られており、報告によってばらつきはあるものの、概ね2〜12%程度の再発率と報告されています。
再発するとさらに重篤な神経症状をきたしたり、著しいADLの低下によって致死的なダメージを負う可能性もあるため、何よりも再発予防を徹底することが重要です。
そこで、脳出血の再発予防の観点では血圧管理と薬物治療が非常に重要です。
一般的に血圧と脳卒中の発症率は正の相関関係にあり、血圧が高ければ高いほど再発率が上がってしまいます。
そのため、再発予防には食事や運動、それに加えて降圧剤を用いた血圧管理が肝要であり、具体的には130/80mmHg以下を目指すべきです。
日々の生活の中で血圧を管理するためには、1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが肝要です。
また、カリウムを摂取することで尿中へのナトリウム排泄が促進されるため、降圧効果が期待でき、特に野菜や果実にはカリウムが豊富なため、積極的な摂取を勧めます。
次に、血圧管理目的で用いられる降圧剤は下記の通りです。
- カルシウム拮抗薬
- 利尿薬
- アンジオテンシン変換酵素阻害薬:ACE(angiotensin converting enzyme)
- アンジオテンシンIIAT1受容体拮抗薬:ARB(angiotensin receptor blocker)
- β遮断薬
特に、第一選択薬としてはβ遮断薬以外の降圧剤が用いられることが一般的で、患者個々人の効果を見つつ、各製剤の併用によって至適血圧までの降圧を行います。
血栓除去や減圧術などの外科的治療法の概要
被殻出血などの脳出血を引き起こした場合、場合によっては外科的治療法を選択する必要があり、主に術式は下記の3つです。
- 開頭血腫除去
- 内視鏡下血腫除去
- 穿頭脳室ドレナージ
どの治療も主な目的は共通しており、頭蓋骨内に貯留した血腫を除去して脳の圧迫を解除する治療です。
脳出血を起こした場合、問題となるのは出血そのものというよりも、出血によって閉鎖空間である頭蓋骨内に血腫が貯留することであり、貯留した血腫は広範囲に脳を圧迫します。
その結果、重篤な神経学的後遺症や呼吸停止、最悪の場合死に至るため、生存のためには血腫を除去して脳を除圧する必要があります。
その方法として、頭蓋骨を開けて直接血腫を除去する方法が開頭血腫除去であり、頭蓋骨の一部を切開して低侵襲で行う血腫除去が内視鏡下血腫除去です。
一方で、穿頭脳室ドレナージとは頭蓋骨の一部に穴を開け、そこから脳出血によって発症した水頭症を解除するためにドレナージを行う手術です。
脳周囲や脳内部は脳脊髄液という液体で保護・栄養されており、常に脳室内で産生されては流動的に流れ、最終的にくも膜顆粒という部位に吸収されています。
しかし、脳出血による血腫でこの流れが滞ると脳脊髄液が貯留してしまいます。
その結果、血腫ではなく脳脊髄液による脳の圧迫を引き起こす病気を水頭症と呼び、脳の保護のためにドレナージが実施されます。
実際には出血量や出血部位、患者の年齢や体力などを総合的に勘案して術式が決まるため、必ずしも治療方針が事前に決まっているわけではありません。
再発リスクを軽減する健康的な生活習慣の作り方
先述したように脳出血は再発すれば重篤な神経症状や、最悪の場合命の危機もあるため、再発予防に努めることが肝要です。
血圧管理以外にも、日々の生活の中では下記のようなことを意識しましょう。
- コレステロールや飽和脂肪酸の制限
- 魚の積極的な摂取
- カロリー制限
- 有酸素運動による減量
これらの生活習慣は高血圧のみならず、糖尿病や高脂血症、肥満などの病気を予防する効果が期待でき、これらの疾患によってもたらされる動脈硬化を予防できるため、脳出血の再発も予防できます。
これを機に、ぜひ生活習慣を見直してみると良いでしょう。
まとめ
今回の記事では、右被殻出血の治療法と再発リスクを減らす方法について詳しく解説しました。
脳深部に位置する被殻は、運動機能にとって非常に重要な内包と呼ばれる部位に近接しているため、出血を引き起こすことで左半身麻痺に陥るリスクがあります。
また、一度脳出血を起こすと再発リスクも高まり、再発すれば重度の麻痺や死に至る可能性もあるため、いかに再発予防に努めるかが肝要です。
血圧管理をはじめとして、過剰な糖質や脂質の摂取は控え、日常的に運動習慣を取り入れることが肝要です。
もし仮に再発して後遺症が残った場合、改善する術はリハビリテーション以外になく、仮にリハビリテーションを行なってもこれらの後遺症を根治することは困難です。
一方で、近年では脳出血の後遺症に対する新たな治療法として再生医療が大変注目されています。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった脳出血後の後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 脳出血の再出血を防ぐためにはどうしたらよいですか?
- 脳出血の再出血を防ぐためには、日頃から厳格な血圧管理が求められます。
塩分摂取を控え、カリウムの豊富な野菜や果物を積極的に摂取し、日常的な運動習慣を身に付けることが肝要です。 - 再出血を予防するにはどうしたらいいですか?
- 再出血を予防するには、血圧管理と生活習慣の是正が求められます。
過剰な飲酒や喫煙は控え、脂質や糖質中心の生活から野菜や魚中心のバランスの良い食習慣を身に付けることが肝要です。
(1)高血圧性脳出血の再発についての検討|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke1979/14/2/14_2_172/_pdf/-char/ja
(2)脳卒中治療ガイドライン2021|日本脳卒中学会:https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf
(3)水頭症|慶應義塾大学脳神経外科学教室:https://www.neurosurgery.med.keio.ac.jp/disease/childhood/01.html
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