<この記事を読んでわかること>
・脳出血と血圧の関係を理解できる
・血圧をコントロールして脳出血を予防する方法がわかる
・高血圧によって脳出血が起こりやすくなるメカニズムを理解できる
高血圧は脳出血の最大の原因であり、高血圧によって生じる脳出血を高血圧性脳出血と呼びます。
一度発症してしまうと麻痺やしびれ、言語障害、意識障害などさまざまな後遺症を残す可能性もあるため、未然に発症を予防することが重要です。
この記事では、高血圧と脳出血の関係性や初期症状、予防方法について詳しく解説します。
高血圧性脳出血の主な原因:血圧との関係
高血圧性脳出血とはその名の通り、高血圧が原因で生じる脳出血のことであり、脳出血の原因の約7割を占めます。
裏を返せば、それだけ脳の血管にとって血圧という要因が重要なのです。
血圧が高ければ高いほど脳の血管には負担がかかるため、脳出血の発症リスクが増大することが知られており、特に高血圧性脳出血を発症しやすいアジア人では予防のために血圧管理が重要であるとされています。
実際に日本では過去に漬物文化で塩分を多く摂取する傾向にあり、脳出血の発症率が世界的に高い傾向にありましたが、近年では予防医学も進んだことで脳出血の発症率も減少傾向です。
日本脳卒中学会の脳卒中治療ガイドラインによれば、血圧管理のためにはバランスの良い食事摂取と定期的な運動が肝要であり、具体的には下記のような生活習慣が推奨されています。
- 1日塩分摂取量6g未満
- カリウムの豊富な野菜や果物の積極的な摂取
- コレステロールや脂質の多い肉類など避け、魚を積極的に摂取する
- 禁酒する
- 肥満予防のために運動する
以上のような生活習慣を心掛け、75歳未満の場合は血圧を130/80mmHg未満(75歳以上の場合は140/90mmHg未満)にコントロールすることが重要です。
初期症状とその進行:見逃しやすいサインとは?
高血圧性脳出血を発症すると、高圧の動脈血がどんどん脳内で出血していきます。
しかし、脳は頭蓋骨という硬い一定容積の入れ物に収納されているため、そこに血液が蓄積すると血腫が形成され、徐々に正常な脳細胞が圧迫されます。
脳が圧迫されることで脳に酸素や糖質などのエネルギーを供給する血流も低下するため、結果として脳全体が虚血に陥り、最悪の場合は死に至る可能性もあり注意が必要です。
そのため、早期に病態を把握し、早急に対策することが肝要です。
脳出血の発症初期には下記のような症状が出現します。
- 突然の激しい頭痛
- 嘔気嘔吐
- 意識レベルの変化
- 左右片側の麻痺やしびれ
- 言語障害
- 視覚障害
発症初期にどのような症状が出現するかは脳出血の発症部位や出血量によっても異なりますが、多くの場合、突然の激しい頭痛や嘔気嘔吐は自覚しやすいです。
また、一度発症すると急速に意識障害が進み、そのまま呼吸停止する可能性もあるため、発症後は迅速な対処が必要です。
高血圧が脳出血に及ぼす影響のメカニズム
では、なぜ高血圧で脳出血が起こりやすくなるのでしょうか?
健康で若年の人でも運動をしたり強いストレスを感じた際には一時的に血圧が上がることはありますが、通常それだけでは脳出血は起こりません。
これは、血管には弾性繊維が豊富で弾性や柔軟性に富んでいるためであり、血管にかかる圧力が多少増加しても耐えられるためです。
しかし、長期的・持続的に高血圧を発症する方の場合は別です。
持続的な高血圧は血管内皮細胞を徐々に損傷し、損傷した部位から血液中を流れるLDLコレステロールが血管壁内に入り込み、炎症を引き起こすことで血管壁は硬く・脆く変性していきます。
この病態を動脈硬化と呼び、従来の血管の弾性を失うことで血圧の変動に耐えることができず、脳の細い血管が圧に耐えきれずに破裂すると脳出血を発症します。
そのため、脳出血を予防する上ではいかに高血圧を予防するかが重要です。
まとめ
今回の記事では、高血圧性脳出血の原因や症状について詳しく解説しました。
脳出血の原因として最も頻度が高い原因は高血圧であり、血圧の高さに相関して脳出血の発症リスクも上がることが知られています。
そのため、脳出血の発症を予防するためには普段の食事内容や運動習慣を強く意識することが重要です。
もし仮に発症した場合、早期に対策することで神経学的予後が改善できる可能性もあるため、初期症状を自覚した際は早急に医療機関に受診することが重要です。
もし対応が遅れて後遺症が残ってしまうと、現状ではリハビリテーションが唯一の改善策ですが、症状の根治は困難です。
そこで、近年では新たな治療法として再生医療が大変注目されています。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった脳出血に伴う後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 高血圧性脳出血の原因は?
- 高血圧性脳出血の原因はその名の通り、高血圧です。
血圧が高いと動脈硬化が進展し、血管が硬く脆く変性するため、本来の柔軟性が失われてしまいます。
その結果、血圧の変動などに耐えることができずに破綻してしまいます。 - 高血圧と脳出血の因果関係は?
- 高血圧と脳出血の発症リスクは完全に正の相関関係にあります。
つまり、血圧が高ければ高いほど脳出血の発症リスクが増加するため、脳出血の発症予防には食生活や運動習慣を見直すことが重要です。
(1)脳出血の予防|日本神経治療学会:https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_03.pdf
(2)危険因子の管理(1)高血圧|日本脳卒中学会:https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf
(3)動脈硬化|厚生労働省:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-082.html
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