<この記事を読んでわかること>
・脳出血が左片麻痺を引き起こす仕組みがわかる。
・左片麻痺の具体的な症状がわかる。
・早期対応とリハビリの重要性がわかる。
右大脳半球の脳出血によって左片麻痺が起こりえます。
今回の記事では、左片麻痺の仕組みや具体的な症状を解説します。
運動機能の低下や感覚障害が日常生活に与える影響、分回し歩行や嚥下障害の特徴についても詳しく紹介します。
初期対応の重要性やリハビリテーションの効果、脳の可塑性を活かした回復の可能性についても触れていきます。
脳出血が引き起こす左片麻痺の仕組みとは?
脳出血は、脳の実質内の血管が破れて出血することで起こります。
主な原因は高血圧であり、特に発症しやすい部位としては被殻や視床、小脳、橋が挙げられます。
それぞれの部位により症状は異なりますが、共通して突然の激しい頭痛が現れることが特徴です。
脳の神経線維は、交叉して反対側に走っています。
そのため、右の被殻や視床で出血が起こると、左半身に麻痺が生じます(左片麻痺)。
これに関与する脳領域には次のものがあります。
- 中大脳動脈(MCA):運動皮質を広く支配し、片麻痺の主な原因となる動脈です。
- 被殻:運動指令が通る白質路が存在し、損傷すると重度の運動障害を引き起こします。
- 皮質脊髄路:自発的な運動を司る重要な経路であり、ここが損傷されると片麻痺が起こります。
また、左片麻痺の重症度は出血の大きさや部位に依存しますが、早期治療とリハビリによって、脳の再編成が進み、運動機能の回復が期待できます。
左片麻痺の症状:動きづらさと感覚の変化
左片麻痺は、脳出血や脳梗塞によって右脳が損傷を受けた際に起こる後遺症で、主に左側の手足や顔に症状が現れます。
具体的には、次のような影響が考えられます。
- 動きづらさ(運動機能の低下)
- 左手足の麻痺・動きの制限
左手足の筋力低下や麻痺により、立ち上がる、歩く、物を持つといった基本的な動作が困難になります。
特に、歩行時には左足を引きずる「分回し歩行」が見られることが多く、バランスを崩しやすくなります。 - 巧緻運動障害
手指の細かな動きができなくなり、ボタンをかける、ペンを持って字を書く、箸を使うといった日常動作がスムーズに行えなくなります。
また、顔の左側に麻痺が生じることで、表情が乏しくなるほか、食事や発話にも支障が出ることがあります。
具体的には、食べ物をうまく噛んだり飲み込んだりできない「嚥下障害」や、口がうまく動かせず発音が不明瞭になる「構音障害」が現れることがあります。
- 左手足の麻痺・動きの制限
- 感覚の変化
- 触覚や痛覚の鈍化
左片麻痺では、麻痺した側の皮膚感覚が鈍くなり、触れても感じにくくなることがあります。
そのため、怪我をしても気づかないケースや、熱さ・冷たさを感じにくくなるケースが多く見られます。 - 感覚異常やしびれ
左手足にしびれやピリピリとした痛みが続くことがあり、これが生活の質を大きく低下させます。
長時間同じ姿勢でいると、症状が悪化しやすいのも特徴です。 - 空間認識障害
右脳の損傷による左片麻痺では、「左側無視」という症状が現れることがあります。
左側の視野や物体、さらには自分の身体さえ認識しづらくなり、日常生活でぶつかる、食事の際に皿の左側の食べ物を残してしまうといった問題が起きます。
- 触覚や痛覚の鈍化
- 日常生活への影響と疲労感
左片麻痺によって、日常生活動作(ADL)全般が困難になり、影響を受けていない右側の手足に大きな負担がかかります。
例えば、以下のような事態が想定されます。- 歩行補助具や車椅子が必要になることがある
- 入浴や着替え、トイレなどの動作に時間がかかる
- 左手が使えない分、右手だけで作業するため疲労しやすい
さらに、こうした負担の積み重ねによって、身体的だけでなく精神的なストレスや疲労感が強くなりやすいです。
後遺症の辛さを軽減する初期対応の重要性
脳出血を含む脳梗塞は、後遺症を軽減するためにも、もちろん生命を救うためにも初期対応がとても重要です。
もしも、顔や体の麻痺、言葉が出にくいなどの症状が現れた場合や、突然の激しい頭痛がみられた場合、すぐに救急車を呼ぶか、あるいは救急対応ができる病院を受診しましょう。
脳出血の場合、出血によって脳神経細胞はダメージを受けてしまいます。
しかし、出血部位が小さくなると、症状が多少軽くなることがあります。
そのため、脳出血の部位や大きさ、広がり方をしっかりと見極めて、全身状態を管理し、出血がこれ以上大きくなることを防ぐことが大切です。
具体的には、脳のむくみを抑える薬の投与や、高血圧の補正、場合によっては手術による血腫(血の塊)の除去などがあげられます。
後遺症がどの程度残るのかは、出血の大きさや発症時の神経症状の重さによって決まってきます。
そのため、いち早く治療に繋げる初期対応が大切となります。
早期に治療が行われることで、脳の損傷が最小限に抑えられ、リハビリによる機能回復が期待できます。
リハビリによって、以下のような効果が期待できます。
- 麻痺や言語障害の改善
- 日常生活動作(ADL)の向上
- 社会復帰の支援
特に早期リハビリを行うことが、脳の可塑性を活かし、他の神経が失われた機能を補う可能性を高めます。
まとめ
今回の記事では、脳出血による左片麻痺の原因や症状について解説しました。
一度脳出血によって死んでしまった脳神経細胞は、生き返らせることは難しいです。
しかし、近年では再生医療が脳出血後の神経症状を改善させることに役立つのではないかとして、さまざまな研究がなされています。
当院ニューロテック、脳梗塞脊髄損傷クリニックなどでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
再生医療とリハビリテーションを組み合わせることにより、その両者の効果をしっかりと発揮することを目指しています。
ご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談くださいね。
よくあるご質問
- 脳出血で片麻痺になるのはなぜ?
- 脳出血によって片麻痺になるのは、脳の運動野と呼ばれる部分に障害が起きるためです。
また、脳出血が起こると、脳内の神経経路も損傷されます。
特に運動指令を伝える「皮質脊髄路」が障害されると、脳の反対側にある手足に麻痺(片麻痺)が生じます。 - 左麻痺は脳のどの障害ですか?
- 左麻痺は、主に右大脳半球の障害によって引き起こされます。
脳の奥にある脳幹では運動神経が左右に交差しているため、脳の障害は反対側の半身に麻痺として現れます。
特に右側の被殻や視床、皮質脊髄路が損傷されると、左半身に麻痺が現れます。
<参照元>
MSDマニュアルプロフェッショナル版 脳内出血:https://www.msdmanuals.com/
Hemiplegia: Definition, Causes, Symptoms & Treatment|Clevelandclinic:https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/23542-hemiplegia
Left Hemiplegia: Causes, Recovery Outlook, and Treatment.|:https://www.flintrehab.com/left-sided-hemiplegia/
Kuriakose D, Xiao Z. Pathophysiology and Treatment of Stroke: Present Status and Future Perspectives. Int J Mol Sci. 2020 Oct 15;21(20):7609. doi: 10.3390/ijms21207609. PMID: 33076218; PMCID: PMC7589849.|:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7589849/
脳出血部位と症状 (CM Fisher) 秋田大学:https://www.med.akita-u.ac.jp/~seiri1/Japanese/okamoto/med/Neuro_FisherTable.htm
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看護師さんとして勤務していたある日、しゃがんだ状態から立てなくなってしまい検査をしたところ脳出血を発症していることが発覚しました。そのまますぐに手術となりましたが、左半身麻痺のほか、痛みや視野障害などの後遺症が残りました。リハビリに取り組んでおられた中で再生医療をご検討されました。
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