<この記事を読んでわかること>
・サルコペニアが起こす問題
・運動によるサルコペニアの予防
・栄養によるサルコペニアの予防
加齢に伴い筋肉量と筋力が低下するサルコペニアは、日常生活に運動と適切な栄養摂取を組み込むことで効果的に予防することができます。
特に筋力トレーニング・柔軟運動、バランス運動、持久力運動を定期的に行うこと、またタンパク質のなかでも分岐鎖アミノ酸であるロイシンを積極的に摂りつつバランスの取れた食事を楽しむことが推奨されます。
サルコペニアが起こす問題とその要因
加齢に伴う骨格筋量と筋力の低下(サルコペニア)は、転倒による怪我のリスクや糖尿病などの代謝疾患の発生率を高めることが明らかになっており、高齢者におけるさまざまな障害の大きな原因となっています。
骨格筋量の低下には、筋繊維数の減少と筋横断面積の減少があり、これらは同時に進行していくことがわかっています。
またその要因には不活動、いわゆる運動不足や外傷や病気などで動けない期間があることが知られています。
そのメカニズムは依然完全には解明されていませんが、ある程度予防できることは知られています。
サルコペニアの予防
日本において、サルコペニアに関する学術的な研究を行う研究者たちが集まる「日本サルコペニア・フレイル学会」などが中心になり、サルコペニア診療ガイドラインが作られています。
このなかで、サルコペニアの予防に関する世界中の論文を吟味し、現時点で判明している科学的な事実が公表されています。
このガイドラインによるとサルコペニアを予防するために特に重要な要素は、栄養と運動です。
そこで続けてこの運動と栄養について、ご説明します。
運動によるサルコペニアの予防
運動によるサルコペニア予防に必要な要素を4つご紹介します。
運動習慣を持つこと
若いときから身体を動かす習慣を持つ人は、筋肉量が減少しにくいことがわかっています。
具体的にどの程度の運動が最適であるかについては、個人差もあり明確な答えはありませんが、少なくとも週に数回程度、できれば毎日これから述べる運動をすることが推奨されます。
筋力トレーニング・柔軟運動
まずは筋力トレーニングです。
全身の筋肉をバランス良く鍛えることがベストですが、特に体幹と下半身の筋力トレーニングが大切です。
その場で足踏み運動をするといった簡単なものから、スクワットをする、爪先立ちを繰り返すなど、少し負荷を加えた運動が有効です。
1日10回程度からはじめ、慣れてくると回数を増やしたり、重りを持って運動したりして、徐々に負荷を増やします。
立って行う運動が難しいようであれば、仰向けや横向きに寝た状態で膝を伸ばし、足を上げる運動を繰り返すことも有用です。
また運動の前には、負荷がかかる筋肉に刺激を加えるためにも十分なストレッチを行うことで、怪我の予防につながります。
バランス運動
バランスをとる力を維持するため、バランス運動も推奨されています。
立って行う場合は、安全のために手すりを持つことができる環境で、目を開けたまま片足で10秒程度立つことを繰り返すことから始めます。
寝たままで行う場合は、バランスボールや棒状にしたマットの上に仰向けになり、体を左右に動かしてあえて不安定な状態を作り、その状態を維持できるようにすることも、バランス力の維持に役立ちます。
持久力運動
持久力をつける運動です。
これにはウォーキングや水泳が含まれます。
ウォーキングであれば、軽く息がはずむ程度のスピードで30分以上が理想です。
1週間で150分程度のウォーキングが目安として推奨されています。
栄養によるサルコペニアの予防
栄養素の摂取は、筋肉量を維持するために重要です。
続けて推奨される栄養素についてご説明します。
タンパク質・アミノ酸(ロイシン)
筋肉はタンパク質を材料にできていますので、タンパク質をしっかりととることはサルコペニア予防の核となります。
なかでもタンパク質の素であるアミノ酸のうち、分岐鎖アミノ酸、そのなかでも特にロイシンは筋肉のエネルギー代謝や筋肉の合成に重要な役割を果たしていることがわかっています。
これらはわたしたちの体のなかで作ることができませんので、栄養として摂る必要があります。
分岐鎖アミノ酸は鮭やサバなどの魚類、鶏モモ肉や豚ロース肉に多く含まれています。
肉が好きではない方には、卵や納豆、牛乳や高野豆腐などがお勧めです。
なお理想のタンパク質摂取量は、適正体重(kg)あたり1.0gが1日量とされています。
ただなかなか理想の摂取量を毎日計測して摂ることは難しいと思いますので、例えば毎日の食事で最低でも一食は分岐鎖アミノ酸が豊富な食品をとることを意識してみると良いのではないでしょうか?
もし難しい場合は、市販のサプリや健康飲料を取り入れることで気軽に摂取できます。
バランスの取れた食事を楽しむ
タンパク質は筋肉を維持するために重要ですが、運動するためのエネルギーは炭水化物や脂肪からも合成されます。
またわたしたちの体が機能するためには、ビタミンやミネラルなども必要です。
したがって、タンパク質の摂取を意識しつつ、やはりバランスの取れた食事が何よりも大切になります。
そして何よりも食事を楽しむ工夫をすることが、長く必要な栄養素を食事から摂るための秘訣でもあります。
まとめ
サルコペニアを予防するために必要な運動や栄養素についてご説明しました。
特に重要なことは、両者を組み合わせることです。
つまり食事だけ、運動だけで予防を目指すのではなく、両者を一緒に行うことでより効果が高まります。
長く続けることも意識し、負担のないレベルから日常生活に取り入れてみることをまずはお勧めいたします。
よくあるご質問
- 運動によるサルコペニアの予防で大切なことは?
- まずは運動習慣を持つことです。
そして全身の筋肉をバランス良く鍛えることがベストですが、特に体幹と下半身の筋力トレーニングが大切です。 - 栄養によるサルコペニアの予防で大切なことは?
- タンパク質をしっかりととることはサルコペニア予防の核となります。
また、食事を楽しむ工夫をすることが、長く必要な栄養素を食事から摂るための秘訣でもあります。
<参照元>
Mindsガイドラインライブラリ:https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001021/4/sarcopenia2017_revised.pdf
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