<この記事を読んでわかること>
幹細胞培養上清液の生成方法と含まれる成分の詳細がわかる。
成長因子やサイトカインが持つ医療・美容分野での効果がわかる。
脳卒中・脊髄損傷治療やエイジングケアへの具体的な活用事例がわかる。
幹細胞培養上清液は、幹細胞を培養する過程で得られる上澄み液で、成長因子やサイトカイン、エクソソームが豊富に含まれています。
本記事では、その生成方法や含有成分の詳細に加え、脳卒中・脊髄損傷治療、美容・エイジングケアなどの医療分野での具体的な活用事例を解説。
再生医療の最新情報とともに、幹細胞培養上清液の可能性を探ります。
幹細胞培養上清液の生成過程:培養から抽出まで
再生医療は、外傷や病気によって失われてしまった臓器の機能を、体が元々持っている「再生力」を用いて元に戻すように誘導する医療のことを指します。
そして、幹細胞には、以下の3種類があります。
- 胚性幹細胞(ES細胞)
受精卵から胚が形成される過程で、その内部の細胞を培養したもの - 体性幹細胞
ある程度身体の一部にある造血幹細胞や間葉系幹細胞など - 人工多能性幹細胞(iPS細胞)
体細胞に人工的に遺伝子を導入し、細胞を初期化した幹細胞
こうした幹細胞を培養した液を、遠心分離やろ過、滅菌などの処理工程を経て生成されるのが幹細胞培養上清液です。
幹細胞培養上清液の生成過程は、以下のようになっています。
- 幹細胞の採取と培養
幹細胞は、骨髄や脂肪、臍帯(へその緒)などから採取されます。
特に、骨髄由来間葉系幹細胞は神経系や血管系への分化能力が高いため、脳卒中や脊髄損傷の治療にも活用されています。 - 培養と成分の分泌
幹細胞は特殊な培養液で増殖・培養されます。
この過程で、細胞は成長因子やサイトカインを分泌し、培養液に放出します。 - 上清液の抽出と精製
培養が完了した後、幹細胞を除去し、上澄み部分(上清液)を回収します。
その後、不要な物質を取り除くためにろ過や遠心分離を行い、最終的な製品として精製されます。
幹細胞培養上清液には、成長因子や免疫調整因子、抗炎症因子、神経再生因子、エクソソームなどの生理活性物質が豊富に含まれています。
医療の現場で用いられる幹細胞培養上清液は、厚生局によって認可を受けた培養施設で製造されており、安全で高品質な製品を使用するようにすすめられています。
上清液に含まれる成長因子やタンパク質の種類とその効果
幹細胞培養上清液には、組織の修復や再生を促す成分が豊富に含まれています。
特に、以下のような成長因子やタンパク質が注目されています。
(参照サイト:新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug Deliverry System.2014;29(2):140-151.)
主な成分とその効果は以下のようになっています。
成分名 | 効果 |
---|---|
EGF(上皮成長因子) | 皮膚や粘膜の修復を促進し、シワや傷の治癒を助ける |
FGF(線維芽細胞成長因子) | 血管の新生を促し、損傷組織の再生を助ける |
VEGF(血管内皮成長因子) | 血管形成を促進し、神経細胞への酸素供給を改善する |
TGF-β(トランスフォーミング成長因子) | 免疫調整作用があり、炎症を抑える |
BDNF(脳由来神経栄養因子) | 神経細胞の成長や維持をサポートし、脳機能の回復を促す |
特にBDNFやVEGFは、脳卒中や脊髄損傷の患者にとって重要な役割を果たします。
これらの成分は、神経細胞の生存率を向上させ、損傷部位の回復を促進する効果が期待されています。
幹細胞培養上清液の医療・美容分野での具体的な活用事例
幹細胞培養上清液の医療や美容分野での活用事例についてご紹介しましょう。
医療分野での応用
- 脳卒中・脊髄損傷の治療
幹細胞培養上清液は、脳卒中・脊髄損傷の治療の一環として活用されています。
成分が神経細胞の修復を促進し、損傷した神経の回復をサポートすることや、血流を改善することで、損傷部位の環境を最適化する効果が期待できます。
リハビリと併用することで、機能回復を最大限に引き出す - 変形性関節症や慢性疼痛の治療
成長因子が関節軟骨の修復を助けるため、膝関節や腰の痛みを軽減する目的で使用されるケースも増えています。 - 難治性創傷や糖尿病性潰瘍の治療
上皮成長因子(EGF)やFGFの作用により、傷の治癒を促進し、感染リスクを低減させます。
美容分野での活用
- 肌の再生治療
幹細胞培養上清液を含む美容液やクリームが開発され、シワやたるみの改善に活用されています。
また、レーザー治療後の回復促進としても使用され、肌の修復を助けます。 - 毛髪再生治療
FGFやVEGFが毛母細胞を活性化し、薄毛の改善や育毛促進に効果を発揮します。
特に、男性型脱毛症(AGA)や円形脱毛症の治療としての応用が進んでいます。 - エイジングケア
幹細胞培養上清液を含む注射や点滴療法があり、全身の若返り効果が期待されています。
皮膚だけでなく、体全体の組織修復を促進するため、健康寿命を伸ばすことにも貢献することが期待できます。
まとめ
幹細胞培養上清液は、医療・美容の分野で注目される再生医療の一端を担う重要な成分です。
特に、脳卒中や脊髄損傷の治療においては、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療リニューロ®のような先進的な治療法と組み合わせることで、神経再生や機能回復の可能性を広げています。
また、美容分野では、肌や毛髪の再生を促進するため、アンチエイジングや創傷治療にも期待されています。
再生医療技術の進展とともに、幹細胞培養上清液の応用範囲はさらに拡大していくでしょう。
今後の研究と臨床応用に注目が集まります。
よくあるご質問
- 幹細胞培養上清液の成分は?
- 幹細胞培養上清液には、EGF(上皮成長因子)、FGF(線維芽細胞成長因子)、VEGF(血管内皮成長因子)、TGF-β(トランスフォーミング成長因子)、BDNF(脳由来神経栄養因子)など、多くの成長因子やサイトカイン、エクソソームが含まれています。
これらの成分は、組織修復や神経再生、抗炎症作用などの効果を持ちます。 - 幹細胞培養上清液に含まれるサイトカインは?
- 幹細胞培養上清液には、IL-10(抗炎症性サイトカイン)、TGF-β(免疫調整因子)、HGF(肝細胞増殖因子)、PDGF(血小板由来成長因子)など、多くのサイトカインが含まれています。
これらは、炎症の抑制、組織修復の促進、血管新生のサポートなどの役割を果たします。
(1)間葉系幹細胞を用いた再生医療.川崎高津診療所紀要.2022;3(1):99-107. :https://www.ncvc.go.jp/pr/release/post_34/
(2)幹細胞培養上清液について | 一般社団法人 日本再生医療臨床学会:https://japan-saisei.org/
(3)新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug Deliverry System.2014;29(2):140-151.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/dds/29/2/29_140/_pdf
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