<この記事を読んでわかること>
・軽度認知障害(MCI)は、認知症と健常状態の中間に位置し、適切な治療や予防活動で進行を遅らせることができることがわかる。
・薬物療法と非薬物療法の両方がMCIの治療に使用され、特に非薬物療法として認知トレーニングや運動、地中海食が効果的であることがわかる。
・家族のサポートがMCI治療において重要であり、患者とのコミュニケーションが精神的な健康維持に寄与することがわかる。
軽度認知障害(MCI)は、加齢と共に誰にでも起こりうる認知機能の低下と、認知症との中間に位置する状態です。
MCIを早期に発見し適切な対策を講じることで、進行を遅らせることができる可能性があります。
本記事では、軽度認知障害の治療オプションや、薬物療法と非薬物療法の違い、日常生活での管理方法について解説します。
軽度認知障害の治療オプション
軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)は、認知症と健康な状態の中間に位置する状態です。
MCIでは軽度の認知機能の低下が見られるものの、日常生活は通常通り送ることができます。
この点で、認知症とは異なっています。
MCIの方は、認知症に進行するリスクが高く、約半数が5年以内に認知症になると言われています。
ただし、全てのMCIの方が認知症に進行するわけではなく、早期に対策を取ることで進行を遅らせることが可能です。
例えば、運動などの予防的アプローチが進行を抑える効果を発揮することがあります。
MCIの治療には、薬物療法と非薬物療法があり、それぞれの方法で症状の進行を防ぎ、認知機能を維持することを目指しています。
標準的な治療法はまだ確立されていませんが、いくつかの方法が試されています。
薬物療法では、アルツハイマー型認知症の治療薬が使用されています。
特に、アルツハイマー病に伴う軽度認知障害に対しては、進行を抑制する効果が示されています。
一方、非薬物療法は生活習慣を改善し、脳の健康を保つために行われる様々な取り組みです。
認知トレーニングとしては、脳を活性化する活動を積極的に取り入れることが推奨されます。
パズルや読書、記憶ゲームなどの活動が、認知機能の低下を防ぐ助けとなる可能性があります。
また、定期的な身体運動、特に有酸素運動は脳の血流を促進し、MCIの進行を遅らせるとされています。
ウォーキングやサイクリングといった中程度の運動が効果的です。
さらに、食事にも注意を払うことが重要です。
抗酸化作用や抗炎症作用を持つ食事は、MCIの進行を抑えるのに有効とされ、特に地中海食は、脳の健康を保つために良いとされています。
魚やオリーブオイル、果物、野菜、ナッツなどを含む食事が推奨されます。
睡眠の質もまた、脳の健康に大きく関わっています。
質の良い睡眠を取ることで脳の休息が促進され、認知機能の維持に寄与することが期待されます。
不眠や睡眠時無呼吸症候群がある場合は、専門的な治療を検討することが推奨されます。
最後に、社会的な活動に参加することもMCIの進行を防ぐ要因とされています。
家族や友人との交流や、趣味の活動を通じて社会的なつながりを保つことが重要です。
薬物療法と非薬物療法の比較
MCIの原因となる疾患は、アルツハイマー病やレビー小体型認知症のような変性性の脳疾患の他、脳血管障害などもあります。
薬物療法は、即効性が期待できる場合もありますが、全ての患者に効果があるわけではなく、副作用のリスクもあります。
そのため、治療効果を慎重に見極めながら進める必要があります。
一方、非薬物療法は、長期的な効果が期待されるものの、日常生活に取り入れるための努力や継続が必要です。
運動や脳トレーニングは特に有効とされ、これらの活動が脳内の血流を改善し、認知機能の維持や向上につながるとされています。
また、食事面でも地中海食などの抗酸化作用のある食品を積極的に摂ることが推奨されています。
魚、野菜、果物、ナッツなどをバランスよく取り入れ、認知機能を保つことが期待されています。
家族の協力による日常生活の工夫
家族の協力は軽度認知障害(MCI)の治療において非常に重要です。
まず、規則正しい生活リズムを作ることが効果的です。
毎日のスケジュールを一定にすることで、患者の混乱や不安を減らし、安定感を提供します。
次に、身の回りを整理し、物の場所を分かりやすくしておくことが、患者の日常生活のサポートに役立ちます。
さらに、コミュニケーションを通じて、患者の精神的な健康を支えることも大切です。
積極的に会話をし、社会的なつながりを維持することが、認知機能の維持につながります。
家族と一緒に認知トレーニングや運動を行うことで、楽しく脳を刺激し、健康的な生活習慣をサポートすることができます。
このように、家族のサポートがMCIの進行を抑えるカギとなります。
まとめ
軽度認知障害は、早期発見と適切な治療が進行を遅らせるカギとなります。
薬物療法と非薬物療法の両方を取り入れながら、家族の支援を得て、日常生活を改善することで、認知機能の維持が期待されます。
軽度認知障害は、誰にでも起こり得るものですが、適切な対策を講じることで、生活の質を保つことができます。
軽度認知障害でも、変性してしまった神経細胞は再生することが難しいとされています。
そのような場合にも、再生医療による治療に期待が持たれています。
当院脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』を、ニューロテック®と定義しました。
そして、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』を、リニューロ®と定義しました。
リニューロ®は、同時刺激×神経再生医療®にて『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』です。
また、その治療効果を高めるために骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリ®の併用をお勧めしています。
ご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談くださいね。
よくあるご質問
- 軽度認知障害の治療方法は?
- 軽度認知障害(MCI)の治療には、薬物療法と非薬物療法があります。
薬物療法では、アルツハイマー型認知症に使われる薬が試されますが、非薬物療法としては、認知トレーニングや運動、食事改善が効果的とされています。
治療は個人に合わせたアプローチが重要です。 - 軽度認知障害は進行しますか?
- 軽度認知障害(MCI)は、一部の患者で認知症に進行する可能性があります。
しかし、全員が進行するわけではなく、適切な治療や生活習慣の改善で進行を遅らせることも可能です。
早期発見と予防的な対策が重要です。
軽度認知障害と診断されました。認知症の薬の効果について教えてください 国立長寿:https://www.ncgg.go.jp/dementia/cure/029.html
軽度認知障害 – 厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/kibou_00007.html
認知症|こころの情報サイト:https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=WwE9LLpYbVZTIDMI
2)レカネマブ(レケンビⓇ点滴静注)について 厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089508_00007.html
1.初期診断(MCIを含む).日内会誌.2011;100:2109-2115. :https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/8/100_2109/_pdf
前頭側頭型認知症(frontotemporal demenita;FTD)は、前頭葉および側頭葉の神経細胞が徐々に破壊され、萎縮することで発症する神経変性疾患です。FTDの原因は複数あり、遺伝的要因や環境要因が関与しています。この記事では、FTDの主要な原因と危険因子、さらに予防法についても詳しく説明します。
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