<この記事を読んでわかること>
・延髄梗塞と生活習慣病の関係がわかる
・延髄梗塞と心疾患の関係がわかる
・延髄梗塞の発症を予防する具体策がわかる
延髄は非常に重要な神経機能を司る脳の一部であり、延髄を栄養する血管が閉塞する延髄梗塞を発症することでさまざまな神経症状をきたします。
脳梗塞同様、その発症予防には適切な食事や運動など、日常生活においてさまざまな注意が必要です。
そこでこの記事では、延髄梗塞を引き起こす原因とリスクを徹底解説します。
動脈硬化と高血圧が延髄梗塞に与える影響
延髄梗塞とは、脳の一部分である延髄を栄養する血管が何らかの原因で閉塞し、延髄が壊死することでさまざまな神経症状をきたす疾患です。
延髄は重要な神経機能を多く司っており、一度発症すると麻痺やしびれはもちろん、構音障害(呂律が回らない)や嚥下障害(飲み込みが悪い)、最悪の場合は呼吸停止などに至る可能性もあります。
そのため、発症を予防することが重要ですが、予防する上で重要なのが生活習慣病とそれに伴う動脈硬化です。
高血圧や糖尿病・高脂血症などの生活習慣病や喫煙は血管内皮細胞を損傷し、血液中を流れる悪玉コレステロールがその損傷部位から血管壁内に入り込みます。
その結果、炎症が起こり血管壁は脆く・硬く変性し、これを動脈硬化と呼びます。
さらに進行すると、血管壁内に蓄積した悪玉コレステロールが粥腫(じゅくしゅ)を形成し、血管腔内が狭窄することで血流が低下し、延髄梗塞に至ります。
また、この粥腫(じゅくしゅ)が何らかの原因で破綻すると、血管内に血栓が形成されて急速に梗塞を引き起こす、いわゆるアテローム血栓性脳梗塞を引き起こすため、注意が必要です。
以上のことからもわかるように、重要な延髄の梗塞を避けるためには普段の食生活や運動習慣に注意することが大切です。
(参照サイト:動脈硬化|厚生労働省)
心房細動や血栓が延髄梗塞を引き起こすメカニズム
では延髄梗塞を引き起こす原因は動脈硬化だけなのでしょうか?
実は心臓が原因で延髄梗塞を引き起こす可能性もあります。
心臓は全身に血液を供給するポンプのような機能を持つ臓器ですが、そのポンプとしての機能や構造が正常でなくなってしまうと、血液の流れが澱み血栓が形成されます。
心臓は常に高い圧力で血液を全身に送り届けているため、心臓内に形成された血栓がその圧力で飛んでしまうと、脳を栄養する血管を閉塞させて延髄梗塞を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
特に、心臓内に血栓が生じる原因として代表的な疾患が不整脈疾患、中でも心房細動です。
心房細動とはその名の通り、心房が不整なリズムで拍動する疾患であり、心房内の血液の流れが澱むことで血栓が形成されます。
特に左心房の中にある左心耳と呼ばれる部位は血液の流れが滞りやすく、血栓ができやすい部位です。
また、心臓に血栓が形成されやすい要因として、心房細動以外にも下記のような病態が挙げられます。
- 心臓手術後の人工弁留置
- 重度の心不全
- 心臓腫瘍
- 心臓弁膜症
どの病態にせよ、心臓内の血液の流れが遅くなったり、異物によって血栓が形成されることで脳梗塞を発症します。
また、先述した動脈硬化に伴うアテローム血栓性脳梗塞と比較して、心房細動に伴う心原性脳梗塞の場合は心臓の血栓が脳のさまざまな血管に広範に飛び散るため、梗塞部位が多発性となることが多く注意が必要です。
(参照サイト:心原性脳塞栓症の治療と予防の最前線|J STAGE)
延髄梗塞のリスクを高める生活習慣とその改善策
延髄梗塞を発症すると嚥下障害や構音障害・呼吸不全などさまざまな神経症状をきたし、日常生活に与える影響も多大なため、いかに延髄梗塞の発症を予防するかが重要です。
具体的に、動脈硬化の進展や心房細動の発症を予防するためには下記のような生活習慣が重要です。
- 過剰な糖質や脂質を控え、果実や野菜・魚中心の食事をバランスよく摂取する
- 減塩する
- 定期的な運動習慣を身につける
- ストレスを発散するよう心がける
- 喫煙は控える
- 過剰な飲酒は控える
- 定期的に健康診断を受診する
(参照サイト:動脈硬化性疾患の発症を予防するためには?|日本動脈硬化学会)
まとめ
今回の記事では、 延髄梗塞を引き起こす原因とリスクを徹底解説しました。
延髄梗塞は脳梗塞と同様に、規則正しい食生活や運動習慣などによる生活習慣病の予防が発症予防にとって重要です。
一度発症すれば、その後の生活に大きな支障をきたすような神経症状が残る可能性もあり、また症状を根治する術もないため、本記事を参考に予防に努めましょう。
一方、近年では延髄梗塞による後遺症に対する再生医療の効果が大変注目されています。
また、脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった延髄梗塞による後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 延髄の役目は?
- 延髄は主に嚥下や構音などの機能を司っています。
また呼吸能力の維持や心臓の拍動も調整しているため延髄に何らかの異常が生じた場合、生命維持が困難となる可能性があります。 - 延髄から出る脳神経は?
- 延髄から出る脳神経は舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経です。
このうち、舌咽神経や舌下神経は嚥下や構音に関わり、迷走神経は心臓の拍動などに関わります。
また副神経は僧帽筋や胸鎖乳突筋の収縮に関わります。
(1)動脈硬化|厚生労働省:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
(2)心原性脳塞栓症の治療と予防の最前線|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/
(3)動脈硬化性疾患の発症を予防するためには?|日本動脈硬化学会:https://www.j-athero.org/jp/general/4_atherosclerosis_yobou/
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