<この記事を読んでわかること>
・後縦靭帯骨化症と胸椎手術の基礎知識
・後縦靭帯骨化症とは?胸椎手術の目的と期待される効果
・手術中に発生する脊髄への影響:直接的損傷と間接的影響
・術後に後遺症が悪化するリスク要因とは?
後縦靭帯骨化症の手術は、骨化した部位を除去することにより、神経の圧迫を軽減しますが、完全に病変部位を除去することは難しいのが現状です。
そのため、残存部位の骨化や新たな骨化が進行し、後遺症が悪化する場合があります。
その他、手術後の合併症や術後の生活習慣などが後遺症の要因になることもあります。
後縦靭帯骨化症と胸椎手術の基礎知識
この記事では後縦靭帯骨化症と胸椎手術の基礎知識について解説します。
後縦靭帯骨化症は、脊椎の後側にある後縦靭帯が骨のように硬くなる疾患です。
この骨化が脊髄神経を圧迫することで、しびれ、痛み、運動機能の低下などの症状を起こします。
胸椎に起きる後縦靭帯骨化症の特徴は以下です。
症状として、下肢のしびれや痛み、運動機能の低下などが起こります。
本疾患は、骨化が継続的に進行するため、症状が徐々に悪化することが多いです。
薬物治療やリハビリなどの保存治療がメインですが、改善が認められない場合は手術が検討されます。
脊髄が強く圧迫され、麻痺などの重篤な症状が出現した場合は、神経機能が低下し後遺症が残る可能性が高いため、緊急手術が考慮されることがあります。
胸椎手術として、前方除圧固定術、後方除圧固定、複合術の3つの方法があります。
後縦靭帯骨化症とは?胸椎手術の目的と期待される効果
この記事では症後縦靭帯骨化症とは?胸椎手術の目的と期待される効果について解説します。
後縦靭帯骨化症とは、脊椎の後側にある後縦靭帯が骨化し、脊髄神経を圧迫することで、しびれ、痛み、運動機能の低下などの神経症状を起こす疾患です。
胸椎手術の主な目的は、骨化した部位を除去し、脊髄の圧迫を解放することです。
結果、症状として、痛みやしびれの軽減が期待できます。
運動機能が改善することも多いです。
しかしながら、改善効果は個人差があるのが特徴です。
特に、骨化の進行が強い程、手術の効果は限定的になります。
神経が既に高度に損傷している場合は、回復が遅れる傾向にあります。
一般的には、若年者や体力のある患者さんは回復が早い傾向にあります。
手術中に発生する脊髄への影響:直接的損傷と間接的影響
この記事では手術中に発生する脊髄への影響:直接的損傷と間接的影響について解説します。
後縦靭帯骨化症の手術は、骨化した部位を除去し、脊髄の圧迫を解除して症状を改善することを目的に行われます。
しかしながら、手術中に脊髄に直接的または間接的な損傷を与えるリスクがあります。
直接的損傷として、手術中の人為的なミスにより、誤って脊髄に損傷を与えてしまうことがあります。
例えば、椎弓形成術において椎弓を正中で切断する際に、脊髄を傷つけてしまう可能性があります。
その他、電気メスによる熱損傷、手術器具による神経圧迫などが原因で起きる神経機能障害も考えられます。
間接的影響として、手術中の出血によって脊髄が圧迫され、神経機能障害を起こす可能性があります。
その他、手術後において、病変部位の腫脹による脊髄圧迫、手術創内に形成された血腫による脊髄圧迫などが原因となる神経機能障害が考えられます。
術後に後遺症が悪化するリスク要因とは?
この記事では術後に後遺症が悪化するリスク要因とは?について解説します。
直接的要因として、手術自体が神経にダメージを与える可能性があることはもちろん、手術後の全身状態や体質も影響します。
直接的要因は、主に、手術中の神経損傷です。
手術手技に伴う脊髄圧迫や血流障害が考えられます。
また、電気メスによる熱損傷が要因となることがあります。
また、手術後の病変部位の出血や腫脹が原因で、脊髄が圧迫され、神経機能に悪影響を及ぼす可能性もあります。
手術後の全身状態に対する注意点は、手術は身体に大きなストレスを与えるため、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなることです。
感染症を発端として、神経周囲に炎症が起こり、神経機能が低下した症例も報告されています。
個人の体質も、後遺症の悪化に影響します。
肥満や糖尿病患者などを持つ患者さんでは、術後の回復が遅れたり、合併症のリスクが高まったりする傾向があります。
また、高齢者は、一般的に回復力が低下しているため、術後の経過に注意が必要となります。
まとめ
今回の記事では、後縦靭帯骨化症の手術後に後遺症が悪化する理由とは?について解説しました。
後縦靭帯骨化症は進行性の疾患のため、改善後も予断を許しません。
損傷した神経の影響で後遺症が残る場合もあります。
損傷した神経を元の状態にもどすことは、現時点では決め手となる治療は無いのが現状です。
そのため、新たな治療法として、再生医療に期待が持てます。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」があります。
これらの治療法は、後縦靭帯骨化症の後遺症に苦しむ患者さんに対して期待が持てる治療となるでしょう。
よくあるご質問
- 後縦靭帯骨化症の手術の後遺症は?
- 手術の主な後遺症には、不全四肢麻痺、感覚障害、膀胱直腸障害などがあります。
重症例においては、手術自体に問題がなくても、術後に後遺症が悪化する場合があります。
原因として、術後に脊髄が腫れるため、脊髄を圧迫するためです。 - 後縦靭帯骨化症は進行しないこともありますか?
- 後縦靭帯骨化症は進行性の疾患です。
進行が完全に止まることは稀です。
具体的には、骨化した後縦靭帯は手術で除去しても増殖する傾向にあるからです。
そのため、手術で症状が改善したとしても、数年後に再び症状が出現する可能性があります。
進行速度は個人によって大きく異なり、緩やかに進行する場合もあれば、急速に悪化する場合もあります。
<参照元>
STROKE LAB:https://www.stroke-lab.com/neuro/17992
神経心理学:https://www.jstage.jst.go.jp/article/neuropsychology/32/4/32_311/_pdf
東邦大学医療センター:https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/mentalhealth/mental/ninchikinou_shogai/improvement.html
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