・両下肢末梢神経障害の病態がわかる
・両下肢末梢神経障害の原因がわかる
・両下肢末梢神経障害の症状がわかる
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両下肢における末梢神経障害とは、なんらかの原因で下肢を走行する末梢神経が障害され、麻痺やしびれなどの症状が出現する病気です。
その原因によって症状の出方や経過、程度も異なり、原因によっては不可逆的な神経障害をきたす可能性もあるため、注意が必要です。
この記事では、両下肢末梢神経障害の病態や原因について詳しく解説します。
両下肢神経障害の定義と概要
両下肢神経障害とは、なんらかの原因で両下肢、つまり左右両方の下肢に麻痺やしびれが出現する病態です。
両下肢に痛みやしびれを伴うことで、症状が進行すれば歩行困難に陥る可能性があります。
なぜこのような病態が出現するか理解するためには、両下肢に分岐する神経の走行を理解する必要があります。
まず、両下肢に分岐する感覚神経(坐骨神経や大腿神経など)は末梢から腰に向かって上行し、腰椎の椎間孔から左右それぞれ腰髄に流入し、脊髄内を胸髄⇨頸髄という順に上行し、最終的に脳に到達するわけです。
一方で、脳からの運動の指令は、頸髄⇨胸髄と下降し、腰髄から左右一対となって末梢の運動神経(坐骨神経や大腿神経など)に伝達され、各筋肉に分岐することで筋収縮を得ています。
両側の下肢に麻痺やしびれが出るということは、左右いずれかの下肢の末梢神経が障害された状態ではなく、左右両方の末梢神経が同時に障害されているか、もしくはその上流の腰髄や脳が障害されている可能性を疑う必要性があります。
両下肢神経障害の原因とリスク要因
では、具体的にどのような原因が考えられるのでしょうか?
大きく分けて下記の4つが考えられます。
- 脊髄損傷
- 自己免疫性疾患
- 神経の血流障害
- 神経細胞そのものの障害
脊髄損傷
脊髄、特に腰髄は、左右両側の下肢の運動神経や感覚神経の上流に位置しているため、なんらかの原因で腰髄以上のレベルで脊髄を損傷すると、両下肢に麻痺やしびれが出現する可能性があります。
具体的な原因は主に交通外傷・脊髄腫瘍・硬膜外血腫などです。
ただし、脊髄損傷はあくまで両下肢の神経症状をきたすだけで、一般的にいう末梢神経障害とは異なる病態です。
自己免疫性疾患
自己免疫性疾患とは、本来体内に侵入した異物を攻撃する免疫細胞が、誤って自身の正常な細胞を攻撃してしまう病気です。
特に、神経を包む鞘のような構造物である髄鞘はそのターゲットになりやすく、なんらかの感染症に罹患した際に免疫細胞が産生した抗体が、髄鞘を攻撃することで両下肢に麻痺やしびれが生じます。
具体的な疾患としては、ギランバレー症候群や慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーなどが挙げられます。
神経の血流障害
神経も臓器の1つである以上、常に血管から供給される酸素や糖質によって栄養されており、この血流が低下することも、神経障害の原因の1つです。
特に、糖尿病や高血圧・高脂血症などによる動脈硬化は、左右の血管で同様に進行していくため、左右ともに神経障害が併発する可能性があります。
神経細胞そのものの障害
神経細胞を構成する軸索が障害されることで、両下肢の末梢神経障害をきたす可能性があります。
軸索とは、先述した髄鞘に包まれる神経細胞の一部であり、ビタミン不足や過度な飲酒、ポルフィリン中毒や抗がん剤など、多様な原因で機能が障害されるため、注意が必要です。
両下肢神経障害の主な症状
両下肢神経障害の症状は、その原因や病態によっても異なります。
当然、運動神経が障害されれば麻痺や筋力低下が、感覚神経が障害されれば痺れや痛みが、運動神経・感覚神経両方なら両方の症状が出現します。
また、各末梢神経の支配する筋肉や感覚の領域は異なるため、症状の出方によって障害されている神経をある程度同定可能です。
例えば、坐骨神経は大腿の裏側や下腿の外側、足底などの感覚を支配しており、大腿神経の場合は大腿前面や内側、下腿の内側の感覚を支配しているため、それぞれの部位にしびれがあれば障害されている神経を同定できます。
また、より遠位(下肢で言えば足)から症状が出現する場合は、なんらかの中毒や代謝性疾患によって末梢神経障害が起きている可能性があります。
このように、原因によってどのような症状がどのように出現するか異なるため、注意が必要です。
まとめ
今回の記事では、両下肢における末梢神経障害について詳しく解説しました。
両下肢の末梢神経はさまざまな要因で障害される可能性があり、その原因によって症状の出方や経過、程度も異なります。
原因によっては長期的な麻痺やしびれが後遺症として残ってしまい、歩行や体位変換などの基本的な日常動作にも支障をきたすため、注意が必要です。
後遺症として残ってしまった場合、現状ではリハビリテーションによる機能の維持・改善が主な治療法ですが、近年では再生治療が新たな治療法として非常に注目されています。
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また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、両下肢末梢神経障害に伴う後遺症の改善も期待できます。
よくあるご質問
- 足の神経障害の症状は?
- 足の神経障害の症状は、足の指における筋力低下や麻痺、さらには軽い痛みやじんじんと痺れるような痛みが主です。
足の指の付け根に位置する趾間神経が神経腫などの腫瘍に圧排されることで症状が出現することが多いです。 - 末梢神経が障害されるとどうなるか?
- 末梢神経が障害されると、その神経の支配する筋肉に刺激が入りづらくなるため、筋力低下や麻痺が生じます。
また、その神経の支配する皮膚の感覚が障害され、痛みやしびれの原因となるため、注意が必要です。
<参照元>
MSDマニュアル:https://www.msdmanuals.com/
慶應義塾大学病院:https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000007.html
MSDマニュアル:https://www.msdmanuals.com/
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