・尿意を感じにくくなる理由と対策
・頻尿に対処するための実践的なケア
・嚥下障害を改善するための治療とリハビリ法
この記事では脳卒中後の排尿トラブルと嚥下障害について解説します。
両症状とも脳卒中後はよく見られる症状です。
排尿トラブルには、頻繁にトイレに行きたくなる、尿を漏らす、尿が出にくいなどの症状が起こります。
一方、嚥下障害では、食べ物を飲み込む際にむせる、食べ物が喉に詰まるといった症状が出ます。
尿意を感じにくくなる理由と対策
この記事では尿意を感じにくくなる理由と対策について解説します。
理由は、脳卒中による脳の損傷によって、膀胱の働きをコントロールする神経が障害されるためです。
たとえば、膀胱が尿で満たされると、その情報が脳に伝達され、排尿の準備となります。
でも、神経の障害があると、信号伝達が脳に届きにくくなり、尿意減退を来します。
神経の障害が重度となると、膀胱からの信号は脳に届かないため、尿意を感じることが難しくなり、尿失禁などの排尿トラブルに至る場合もあります。
また、膀胱の感覚が鈍くなるため、膀胱に尿が満杯になっても、その感覚が減弱してしまうこともあります。
対策は以下です。
具体的には、定期的にトイレに行く習慣を身に着けましょう。
同時に、排尿量を記録して、自分なりの排尿パターンを見つけます。
自分の膀胱の容量を知ることにもつながります。
また、水分の摂りすぎは尿量を増やすので、医療スタッフと相談のうえ、適切な摂取水分量を守ることも大切です。
加えて、薬物療法として、膀胱の過活動を抑える薬や、膀胱の収縮力を調整する薬が使用されることもあります。
重度の尿閉の際は、カテーテルを挿入して排尿を促す医療行為もあります。
頻尿に対処するための実践的なケア
この記事では頻尿に対処するための実践的なケアについて解説します。
日常生活に大きな影響を与えるため、脳卒中後の頻尿ケアは重要です。
以下のリハビリ法を検討しましょう。
まず、排尿習慣の設定が重要です。
定期的なトイレの時間を設定し、膀胱が過剰に反応するのを防ぎ、排尿のリズムを整えましょう。
これにより、頻繁な尿意を抑えることが可能となります。
また、夜間頻尿を減らすために、夜間の水分摂取を控えることや、日中の適度な水分補給を心がけることが大切です。
膀胱訓練を取り入れることも有効です。
膀胱容量が増えますので、排尿間隔を延ばすことができます。
骨盤底筋トレーニングも効果があります。
骨盤底筋は、尿道を支える筋肉であり、これを鍛えることで、頻尿の改善が期待できます。
理学療法士などに相談し、正しい方法を身につけましょう。
加えて、ストレスや不安は自律神経のバランスを崩すため、頻尿を悪化させます。
そのため、心理的サポートも重要です。
自分なりのリラクゼーション法を身に着けて、ストレスをためないようにしましょう。
薬物療法も選択肢の一つです。
抗コリン薬や膀胱の収縮を調整する薬が処方されることがあります。
嚥下障害を改善するための治療とリハビリ法
この記事では嚥下障害を改善するための治療とリハビリ法について解説します。
嚥下障害は、日常生活に支障を来すばかりでは無く、誤嚥性肺炎などの合併症を起こす可能性があるため、早めの対処が重要です。
嚥下障害治療として、食事療法と薬物療法があります。
食事療法では、食べ物の硬さ、粘度、温度などを調整して、安全に飲み込めることができるように、食物の形態を変更することが大切です。
例えば、食物をペースト状や液状にして飲み込みやすくします。
また、食事の際には、頭の位置を適切に調整したり、一口の量を少なくしたりなどの工夫を行います。
薬物療法としては、唾液の分泌を促す薬や胃酸の分泌を抑える薬などが用いられることがあります。
リハビリも重要です。
具体的なリハビリ法は以下です。
舌や顎などの口腔内の筋肉を鍛える運動として嚥下体操があります。
嚥下反射を改善し、誤嚥のリスクを減らします。
氷を使って喉の感覚を刺激するアイスマッサージという方法もあります。
嚥下反射が促進されます。
また、嚥下に必要な筋力を増強するために、発声練習や喉の筋肉を鍛えるリハビリも行われることがあります。
まとめ
今回の記事では、脳卒中後の排尿トラブルと嚥下障害について解説しました。
脳卒中は脳の神経が壊死する疾患です。
壊死した神経を再生させることは、これまでの医療ではほぼ不可能でした。
そのため、再生医療は期待の持てる治療となります。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」があります。
これらの治療法は、脳卒中の後遺症として、嚥下障害や排尿障害などの症状を有する患者さんに対して、期待が持てる治療となるでしょう。
よくあるご質問
- 脳卒中になると嚥下障害になるのはなぜ?
- 脳の損傷によって、飲み込むための神経や筋肉がうまく働かなくなるためです。
結果、食べ物がうまく飲み込めないばかりでは無く、食べ物が気管に入る誤嚥のリスクが高まります。
誤嚥性肺炎を起こすこともたびたびあります。 - 脳卒中になると排尿障害になるのはなぜ?
- 脳卒中によって、排尿を制御する脳の領域が損傷を受けるためです。
結果、膀胱の働きをコントロールすることが難しくなります。
症状として、頻繁にトイレに行きたくなる、尿を漏らす、尿が出にくいなどが起こります。
<参照元>
国立医療学会:https://www.iryogakkai.jp/2014-68-08/409-14.pdf
日本老年医学会:https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/clinical_practice_of_geriatrics_50_4_446.pdf
日医工株式会社:https://www.nichiiko.co.jp/generic/swallow/swallow_knowledge02.php
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