<この記事を読んでわかること>
・慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーへの基本的なリハビリ
・神経障害への日常生活に役立つ自宅で行うリハビリ運動
・神経障害に対する幹細胞治療とリハビリの相乗効果
今回は慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)に対するリハビリの重要性と効果について解説します。CIDPは、進行性の神経障害によって筋力低下や感覚障害を起こす疾患です。治療は、薬物治療とリハビリが中心となります。リハビリは、症状の進行を抑えるとともに、神経機能を回復させる重要な治療です。
慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーへの基本的なリハビリ
この記事では慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーへの基本的なリハビリについて解説します。
慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーは自己免疫疾患によって末梢神経が障害される進行性の難病です。
筋力低下、感覚障害、歩行障害などが主な症状として現れ、日常生活動作の制限に至る可能性もあります。
これらの進行を抑制するために、リハビリは重要な治療の一つです。
基本的には以下のリハビリが重要です。
まずは、筋力の改善をめざすリハビリです。
筋力トレーニングや電気刺激療法などにより、筋力の低下を抑制し、筋力向上を目指します。
軽い抵抗運動から始め、徐々に負荷を増やし、等尺性運動や低負荷・高回数のレジスタンス運動が行われます。
バランスの改善と転倒予防のためにバランス訓練も行います。
片脚立ちやバランスボード、歩行訓練などを取り入れ、安定した姿勢と動作の習得を目指します。
必要に応じて、理学療法士の指導のもとで実施します。
加えて、日常生活動作の改善を目指し、作業療法士による訓練もあります。
食事、着替え、入浴などの基本的な動作を自立して行えるよう支援し、適切な補助具の選定や環境調整を行います。
神経障害への日常生活に役立つ自宅で行うリハビリ運動
この記事では神経障害への日常生活に役立つ自宅で行うリハビリ運動について解説します。
自宅で行うリハビリは病院で行うリハビリと同様に、筋力の維持や機能の回復に重要です。
まずは、筋力トレーニングです。
軽い抵抗運動から始め、徐々に負荷を増やすことが推奨されます。
例えば、足の上げ下げや軽いダンベルを使用した腕の運動が効果的です。
これらの運動は座ったままでも行え、毎日数セットを目標にします。
柔軟性を維持するためのストレッチも欠かせません。
特に四肢や背中の筋肉を中心に、毎日行いましょう。
その際、反動をつけずにゆっくりと行い、各ポーズを15〜30秒間保持することが大切です。
これにより、関節の可動域を広げ、筋肉の硬直を防ぐことができます。
バランス訓練も重要です。片脚立ちやバランスボードを使用した運動が効果的であり、転倒防止に役立ちます。
安全を考慮し、手すりや壁を利用してバランスを取りながら行いましょう。
さらに、日常生活の中での簡単な動作訓練も取り入れましょう。
例えば、椅子からの立ち上がりや、台所での軽作業です。
これらは日常生活の改善に加え、自立性の改善にも役立ちます。
神経障害に対する幹細胞治療とリハビリの相乗効果
この記事では神経障害に対する幹細胞治療とリハビリの相乗効果について解説します。
慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーは、根本的な治療法が確立されておらず、薬物療法とリハビリが主な治療法です。
しかし、これらの治療法だけでは十分な効果が得られない場合も多く、新たな治療法の開発が求められています。
その中で、幹細胞治療とリハビリを組み合わせることで、治療効果を高めることが期待されています。
幹細胞治療は幹細胞を用いる治療です。
幹細胞は多能性を持ち、損傷した神経細胞に分化する能力があるため、神経の機能の回復を促進し、症状の改善が期待されます。
一方、リハビリは、筋力の維持と強化、関節の可動域の確保、バランス能力の向上を目指します。
リハビリは幹細胞治療によって再生された神経細胞を活性化することにより機能回復を促進する重要な役割を果たします。
各治療の効果を補完することで、再生された神経の機能を最大限に引き出すことで、日常生活の質をあげることができます。
加えて、効果を最大限に発揮するには、心理カウンセリングやリラクゼーションを取り入れて、ストレスを軽減することも大切です。
まとめ
今回の記事では、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーに対するリハビリの重要性と効果について解説しました。
本疾患は徐々に神経細胞を損傷する疾患です。
病気が進展すると、後遺症が残ります。
でも、神経組織を再生させると後遺症は軽減します。そのため、再生医療には期待が持てます。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、脳脊髄損傷部位の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「再生医療×同時リハビリ™」があります。
これらの治療法は、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーに苦しむ患者さんに対して期待が持てる治療となります。
よくあるご質問
- CIDPになったら気をつけることは?
- 病気が進行すると筋力低下や感覚障害などが起こり、日常生活に支障を来します。そのため、医師の指示に従って適切な治療を継続するとともに、リハビリを含む運動、感染症にならない、栄養バランスの良い食事などを心掛けることが大切です。
- CIDPの再発率は?
- 一般的には約7割と言われています。再発のリスクとして、年齢、性別、発症初期の症状などが報告されています。再発を防ぐためには、定期的な医師の診察と適切な治療継続が重要です。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチー(指定難病14)|難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/4089
慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー|日本神経学会:https://www.neurology-jp.org/guidelinem/cidp/sinkei_cidp_2013_03.pdf
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