<この記事を読んでわかること>
・エクソソームがどのようにして形成されるかがわかる。
・エクソソームの役割がわかる。
・サイトカインの主な機能とそれによる細胞間コミュニケーションの調整がわかる。
エクソソームは細胞が分泌する膜小胞で、タンパク質、RNA、脂質を含み、細胞間コミュニケーションを行います。サイトカインは、免疫応答や炎症反応を調節するシグナル分子で、エクソソームとともに生理的プロセスに重要な役割を果たします。エクソソームとサイトカインの基本的な働きとその相互作用のメカニズムについて詳しく解説します。
エクソソームとサイトカインの基本的な働き
それではまず、エクソソームについて解説します。
エクソソームは、細胞が分泌する100nmほどの小さな膜小胞です。
これらの小胞は、一般的には細胞内のエンドソームから形成され、多胞性エンドソームと呼ばれる構造内に蓄積された後、細胞膜と融合して細胞外へ放出されます。
エクソソームは、以下のような多くの重要な生体分子を含んでいます。
タンパク質
エクソソームには、膜タンパク質、エンザイム、受容体などが含まれており、これらは標的細胞のシグナル伝達を変化させることができます。
リボ核酸(RNA)
エクソソームは、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)などを運搬し、これにより標的細胞の遺伝子発現を調整することができます。
脂質
エクソソームの膜は、特定の脂質組成を持ち、細胞膜との相互作用に重要な役割を果たします。
エクソソームは、細胞間のコミュニケーションを行う主要な手段として機能し、次のような多くの生理的プロセスに関与しています。
免疫応答の調節
エクソソームは、免疫細胞間のシグナル伝達を仲介し、免疫応答の強度と持続時間を調整します。
細胞の成長と分化
エクソソームに含まれる成長因子やその他のシグナル分子は、細胞の成長、分化、修復を促進します。
病原体の伝播
ウイルスや病原体もエクソソームを利用して他の細胞に感染することがあります。
一方、サイトカインは、細胞から分泌される小さなシグナル伝達分子であり、免疫系の細胞間コミュニケーションを調節します。
主なサイトカインには、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF)、成長因子などがあります。
サイトカインは、次のような多くの機能を持っています。
炎症反応の調節
プロ炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-1β)は、炎症部位における免疫細胞の動員と活性化を促進し、感染や損傷に対する防御反応を強化します。
抗炎症反応の抑制
抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)は、炎症反応を抑制し、過剰な炎症による組織損傷を防ぎます。
細胞の成長と分化
成長因子(例えば、EGF、VEGF)は、細胞の成長、増殖、分化を促進し、組織の修復や再生を支援します。
エクソソームによるサイトカインの調節メカニズム
エクソソームは、細胞間コミュニケーションの重要な媒体として、サイトカインの分泌や機能に対してさまざまな調節作用を持っています。
エクソソームによるサイトカイン遺伝子発現の調節
エクソソームに含まれるマイクロRNA(miRNA)は、標的細胞内でサイトカイン遺伝子の発現を直接調節します。
具体的には、エクソソームが標的細胞に取り込まれると、その中のmiRNAが細胞内のmRNAと結合し、これにより特定のサイトカイン遺伝子の翻訳を抑制します。
例えば、エクソソーム由来のmiRNA-21は、マクロファージに取り込まれることで、炎症性サイトカインであるIL-6の産生を抑制することが示されています。
エクソソームによるサイトカインの安定化と輸送
エクソソームは、サイトカインそのものを含む場合もあり、これによりサイトカインの安定性と輸送が向上します。
エクソソームに包まれたサイトカインは、血流中での分解を防ぎ、標的細胞に効率よく到達することができます。
これにより、サイトカインの生理的効果が強化され、精密な細胞間シグナル伝達が可能となります。
エクソソームによる免疫応答の調節
エクソソームは、免疫細胞間のシグナル伝達を調整し、免疫応答のバランスを保つ役割を果たします。
例えば、樹状細胞由来のエクソソームは、T細胞に取り込まれることで、サイトカインの分泌を誘導し、適応免疫応答を活性化します。
これにより、エクソソームは抗原提示や免疫細胞の活性化を促進し、免疫応答の効率を向上させます。
エクソソームによる炎症性サイトカインの抑制
エクソソームは、特定の抗炎症性因子を含むことにより、炎症性サイトカインの産生を抑制します。
例えば、間葉系幹細胞(MSC)由来のエクソソームは、抗炎症性のmiRNAやタンパク質を含んでおり、これによりマクロファージの炎症性サイトカイン産生を抑制することが報告されています。
これにより、エクソソームは炎症反応を制御し、組織の損傷を防ぐ役割を果たします。
エクソソームによるサイトカインシグナルの増幅
一部のエクソソームは、サイトカイン受容体やその補助因子を含むことがあります。
これにより、標的細胞がエクソソームを取り込むと、その細胞表面にサイトカイン受容体が増加し、サイトカインシグナルが増幅されます。
例えば、エクソソームに含まれるTNF受容体は、標的細胞においてTNF-αシグナルを増強し、炎症応答を促進します。
サイトカインによるエクソソーム生成の調整とは
サイトカインもエクソソームの生成および分泌に影響を与えることがわかっています。
例えば、炎症性サイトカインであるTNF-αやIL-1βが細胞に作用すると、エクソソームの分泌が増加することが示されています。
これは、細胞がストレス状態にあるときにエクソソームを介して他の細胞に情報を伝達し、全体の免疫応答を調整するためと考えられています。
まとめ
今回の記事では、エンドソームやサイトカインについて、その役割や調整メカニズムについて解説しました。
サイトカインは細胞に働きかけ、分化を促すという役割ももっています。
今後、再生医療にも応用できる可能性も秘めています。
そのため、脳卒中や脊髄損傷などに対しても効果が期待されます。
さて、当院脳梗塞・脊髄損傷クリニックでは、『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』を、ニューロテック®と定義しました。
そして、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄の治る力を高める治療』を、リニューロ®と定義しました。
リニューロ®は、同時刺激×神経再生医療®にて『狙った脳・脊髄の治る力を高める治療』です。
また、その治療効果を高めるために骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリ®の併用をお勧めしています。
ご興味のある方は、ぜひ一度当院までご連絡くださいね。
よくあるご質問
- エクソソームには抗炎症作用がありますか?
- はい、エクソソームには抗炎症作用があります。特に間葉系幹細胞由来のエクソソームは、抗炎症性のmiRNAやタンパク質を含んでおり、炎症性サイトカインの産生を抑制することで炎症反応を調節します。
- エクソソームの働きは?
- エクソソームは細胞間コミュニケーションの媒体として機能し、遺伝子発現の調節、タンパク質やRNAの輸送、免疫応答の調節など多岐にわたる役割を果たします。これにより、生理的なバランスと免疫機能の維持に貢献しています。
エクソソームは細胞からのメッセージ!?|地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所:https://www.tmghig.jp/research/topics/201704-3381/#
炎症誘発性サイトカインの概要|Thermo Fisher Scientific – JP:https://www.thermofisher.com/jp/ja/home.html
エクソソームによる新規 DDS キャリアの開発|Drug Delivery System.2020;35(1):35-46.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/dds/35/1/35_35/_pdf